フォローしませんか?
シェア
三山 優
2024年4月29日 08:41
わたし、みためふつう。 けどなかみ、ふつうじゃない。 初対面の人とか、親しみやすいねってよく言われる。年上の男の人には舐められる。なんで男の人って「女の子」にマウンティングしたがるんだろう。男女平等って言われてるけど、おじさんたちにとって女の子はまだ「蚊帳の外」で、その「蚊帳」の中に普通に入ろうとする女の子は「生意気」って言われる。同じ人間なのに。こっちはちゃんと話を聞いてるんだから、自分の
2020年6月24日 22:04
ずっと箪笥の奥にしまっていた、すずらんの香りのするその液体は、そっと首すじにつけると肌触りの良い下着みたいに、わたしの身体に馴染んだ。テレビのニュースをつけるとわたしの大好きな女優さんが亡くなっていた。七十五歳。癌だった。 わたしには父がいない。離婚や死別したのではなく、元からいない。わたしは世に言う私生児だ。お母さんは、ひとりでわたしを産んだ。 でも、小さい頃は、時々「おじさん」が家に来
2020年5月16日 07:36
見もしないのにつけたままにしてた、うるさいテレビの電源を切って、煌々と白く輝く蛍光灯の明かりを消した。ベッドに潜ってスマホを充電器に挿すと、待ち受け画面の時計は午前一時を示している。「はぁ……」溜息をつくのがルーティンになってしまった。真っ暗な天井を見上げるのも、眠れないのも毎度のことだ。夜中にテレビと電気を消したら、これ以上ないくらいに独りだと感じる。〈そんな主張せんでも、充分わかってるわ
2020年4月19日 09:16
出会った時、他と同じ、普通の男だと思った。けれど、後からやってきた友人に〈今話しててん〉と紹介した時、なんだか誇らしい気持ちになったのを覚えている。 二度目に会った時、店までの道で、目線の高さを合わせるように首を少し屈めてこちらを見て、話を聞いてくれたのが嬉しかった。 三度目に会う前に、私はこの人の恋人になる、と思った。 紀子は電車に乗った。阪急武庫之荘駅から地下鉄なんば駅までの
2020年4月16日 20:22
〈何で恋に落ちるか〉って、あると思う。きっかけみたいなもの。例えば顔とか、性格とか、身体とか、声とか……言葉で恋に落ちるだなんて、素敵だな。梅田の、陽の当たる大通り沿いのカフェでコーヒーを飲みながら、ふふと笑った。 メールが待ち遠しくて仕方ない。メル友、と言うのだろうか。一日数回、メールを送り合う仲。なんてことのないことで送ってしまう。なんてことのないことで送られてくる。観た映画の感想だとか、
2020年4月16日 15:00
としさんは、私が可愛くなかったら、付き合わなかった、と言う。面と向かって、悪びれず、堂々と言う。私は、そうなの、と言って、困ったように笑う。けれど、心の中でほんとはまんざらでもないって思ってる。可愛いって、褒め言葉だもん。だって大切なのは中身だなんてよく言うけれど、本当は女にとって、外見を褒めてもらうことほど嬉しいことはない。だから女たちは皆こぞってメイク道具や服を買い、少しでもよく見せようと身
2020年4月15日 11:38
ライン。向こうは長らくスマホを見ない習慣がついてしまったらしい、続かない。一言送れば数時間後に一言返ってきて、返事をするともう返ってこない。はじめ、嫌われたのかと思った。でも、会えば以前と変わらないのと、はじめの一言の返事に「ゴメン、寝てた」とか、「スマホ見てなかった」などと謝罪のあることから、愛情は以前と変わらずにあるらしい。ただ、ラインをする、スマホを見る、という習慣が抜け落ちてしまったらし