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ジョン・カサヴェテス『ラヴ・ストリームス』感想
『ラヴ・ストリームス』("LOVE STREAMS")は1984年にジョン・カサヴェテス(John Cassavetes, 1929-1989)により生み出された作品である。本作は、監督であるカサヴェテス本人が演じるロバート・ハーモンと、カサヴェテスの妻であるジーナ・ローランズ(Gena Rowlands, 1930-)演じるサラ・ローソンという姉弟を中心に展開される。
流行作家であるロバートは、
ボリス・ヴィアン『心臓抜き』──心臓は停止し、天国は閉ざされる
『心臓抜き』(L'Arrache-cœur:1953)は、改題される前の草稿では『女王と小娘たち』というタイトルであった。またこの段階では、著者ボリス・ヴィアン(Boris Vian, 1920-1959)自身の自伝的要素が強い作品だったという。クレマンチーヌは彼の母親であるイヴォンヌの面影が色濃く投影されており、クレマンチーヌ=イヴォンヌはまさに「女王」として三人の子供たちに権力を振りかざすエゴ
もっとみる還元されるスティーヴ・ライヒという現象
1950年代後半から60年代にかけて、のちにミニマル・ミュージックと呼ばれることとなる音楽が誕生した。主なミニマル・ミュージシャンとして、スティーヴ・ライヒ(Steve Reich, 1936-)、ラ・モンテ・ヤング(La Monte Young, 1935-)、テリー・ライリー(Terry Riley, 1935-)、フィリップ・グラス(Philip Glass, 1937-)の4人が挙げられる
もっとみる高野秀行『辺境メシ ヤバそうだから食べてみた』感想
丸山ゴンザレスさんと同じくクレイジージャーニーで知ったノンフィクションライターの高野秀行さん。早稲田大学の探検部に所属し、その頃からハードな旅にチャレンジし、同部では今でも伝説的人物だとか。ちなみに、丸山さんの憧れの人物の一人でもあり、裏社会ジャーニーにも出演している。
元々(?)は幻獣や珍獣を探したり、辺境の地域の文化を紹介したりといった内容の著作が中心だが、本著はこれまで高野さんが世界各地で
アンソニー・ボーディン『キッチン・コンフィデンシャル』感想
アンソニー・ボーディン。1956年ニューヨーク市生まれ。フランス人の血を引く父親はコロンビア・レコードの重役、母親はジャーナリストという恵まれた環境で育つ。温室で甘やかされ、苦労せずともそのまま上流階級の大人になるのだろうと純粋に信じていたボーディンは、少年時代にバカンスで訪れた父親の祖国フランスの地で、食の楽しみに目覚める。飛び級で高校を卒業し、ヴァッサー大学に入学。友人から紹介されて始めた皿洗
もっとみるレオス・カラックス『アネット』感想
恐らく、現役で活躍している映画監督の中だったら、レオス・カラックスが一番好きだ(以前、その地位を占めていたのはゴダールだった。映画史に深く、そして美しく名前を刻んだ伝説的人物といえる彼が、昨年まで生きていた事実に驚嘆するものの、この喪失感は一生拭い去れないだろう。一方で、彼の死に方が安楽死だったというのは、あまりにもジャン=リュック・ゴダール監督らしい)。彼の作品はすべて観たし、ソフトも持っている
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