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短編たち

21
短編たち集です
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記事一覧

静寂閑雅

少しの静寂と本があれば生きていける。
僕はそっと耳を塞ぐ
周りの音が聴こえないように。

耳を塞げば静寂が僕を落ち着かせてくれる。
小学生の僕は少しだけ背伸びしてて
周りの大人は子供らしくないとか
可愛げがないとか嫌な言葉をぶつけてくる。

それも聞きたくない、聞こえないように
耳を塞いだのにあの子が話しかけてくる
「ねえ、ねえ。何を読んでるの?」
「探偵が出てくる本だよ」
口の形が小さくて唇がふ

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不思議な世界線

………ここはどこ?水の音が聴こえる……
水の中?息が苦しい……意識が遠のいていく……
……
「おい、おい!!!」

ふと気づくと僕はベッドの上に横になってい
た。
「お前スマホやり過ぎ…」
「君は誰?」
「通りすがりのお兄さんだ」
「名前教えてよ」
「名前聞いてどうすんだよ」
「お礼したいから」
僕の服はびしょびしょだ。
なんでだろう。
「お前を救い上げたんだ。スマホ歩きしててそのまま湖の中落ちて

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かさぶたは絶対剥がしちゃだめ

耳の中や体の中では小さいおじさん達が働いている。
僕は小さいおじさんを見たことがある。

蟻くらいの大きさのおじさんだったり、雀くらいの小さいおじさんもいるようだ。

休憩中だったようで、おにぎりを美味しそうに食べていた。

僕がじっと見つめていたせいか小さいおじさんはハッとしてどこかに逃げてしまった。
恥ずかしがりやなのだろう。
小さいおじさんが牛乳パックを壁にして何か言っているので耳を傾ける。

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短編量産してます(ショート)

夜中に電話の音がする。
ん…今何時だよ。とスマホを見ると3時
はぁぁぁぁぁ。
1度目が覚めるとなかなか寝られない俺はチッと舌打ちをし、ベッドの中でモゾモゾ動く。
緊急だったら留守番いれるだろうし…
しかもスマホじゃなく固定電話の方に
本当ふざけんな!!!と心の中で荒ぶるが、言葉には出さない。
俺は電話があまり得意ではい。
なぜだかわからないが、対面で話すときのほうが好きなのだ。
電話だと相槌のタイ

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カケコミトイレ

カケコミトイレ

言葉の武器を装備して俺は今日も会社に向かう。会社と言う名のダンジョンへ。
イタタ…胃が痛い。痛みこそ生きてる証なのだと俺は自分に強く言い聞かせ再び足を一歩前に前に進める。後ろから足音が聞こえ振り向くと後輩の武田だ
「先輩!おはよう御座います!今日会議ですね。え?まさか腹痛ですか?」と心配そうな顔をされる。
「いや、大丈夫だ…問題ない」と俺は言うが
すごく胃が痛いのとトイレに行きたいのだが
会社のト

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コインランドリー

僕はコインランドリーが空くのを待っている間
椅子に座って待っている。座る度にギシギシ、ギシギシと音を立てる椅子。
夏は暑くて嫌だったこの熱気が今では少し心地良く感じる。洗いたての洗濯物のにおいと、
洗濯物を畳む時の音がする。
なんだかここにいると、日帰り温泉や、スーパー銭湯と同じ所にいるんじゃないかとさえ感じ、不思議な感覚に陥るのだ。
ここに座っているといろんな人が来る
そりゃあ当たり前なのだが、

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淡々とした毎日の中で感じること(短編)

接客業が長く特にその中でもコンビニのアルバイトが長かった為か、『コンビニ』という単語に呪縛を感じてしまう僕がいる。
コンビニの仕事は淡々としていて、お昼前のピークと夕方のピークと店の立地によって、それぞれ違うのだが、大体どの店もピークはある。ピークの時はもうアドレナリン全開でお客さんを捌くのだが、それが楽しくて、楽しくて、あれは楽しかった、だなんて
まだ過去を引きずっている。
いつまでこの過去を引

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人外との恋(短編)

「俺はお前が好きだ!!!」
と無機物の重機に顔を擦り付ける。
周りから見ると変人扱いされるのだが、気にしない。
ガレージに駐めてある重機(ベアトリーチェと名付けた)に
「行ってきます!」と声をかけ俺は仕事に向かう

俺の真横を通った小さい子どもが俺を指差しているのを隣にいる母親が止めている。
「ねーままー」
「こら、やめなさい」とそさくさと立ち去る。

子供の頃から重機が好きで好きでどうしてもショ

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上司と後輩(短編)

俺の貴重な連休が台風と喧しいやつらのせいでことごとく潰されている…腹立たしい。はあ。どいつもこいつもタイミング悪すぎるだろ。タイミングが悪いのか、俺の運が悪いのか……。殻になったたばこの箱を潰してズボンの後ろポッケに突っ込み、灼熱の暑い中
歩きながら最後の1本のたばこを吸っている。
くそ、あちい…
真夏の太陽がジリジリと俺の肌を焼いていく。
歳も30後半だが、いろいろ理由があって実家暮らしをしてい

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単語をくっつけてみたら意外と話になる

俺の脳内で理性と色欲が戦っている。
この世界には男と女しかいないなんてよく言ったもんだ。確かにそうかもしれないが、俺はそうだとは思わない。曇り空の下、今にも雨が降りそうだなぁ…と空を見上げる。俺はしょうもない下ネタをぼんやりと考えつつ歩いていると目の前に胸の大きい女性を見かけて、俺も男だ、つい胸を直視してしまう。

しゃがんでいるからか顔は良く見えない。通り過ぎようとすると、女性のTシャツから、オ

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僕と彼女のとある日々

あぁ嘆かわしい。
ガチャを回す石をまた、回収祭りせねばならんとな。と俺はひとりごちながら家のソファでごろごろしていると
「またスマホゲームしてんのー?」
と横から覗きこまれる。
「うん〜推しキャライベントがね」
スマホを奪われて、
「スマホばっかり禁止〜、ゲームとかツイッターばっか見てるしー」と彼女に睨みつけられる。彼女は美人で自慢の彼女なのだが気性が少し荒いところがある。
「あー俺のスマホ……」

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今日もまた

脳内で言語化して言葉として発する。
今はそれができるように練習を行っている。

夜になるとバタバタ…ドタドタ…足音が聞こえる。
心霊現象?いやいや、隣の婆さんの足音だ。
壁が薄いためよく聞こえてくる。

少しボケてきているせいなのか、なんなのか
眠れないからと、なぜかドタドタバタバタ
水を飲んだり、うがいをしたり、おかげでこっちが眠れなくなる。

スイッチも何回も何回もカチカチ…カチカチ。
うるさ

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短編 温かいスープを君と一緒に

⚠️注意⚠️ ゆるい百合短編です 苦手な方は回れ右してください。

ベランダでたばこを吸っている私の事をぼんやりとしたお月様が低い空から覗いている。
後ろからそっと抱きつかれた。抱きつかれた手を優しく握る。

「何してんのー」と耳許で囁かれる。たばこを咥えながら振り向き
「危ないから・・・」と優しく諭すとたばこを奪われた。

あっ、という表情をしていたのも束の間、唇に優しくキスを落とされた。
「も

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短編なのかポエムなのか。読む人に判断願おう。

降りたい駅を切なげに見送る。ここは俺が降りる駅ではないからだ。降りる駅に降りて、待ち合わせの時間までまだだいぶあるので周りを観察しつつ歩くことにした。

ついつい人間観察をしてしまう。
人間観察をして、妄想を膨らませ、文字に起こす。それが楽しくて堪らないのだ。

言葉が出ない時も、そういう時もあると深く考えない。待てば良いのだ。
ぼんやりとしていたら1駅降りる前の駅で降りてしまった。
僕はインプッ

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