ちゅうざんnote.

記憶と記録。短歌と散文。なんくるならない。 沖縄で生まれ育った中山琉貴です。俳優です。

ちゅうざんnote.

記憶と記録。短歌と散文。なんくるならない。 沖縄で生まれ育った中山琉貴です。俳優です。

マガジン

  • 短歌

    ゴーシチゴーシチシチで日常を切り取ります。

  • 黄昏をとめたい。

    散文。日々のことをつらつらと。

  • コラム「ちゅうざんの車窓から」

    八重山日報・沖縄本島版にて2018年4月〜2019年3月まで隔週土曜日連載担当していたコラムです。過去記事のいくつか掲載しています。

  • 読書の部屋

    おすすめの本をご紹介します。

  • シネマの部屋

    おすすめの映画を紹介します。

最近の記事

短歌連作「夏、待望論」

夏、それは俺が生まれて祖母が死に 愛が生まれて消えた季節だ ヘインズの白ティ買った ボックスの 赤supreme すぐに剥がした また春が過ぎてすぐまた夏がくる 去年のほてりも冷めてないのに ペイデイにハメを外した米兵と 腕相撲して折れた中指 ベトナムに行ってしまった米兵が サインしたまま褪せたドル札 アメスピの火はもう消えた アメリカの火はまだ灯るフェンス越し夏 島唄をくちずさむとき 三線の泣く音がする梅雨が明けるよ

    • 三月自選短歌「春はここです」

      くちびるに紅 まぶたには青 爪に花を咲かせて春はここです 洋服を脱ぎ捨てるように名言を 脱ぎ捨てていく着飾っていく ニセモノは大抵キラキラまぶしくて 君の狡さも愛してくれる 手放したから手に入れる手のひらに おさまるものは限られている 結末を選んだ順に春がくる。 別々に咲く花なのでしょう 振り切って駆け抜けて春とめないで、 もっと遠くの違う私へ こんなはずじゃなかったはずのその先に 想像以上の未来もあった

      • 13年前の3.11

        13年前の3/11震災発生時、まだ駆け出しのコピーライターだった私は先輩のお使いで西五反田のTSUTAYAに居た。 突然ザワつく店内と地鳴りの様なこれまでにない違和感。次の瞬間、店内の数人は咄嗟に入口に走った。呆気に取られてる間に前後のCD棚が激しく揺れた。棚の間には私と中学生くらいの女の子。互いに目が合った次の瞬間、夢中で手を引き(繋ぎ)入口に走った。必死に走れと叫んでくれた男性もいた。 気付いたら店の外にいて人が溢れていた。私たちがさっきまで居た棚はドミノ倒しだった。

        • 短歌連作七首「卒業のうた」

          もう少しあともう少し夢の中。 僕ら春待つ息吹のように 卒業の歌はいくつもあるけれど。 校歌はひとつしかないんだね マーチングバンドのように肩並べ 踏み出したらもう、それぞれの春 君が君のやさしさで苦しまぬように、 君の味方でいたい春です 島を出ていく君たちがこの島の 宝なんだよ「行ってらっしゃい」 この曲を教えてくれた君の声 ばかりで再生されてる曲だ 大丈夫、それでも日々は続くから。 「さよなら、いつか、また会ましょう」

        短歌連作「夏、待望論」

        マガジン

        • 短歌
          16本
        • 黄昏をとめたい。
          6本
        • コラム「ちゅうざんの車窓から」
          16本
        • 読書の部屋
          1本
        • シネマの部屋
          3本
        • ちゅうざんのラジオ・サンデー!
          6本

        記事

          短歌連作七首「サマー・ソルジャー」

          カーラジオから響くサニーデイ・サービス 雨を弾いて窓に七色 焦げついた気持ち火照(ほて)った魂に 生温い風、君に会いたい そっちはどう?って聞かずとも 知ってる君は君のまんまだ 炭酸のペットボトルを開けるとき 弾け飛ぶ泡くらいの青春 僕たちはサマー・ソルジャー あの夏の心はいまも火照ったままさ 空はどこからどこまでが空色で 僕らいつまで若者なんだ 夏がくる。にはまだ早く春雨の ペトリコールにブルーは香る

          短歌連作七首「サマー・ソルジャー」

          最近、憑き物が取れたかのように日々が充実してる。悩みが無いわけじゃない。晴れないままの憤りもある。それでも私は好きな仕事をし、やりたいことへの準備を虎視眈々と進めている。とても健康的だと思う。囚われのない心。何でもやれるという潜在的な自信。ままならない日常を楽しむ意思と日々の選択

          最近、憑き物が取れたかのように日々が充実してる。悩みが無いわけじゃない。晴れないままの憤りもある。それでも私は好きな仕事をし、やりたいことへの準備を虎視眈々と進めている。とても健康的だと思う。囚われのない心。何でもやれるという潜在的な自信。ままならない日常を楽しむ意思と日々の選択

          短歌単作七首「虚無虚無の実」

          身も蓋もない話だよ人生は 「絶望するな」だが生き急げ 深海に沈んだ日でも青空を 見つけるように生きていこうね 夢何処、人生(みち)に迷って手をあげた 我をこのまま運べタクシー 何事もなかったようにも生きていく ことはできるよ?できる、だけどさ くだらない全部が全部くだらないの中に 譲れぬ確かなものが ひとひらの言葉をポッケで握ってる 今日を生き抜くお守りとして 虚無虚無の実でも食べたかのような、 虚ろな夜には歌を詠もうよ

          短歌単作七首「虚無虚無の実」

          バレンタイン短歌「恋する惑星」

          君は「すき」っていう時いつも目が泳ぐ、 泳いでないで溺れさせてよ 地球儀の柄で包んだチョコ捧ぐ 人類全てを愛で満たして 惑星の星々柄のチョコ並べ 銀河すべてを❤️で満たした SAY YES 言えって早く生き急げ 期限があるんだ 恋、夢、ぜんぶ 恋の季節するもしないも二人次第 この惑星に風は吹いてる

          バレンタイン短歌「恋する惑星」

          散文「あなたの日常に幸あれ」 

          ちゃんと食べて寝ること 会いたい人に会えること 行きたい場所があること 出会うことは嬉しいこと 偶然や奇跡じゃないこと あたりまえでもないこと 無理はしなくてもいいこと 物事を拒否してもいいこと 人を拒絶するのは心苦しいこと 人に拒絶されるのは悲しいこと だから優しくありたいということ なるべく強くありたいということ 忘れたくない事 忘れたくない人 忘れなくていいこと 毎日がささいな出来事で 毎日がおどろきの連続で 平凡な日常はその連なりで あなたの毎日が穏やかで

          散文「あなたの日常に幸あれ」 

          雪の短歌 「警報級の光の粒だ」

          まばたきの瞬間まつ毛の先っぽに 触れてたような光の結露 この身体でお拭きなさいとワイパーの 隙間に積もる雪のハンカチ 雪の降らない島に生まれた僕が 空を仰げば触れる光 あなたにも見せてあげたい白だけど 街のすべてを染めて隠した 大都会、白く染め行く立春の 警報級の光の粒だ

          雪の短歌 「警報級の光の粒だ」

          短歌連首「sign」

          試しに手 振ってみたんだ 悲しみにこんにちはって、こっち来るなよ くちびるに閉じ込めていた嘘があり 振り返るとき歌に変わった ささくれを抜いてみたけど 思い出は痛いまんまで滲んだだけだ 君が夢に出てきてくれど愚かにも 僕は見破るタトゥーの位置で その水が濁っていても飲めたのは 君という名の沼だったから 君の良さに気付かぬ俺も阿保だろし、 俺に惚れない君は馬鹿だよ 心でも身体でもなく君のこと 好きだったけど、ここで手を振る

          短歌連首「sign」

          短歌連首 「マッチング・トーキョー」

          オレンジの光に誘われ走り出す トーキョー・恋セヨ・電波塔ナリ シモキタが知らないうちに整備され 吾の知らない街に変わった ビルの間に東京タワーは身を隠し 僕らのキスを見ないふりした 書を捨てよ?勿体無いよメルカリで 売れば街まで行く金になる マッチして尻尾を振ったら腰も振る 東京アニマルプラネットなう たぶん風吹くとき僕らそこにいて 気付いたくせに気づかないふり 街灯が照らす無機質モノクローム ガードレールに誰かの花束(ブーケ) 群衆の中に佇み仰ぎ見る 狂おしい

          短歌連首 「マッチング・トーキョー」

          人にやさしく

          やさしい人が好き。と言う声をよく聞く。私もそう思う一人です。やさしい人が大好きです。 やさしさにも色々ありますが、それをここで仕分け、ジャッジする気はありません。とにかく、やさしさは人間が持つ最も素晴らしい資質のひとつであることは間違いないと思っています。 やさしさを感じる時。または感じたい時。その思考は他者を通じて自分自身に向いているものです。結局、他人を介してしか自分を知り得ない。やさしい。が、やらしい。だったりする。 「自分のことがよく分からない」という声を耳にす

          喫煙所から見た景色

          ほろ酔いでステップ踏んでるそこの女子 缶チューハイ片手に勝ち誇って 鼻歌なんて歌っちゃってかわいいね ネクタイゆるめて肩で風切るそこの男子 咥え歩きはいけないや こっちで一緒に吸おうぜ 上着のポケット出ちゃってるかわいいね 三本ラインの洒落たジャージ来てる そこのジィちゃん それはずるいや小慣れすぎ 髪はなくとも神がかったハット まるでジャミロクワイ かわいいね さっきからこっち見てる駐車場の猫 目が合ったと思ったらシッポゆらしてる しかめっ面にまんまるボディかわいいね

          喫煙所から見た景色

          二〇二四年新春短歌 四首

          新年、あけましておめでとうございます。 被災、事故、事件。この国で、私たちの近くでも様々なことが起きています。どうか、皆様が穏やかに眠れる日が一日も早く訪れますように。 年明けからの連日の現象を目の当たりにして、 自分にできることなど、たかが知れているし、物品や金銭での支援など限界はあるので。短歌を詠みます。いまの私にできることはこれくらいです。 ーーーーーーー 【二〇二四新春 短歌 四首】 一、 ねぇ、いつかじゃなくて今夜話そうよ 明日のことなど分からないから ニ

          二〇二四年新春短歌 四首

          今年の短歌2023

          大晦日ですね。 一年が早い、なんてのは毎年思うことですが。 今年の九月頃、かな。ふと、短歌を詠みはじめました。書くことで、日常に色を取り戻した。と言うと大袈裟に聞こえますが、事実、短歌を通じて自分と向き合う、内なる自分や対世界と会話している感覚になれました。 どんな仕事、環境でもそうですが、ストレスというものはあって。ときに自分自身と向き合う時間、休む時は休むことがとても大切なのに。去年から今年の上半期にかけては忙しさにかまけて、少しサボっていた期間が多かったように思いま

          今年の短歌2023