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短歌

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短歌連作七首「卒業のうた」

短歌連作七首「卒業のうた」

もう少しあともう少し夢の中。
僕ら春待つ息吹のように

卒業の歌はいくつもあるけれど。
校歌はひとつしかないんだね

マーチングバンドのように肩並べ
踏み出したらもう、それぞれの春

君が君のやさしさで苦しまぬように、
君の味方でいたい春です

島を出ていく君たちがこの島の
宝なんだよ「行ってらっしゃい」

この曲を教えてくれた君の声
ばかりで再生されてる曲だ

大丈夫、それでも日々は続くから。

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短歌連作七首「サマー・ソルジャー」

短歌連作七首「サマー・ソルジャー」

カーラジオから響くサニーデイ・サービス
雨を弾いて窓に七色

焦げついた気持ち火照(ほて)った魂に
生温い風、君に会いたい

そっちはどう?って聞かずとも
知ってる君は君のまんまだ

炭酸のペットボトルを開けるとき
弾け飛ぶ泡くらいの青春

僕たちはサマー・ソルジャー
あの夏の心はいまも火照ったままさ

空はどこからどこまでが空色で
僕らいつまで若者なんだ

夏がくる。にはまだ早く春雨の
ペトリコ

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短歌単作七首「虚無虚無の実」

短歌単作七首「虚無虚無の実」

身も蓋もない話だよ人生は
「絶望するな」だが生き急げ

深海に沈んだ日でも青空を
見つけるように生きていこうね

夢何処、人生(みち)に迷って手をあげた
我をこのまま運べタクシー

何事もなかったようにも生きていく
ことはできるよ?できる、だけどさ

くだらない全部が全部くだらないの中に
譲れぬ確かなものが

ひとひらの言葉をポッケで握ってる
今日を生き抜くお守りとして

虚無虚無の実でも食べたか

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バレンタイン短歌「恋する惑星」

バレンタイン短歌「恋する惑星」

君は「すき」っていう時いつも目が泳ぐ、
泳いでないで溺れさせてよ

地球儀の柄で包んだチョコ捧ぐ
人類全てを愛で満たして

惑星の星々柄のチョコ並べ
銀河すべてを❤️で満たした

SAY YES 言えって早く生き急げ
期限があるんだ 恋、夢、ぜんぶ

恋の季節するもしないも二人次第
この惑星に風は吹いてる

短歌連首「sign」

短歌連首「sign」

試しに手 振ってみたんだ
悲しみにこんにちはって、こっち来るなよ

くちびるに閉じ込めていた嘘があり
振り返るとき歌に変わった

ささくれを抜いてみたけど
思い出は痛いまんまで滲んだだけだ

君が夢に出てきてくれど愚かにも
僕は見破るタトゥーの位置で

その水が濁っていても飲めたのは
君という名の沼だったから

君の良さに気付かぬ俺も阿保だろし、
俺に惚れない君は馬鹿だよ

心でも身体でもなく君の

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雪の短歌 「警報級の光の粒だ」

雪の短歌 「警報級の光の粒だ」

まばたきの瞬間まつ毛の先っぽに
触れてたような光の結露

この身体でお拭きなさいとワイパーの
隙間に積もる雪のハンカチ

雪の降らない島に生まれた僕が
空を仰げば触れる光

あなたにも見せてあげたい白だけど
街のすべてを染めて隠した

大都会、白く染め行く立春の
警報級の光の粒だ

短歌連首 「マッチング・トーキョー」

短歌連首 「マッチング・トーキョー」

オレンジの光に誘われ走り出す
トーキョー・恋セヨ・電波塔ナリ

シモキタが知らないうちに整備され
吾の知らない街に変わった

ビルの間に東京タワーは身を隠し
僕らのキスを見ないふりした

書を捨てよ?勿体無いよメルカリで
売れば街まで行く金になる

マッチして尻尾を振ったら腰も振る
東京アニマルプラネットなう

たぶん風吹くとき僕らそこにいて
気付いたくせに気づかないふり

街灯が照らす無機質モノ

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二〇二四年新春短歌 四首

二〇二四年新春短歌 四首

新年、あけましておめでとうございます。

被災、事故、事件。この国で、私たちの近くでも様々なことが起きています。どうか、皆様が穏やかに眠れる日が一日も早く訪れますように。

年明けからの連日の現象を目の当たりにして、
自分にできることなど、たかが知れているし、物品や金銭での支援など限界はあるので。短歌を詠みます。いまの私にできることはこれくらいです。

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【二〇二四新春 短歌 四首】

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今年の短歌2023

今年の短歌2023

大晦日ですね。
一年が早い、なんてのは毎年思うことですが。

今年の九月頃、かな。ふと、短歌を詠みはじめました。書くことで、日常に色を取り戻した。と言うと大袈裟に聞こえますが、事実、短歌を通じて自分と向き合う、内なる自分や対世界と会話している感覚になれました。

どんな仕事、環境でもそうですが、ストレスというものはあって。ときに自分自身と向き合う時間、休む時は休むことがとても大切なのに。去年から今

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連作短歌「92年夏。六歳」

連作短歌「92年夏。六歳」

コマネチで泣くほど笑った父がいた
蝉も泣いてた初夏の病棟

父さんが少しのあいだ留守にする
家はまかせて長男だもん

病棟の裏手の森にキジムナー
いるらしいんだ僕とよく似た

クワガタを集めるために蜂蜜を
差し入れみたいに抱えた七月

大声で笑って叫んで怒ってる
廊下のおじさんたちが朝から

ジャッキーチェンみたいに木登り
落っこちて心配される病院の庭

ママとパパどっちが好きと言われても
ママが

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自選短歌「深海の夢」

自選短歌「深海の夢」

君といた記憶に潜る深海で
溺れぬように泳がぬように

毎日が漂うだけの夜の海
夢の波間に星を仰いで

波風にさらされたのは息継ぎを
諦めらきれず手を伸ばすから

月明かり滲む海原に海月(くらげ)が
ゆらりゆれてるきらりとひかり

立ちどまり動けないまま若さだけ
絡めとられる浦島太郎

シーラカンス「本当」のこと
知り得たかい 心の海底遺跡で君は

ゆるやかに呼吸を止めておだやかに
泡(あぶく)とな

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自選短歌「はないちもんめ」

自選短歌「はないちもんめ」

みんな寝ている教室の窓辺から
見る夏雲とプールの匂い

ベランダに閉じ込められて笑ってる
十四の俺のあだ名〈スマイル〉

長過ぎた変声期まだ覚えてる
声にならない吾の悲鳴を

遊戯王カードだったら強いのに
俺のターンが来ないババ抜き

担任が仲良くしろと皆に言う
吾だけいないホームルームで

軟骨のピアスもパーマ金髪も
中二の俺を守るシールド

夏休み明けに刈られて丸坊主
ピアスの痕がやけにまぶし

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自選短歌・其の四 「月と蛇」

自選短歌・其の四 「月と蛇」

秋雨にけぶる十月胸中に君の面影探す新宿

背に咲いた百合のタトゥーに口付けを
今はどいつに愛でられている

憧れたヒーローよりも得意気に
仮面を被り生きてる日々だ

傷付かず傷付けぬようバランスを
取ろうとしててすべて失う

ワンカップ小銭で酔えるおいちゃんの
人生訓で胃もたれもする

うまいこと言ってやろうと意気込んで
考えている顔の悍(おぞ)まさ

「しんどいわ」つぶやきかけてすぐ消して
吾の

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自選短歌・其の三 「黄昏をとめたい」

自選短歌・其の三 「黄昏をとめたい」

月曜の朝からぜんぶやめちまえ
それができたら誰も死なない

朝晩と中島みゆきで励まされ
ユーミン聴いて泣いてる馬鹿だ

「難しい問題ですね」そうですね
予定調和が居心地いいね

チラシだけやたら過剰な映画見て
B級の意味噛み締めている

「ショーシャンクの空に」を見てから思うこと
ビールの美味さはロケーションだと

西洋人のフリした東洋人たちが
大口開けてチップをねだる

「正解」があちらこちらに

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