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【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】東洋医学からみる「スベリヒユ(五行草)」の世界

千葉市内、千葉駅すぐ、女性と子ども専門鍼灸院『鍼灸 あやかざり』です。いつも【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】の記事をお読みいただき、ありがとうございます。

都会ではなかなか緑の広がる広場を見かけることが少なくなりました。
けれど、アスファルトやコンクリートの隙間、側溝のわきなど、わずかでも土があるところには雑草と呼ばれる草たちが元気に育っています。

現在NHKで放送中の『らんまん』のモデルである植物学者牧野富太郎博士が残した「雑草という草はない」という名言は有名ですよね。
その言葉通り、雑草にはもちろん名前があり、健康によい効果があったり食用にできたりする草もあります!

そこで、今回は、雑草と呼ばれるものの代表「スベリヒユ」を取り上げ、東洋医学からみる「スベリヒユ」の世界をご紹介していきます。
それでは、どうぞ最後まで、お楽しみください。

1.「スベリヒユ」の由来

花が咲くのは7~9月頃

「スベリヒユ」はスベリヒユ科の一年草です。
原産地はインドですが、世界各地に伝播していてどこにでも見られます。
熱さや乾燥に強く、北海道~沖縄まで全国各地の農地や道端、庭などに自生しており、特に日当たりのよいところには群生しています。
地面をはうように30㎝前後まで伸び、抜いても放置すると再び根付いてしまうほど強いため、『畑の雑草』として農家の人には嫌われています!
けれど、「スベリヒユ」は古くから薬草として利用されており、実は生活にとても役立つ草なのです。

「スベリヒユ」は『滑りヒユ』と書き、茹でて食べるときに独特のぬめりがあり、すべすべすることから名付けられたと言われています。
食用として一般的ではありませんが、山形県ではや沖縄県では食用にされています。
また、地中海地方ではサラダに用いる野菜として栽培されているそうです。

中国名では「馬歯莧(ばしけん)」と呼ばれます。
葉の形が馬の歯の形に似ていて、口当たりは鉄莧菜(えのきぐさ)のようなぬめりがあるために付けられた名前と言われています。

別名としては、他の草が枯れてしまうような乾燥した時期でも枯れないことから「長命莧」とも呼ばれます。

また、葉は緑で、茎が赤く、花が黄色、根が白く、種が黒色をしていて、五行説の色がそろっていることから「五行草(ごぎょうそう)」とも呼ばれています。

ここで、少し、五行説について触れておきましょう。

五行説とは、自然界の万物は「木・火・土・金・水」の五種類の元素からなるという自然哲学の思想のことです。
また、五行色体表とは、季節・地理・植物など自然界に起こる現象と人間のカラダに起こる状態や治療などを分類してまとめたものです。
その五行色体表において、「木」「火」「土」「金」「水」に該当するそれぞれの色が、「青」「赤」「黄」「白」「黒」となっています。
東洋医学において、五行色体表は、病態を把握したり、診断をする際に用いられています。

こうしてみると、「スベリヒユ」は、東洋医学を代表する草である、ともいえます!

2.「スベリヒユ」の効能

乾燥させたスベリヒユ

「スベリヒユ」は古来から薬草として東洋医学の中で使われています。

2-1.東洋医学的な効能

「スベリヒユ」は細菌性の下痢や腸炎、赤白帯下(出血の混じったおりもの)、血尿や血便の改善に使われています。
東洋医学的な性質、効能は次のとおりです。
【性質と味】 酸、寒(辛、寒、無毒)
【関連する臓腑経絡】 大腸・肝経(胃)(肝・脾)

①清熱解毒(せいねつげどく)
熱を取り、解毒作用によって病態を改善します。
感染性の胃腸炎や泌尿器系疾患、皮膚の化膿症、ガンなど、全身の炎症を伴う症状に効果があります。

②涼血止血(りょうけつしけつ)
熱によって出血しやすい状態を改善し、止血します。
出血性の下痢や血尿、産後出血などに対して止血効果が得られます。

③清熱利湿(せいねつりしつ)
熱を取り、余分な水分を排出させて、体内のバランスを整えます。
乏尿、脚気によるむくみ、 赤白帯下などの改善に効果があります。

2-2.現代の研究による効能

現代の研究では、有効成分としてノルアドレナリンを含んでいることがわかっています。
また、アミノ酸類、各種ビタミン、ミネラル類などの栄養素も含んでいます。
からだによいとされる油分であるオメガ3脂肪酸の一種であるαリノレン酸の含有量は植物界ナンバーワンです。

①酸の働きで、腸炎の原因となるブドウ球菌や赤痢菌などの細菌に対して抗菌作用を示します。
②心筋の収縮力と収縮速度を強める働きがあります。
③カリウムを多く含み便通の改善にも効果があります。
④子宮の収縮を強めます。
⑤血液をサラサラにする作用があります。
⑥ノルアドレナリンがインスリンの分泌を促進して、血糖値を下げます。
⑤ハムスターの大腸のけいれんを緩和させる効果が報告されています。

「スベリヒユ」は寒性の性質を持っていますが、有効成分のノルアドレナリンに血中カリウムを上昇させる作用があるため、肝陽亢進の方、高血圧の方には向いています。
逆に、もともとからだの水分が不足している陰虚体質の方には、利尿効果を持つ「スベリヒユ」は不向きです。また、冷えやすい陽虚体質や気血両虚体質の方も逆効果になるので気を付けてください。
子宮の収縮作用があるので、妊婦さんは摂取しないようにしてください。

3.「スベリヒユ」を使った郷土料理

今回は「スベリヒユ」が沖縄や山形でどのようにして食べられているのかを調べてみました。

沖縄では「ニンブトゥカー(念仏鉦)」と呼ばれていて、酢味噌和えが定番のようです。

山形県の置賜地域や村山地域には、「スベリヒユ」を使った保存食「ひょう干し」が郷土料理として伝わっています。
「ひょう」というのが「スベリヒユ」のことで、江戸後期の米沢藩主上杉鷹山が刊行した『かてもの』には「すめりひやう」として記載されています。
夏の土用の頃に干したものが一番美味しいと言われ、お正月には縁起物として『ひょう干しの煮物』が食べられているそうです。
『ひょう干しの煮物』の作り方は山形市のホームページで紹介されています。
「ひょう干し」を入手してご家庭で試して見るのもよいですね。

もしご自身で採取してみようと思われた方は、毒草!!の「コニシキソウ」と間違えないように注意してください!

毒草のコニシキソウ

【見分け方】
①コニシキソウは、茎が細く葉も小さい
②コニシキソウは、茎から白い乳状の液体が出る ※かぶれの原因となります
③葉の中に赤い斑点がある
④茎にとげがある
特に初めての方は、野草に詳しい方に相談するのが安心だと思います。

4.千葉で食べられる山形の味

筆者の鍼灸院『鍼灸 あやかざり』は千葉市内千葉駅すぐに所在しています。
千葉市内で『ひょう干しの煮物』を食べられるお店を探しましたが、あいにく見つけられませんでした。
ただ、千葉都市モノレール1号線 葭川公園駅から徒歩5分ほどのところに山形料理を提供する小料理屋さんを見つけました。『奈種彩(なたねいろ)』さんです。
このお店は銀座にある山形県のアンテナショップ『おいしい山形プラザ』のパートナーショップでもあり、『純米燗酒好きな女将が全国各地の選りすぐりの日本酒を揃え、一人で切り盛りしている小さなお店です。母の故郷山形より契約農家様から食材を直送、薬膳の考えを取り入れ心を込めてこしらえた家庭料理をご捉供しております。』と紹介されています。
女将さんなら「ひょう干し」をご存知かもしれないので、話題にしてみるといいかもしれませんね。

5.まとめ

最後までお読みいただきありがとうございました。
身近な存在の「スベリヒユ」が持つ隠れたパワーには驚かされますね!
最近は野草料理にも注目が集まっていますので、いずれ「スベリヒユ」料理が話題になるかもしれません。

このように、身の回りにあるいろいろなものを東洋医学的にみていくと、鍼灸ほかにも、身近なところに自然治癒力を高めるヒントがたくさんあることに気づかされますね。

それでは、鍼灸でからだも心も元気になりましょう!

鍼灸 あやかざり
千葉駅5分 完全予約制 女性と子ども専門の鍼灸治療院
千葉県 千葉市中央区新町1−6 ラポール千葉新町202
TEL:070-8525-6132

画像の出典:https://www.photo-ac.com/

参考文献:『東方薬草新書』、『ブリタニカ国際大百科事典』

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