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読みたいリスト

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皆様の書かれている書評を拝見して、読みたくなった本の記事を集めてます! 積読本棚?😅なるべく積まないように読みたいです!
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記事一覧

『時は老いをいそぐ』 アントニオ・タブッキ

『時は老いをいそぐ』 アントニオ・タブッキ

老いと人生の物語。
ひとつの生を生き、後ろに伸びる過去の道を振り返る時に、人は何を思うのか。
タブッキの作品は全てそうだが、この本も、何度も読んで、繰り返し読むことでゆっくりと吸収していきたい一冊だ。

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『亡者を食卓に』は、東ドイツの諜報部員だった男が、過去に囚われて生きる孤独な老人となり街を彷徨う物語。誰に打ち明けることもなく彼が心に抱えている秘密が苦い。
読み終わった時に自分の心

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『家の本』 アンドレア・バイヤーニ

『家の本』 アンドレア・バイヤーニ

人の家というのは、何かしら覗いてみたくなるものだ。
TVでビフォーアフターやドリームハウスが人気番組となり、他にもお家訪問の番組や企画が数多あるのはその証拠だろう。

私達が人の家に惹きつけられるのは、その住人がそこでどんな生活習慣を持ち、暮らしの物語を紡ぐのかを思い描く楽しさがあるからだろう。

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この小説は、1975年生まれの「私」の人生の節目節目を、その時に住んでいる家を通して描

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『イリノイ遠景近景』 藤本和子

『イリノイ遠景近景』 藤本和子

ブローティガンの『アメリカの鱒釣り』などの翻訳の他、『ブルースだってただの唄 黒人女性のマニフェスト』などの著書のある藤本和子による、魅力的なエッセイ集。

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「トウモロコシのお酒」は、イリノイ州のトウモロコシ畑の真ん中に建つ家で暮らす著者が、アメリカの田舎での暮らしやそこで出会った人々のことを綴ったもの。
このエッセイの題から、アメリカ文学好きならばブラッドベリの『たんぽぽのお酒』を

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『そこでゆっくりと死んでいきたい気持ちをそそる場所』 松浦寿輝

『そこでゆっくりと死んでいきたい気持ちをそそる場所』 松浦寿輝

インパクト大な題名とおしゃれ怖い装丁のこの一冊。
12の短編を3作品ごとにまとめた4部構成になっているが、その各部には例えば次のようなタイトルがついている。

・黄昏の疲れた光の中では凶事が起こる…
・冷たい深夜の孤独は茴香の馥りがする…

これらを読んで惹かれるものを感じる方ならば、本書を読んできっと満足できるはずだ。
期待通りの不気味、暗澹を心ゆくまで堪能できること請け合いである。
(同時に、

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『フリーダム』 ジョナサン・フランゼン

『フリーダム』 ジョナサン・フランゼン

かなり分厚い本だが、すいすい読める。
すいすい泳ぐように進む文章と共に、魅力的なストーリーのなせる技である。

時間を忘れて没頭してもう満腹なのに、まだこんなにたっぷりページが残っていて、これ以上何が出てくるの?と思いながらページをめくるとこれがまたまた面白く、またもや夢中で読み進んでしまう。
そんな、読書家は狂喜必至の、長大なコース料理のような一冊だ。

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主人公はパティとウォルター

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『貝に続く場所にて』 石沢麻依

『貝に続く場所にて』 石沢麻依

うっすらとした非現実が淡々と現実に溶け込む世界が、美しい文章で描かれる。
そして幻想的な全体の中に、哲学的な内容があれこれ詰まっている、豆大福的な小説。
主題は重いが、短時間で読める長さでつまみ読みにも適した、文句なしの絶品だ。

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ドイツの大学に留学して博士論文に取り組んでいる主人公。彼女は震災を経験しており、仙台の大学で同じ研究室にいた仲間を一人、津波で亡くしている。
震災から9年

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