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生まれながらの言語ではない表現「悪童日記」「ふたりの証拠」「第三の嘘」

<文学(39歩目)>
生まれながらの言語で表現できなかった作家の作品から、才能の発掘方法を学ぶ。素晴らしい作品です。

悪童日記
アゴタ クリストフ (著), Agota Kristof (原名), 堀 茂樹 (翻訳)
早川書房

ふたりの証拠
アゴタ クリストフ (著), Agota Kristof (原名), 堀 茂樹 (翻訳)
早川書房

第三の嘘
アゴタ クリストフ (著), Agota Kristof (原名), 堀 茂樹 (翻訳)
早川書房

「39歩目」はハンガリーから亡命されたアゴタ・クリストフさんの代表作。
難解な言葉や言い回しもなく、シンプルに読める。且つ、心をうつ作品です。

クリストフさんは、共産圏であったハンガリーを捨てて、オーストリア経由でスイスに亡命された方です。

亡命時は、幼い子どもを抱えた女性で、生活のために工場で働きながら、「書きたい」との一心から、フランス語を学び、文章を書き綴って発表されたとのこと。
※詳細は、「文盲: アゴタ・クリストフ自伝 (白水社)」に詳しい。

彼女の文章には、「想い」が満ち溢れている。シンプルな文体の中に見事なストーリーが描き出されている。

リーダビリティがよく、結果として家族全員で読んだ作品です。

私事ですが、「楊逸」さんの講演を聞きました。楊逸さんは、中国出身で日本語以外を母語とする作家で初めて芥川賞を受賞された作家です。

彼女への質問で、アゴタ・クリストフさんについてお聞きしました。
彼女も大ファンらしく、同じく母語ではない言語で作品を書くことの難易度を伺ったのですが、楊逸さんからメリットもあると。

※他の言語で執筆するメリット
メリットは、「難しい言い回し」が困難ゆえに、「物語の幹」を考えることに専念できると。どうしても書きたい「物語の幹」が生まれたら、シンプルな言い回しで一気に書き上げるとのこと。
逆に、日本語で「言葉遊び(高尚な文章)」が難しいからこそ、シンプルに伝えることを考えて過ごされているとのこと。

「物語の幹」を考えてシンプルに伝えることが大切なようです。
「伝える」ということについてとても参考になりました。

アゴタ・クリストフさんの作品も同様に、シンプルなのですが、とても「伝わる作品」。

若い才能の発掘時の参考になると感じました(作家の発掘ではなく、若者の才能の発掘です!ほとばしるものがあれば、グダグダ言わずに「任せる!」がいいと感じています)。

この3部作は一気に読めますが、余韻はとても深いです。おススメです。

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