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嬲(なぶ)る 元同級生
第一章
一 学生アパートの一夜
気づかなかったぜ、まったく。
ウワサの勘違い女が、袖子のことだったなんて。どっちかっていうとおとなしくて、目立たないほうだったもんな。
成績はよくも悪くもなかったんじゃないかな。中くらい。容姿も……、まぁそこそこ、ということにしておこう。何といっても女だもんな、容姿に言及すると、思わぬ
【小説】嬲(なぶ)る 21 亭主と父親、どっちに味方する?
第 5 章
一 亭主と父親の板挟み
成長期、体の成長に心が追い付いていかない。肩書の出世に、実力がついていかない。そういうことって、よくあるよな。
藤枝クリーニングの苦境は、そんなところに原因があったと思うんだよね。
元々は小さなクリーニング店だった。農家の5男に生まれた袖子の親父が、クリーニング店の小僧として修業に いつもなら手水までイネの腕をつかんだまま入った。
5年間の
【小説】嫐(うわなり) 全編
《あらすじ》
今から30年余り前、猫も杓子もバブルに浮かれていた。世の喧騒は他人事のように、麦子は人生を一歩も進められずにいた。貴彦を思い切れずにいたからだ。
「話したいことがいっぱいあるんだ」と言い残して姿を消した、貴彦。以来10年以上、音信不通のままになっていた。
貴彦が使っていた方言「なやき」を手掛かりに、旅に出た麦子。そこで出合ったイネという女性の一生。夫に売られ、娼婦として生きた時間も組