見出し画像

「読書は自由」だけど、それでも順番に読んでほしい3冊

今月の文芸書新刊がすごいことになっています。

まず京極夏彦「鵼の碑」(ぬえのいしぶみ)が9月14日に発売されます。ファンが多い「百鬼夜行」シリーズ17年ぶりの新作です。ノベルスと単行本で出ますが、なんと単行本の厚みが6.5センチ、重さは1.2キロとのこと。どうぞお近くの本屋で手に取って確かめてみてください。

おそらく主に売れるのは、より軽くて安いノベルス版でしょう。お店の規模によっては単行本の入荷は少ないかもしれません。お早めのご来店がオススメです。

そして東野圭吾「あなたが誰かを殺した」と伊坂幸太郎「777 トリプルセブン」が9月21日に刊行されます。

伊坂さんの新作は「殺し屋」シリーズ。これは「グラスホッパー」「マリアビートル」「AXアックス」と共通の登場人物及び世界観を意味します。

いずれも独立した物語ですが、順番に読む方がより楽しめます。「グラスホッパー」の緻密な完成度と熱いメッセージ性に心の底から満足し、まさかこれ以上はないだろうと思って「マリアビートル」を開いたら軽々とハードルを越えられて驚愕しました。いわば100点と120点。極上のエンターテインメントです。

次は単行本が2017年に出た「AXアックス」。前の2作に比べたら、やや落ち着いた展開です。しかし読み始めれば安定の伊坂マジック。ユーモラスな地の文とつい応援したくなるキャラクター、さらにあらゆる角度から飛び込んでくる伏線回収のアクロバットに痺れました。人間描写(特に家族に関する)の円熟味が増し、文章の説得力も高まった気がします。

私はビートルズが大好きです。しかし最初に聴いたのが中期の「ラバー・ソウル」だったせいか、初期のアルバムをなかなか受け入れられませんでした。何だか浅い、物足りないと。

でもバイアスを排するように努めたら「プリーズ・プリーズ・ミー」や「ウィズ・ザ・ビートルズ」の素晴らしさに気づけました。理屈を超えた前向きなエナジーに触発され、不思議な元気が沸いてくるのです。若い頃にしか生み出せない表現や世界観というものが存在する。それを大人目線や後出しジャンケンで批判するのはもったいない。フェアでもない。

読書は自由です。どの本を選んでもいいし、どこからいつ読み始めても問題ない。途中でやめるのもOK。ただ上記のような理由で、伊坂さんのこのシリーズに関しては「グラスホッパー」から体験してもらえたらと考えています。

お求めはぜひお近くの書店にて。

この記事が参加している募集

推薦図書

読書感想文

作家として面白い本や文章を書くことでお返し致します。大切に使わせていただきます。感謝!!!