しきから聞いた話 184 施餓鬼
「施餓鬼」
「すごく怖くて、でも、なんだか哀しげなもの達が、いたんです」
住職の横に座った初老の女性は、ひざの上で重ねた指先を見つめながら、ぽつり、ぽつりと話し続けた。
「父は、24歳で南方から復員したんだそうです」
「戦友がたくさん死んで、父も死にそうになったって」
「ガリガリに痩せて、でも、帰って来られたんだって」
父親の結婚は遅く、女性が生まれたのは、父が43歳のときだった。
「とても、可愛がってくれました。いつも優しい声で話しをしてくれて。でも、夜になると