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たべること、生きること

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お茶とお菓子

お茶とお菓子

沖縄で実践的な行動をされている上間陽子さんと心理士のリーダーシップをとっている信田のぶ子さんの対談本言葉を失ったあとでを読んでるとお菓子の話が出てくる。グループカンセリングのとき、調査で話を聞き出すとき、お茶とお菓子は欠かせない。あの甘さで心の傷の吐き出しを和らげ、聴く方も力を溜めるのだ。

その時、思い出したのは吉本ばななの下町の思い出だ。
下町の女性はとてつもなく辛い愚痴を聞くとき、お茶とお菓

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6月のチェリーパイ

6月のチェリーパイ

 「ハケンアニメ」という映画を見ていったら吉岡理帆が演じる主人公が、やたらにコージーコーナーのエクレアを食べたがる。あそこのは安くて美味しいんだな。食べたくなった。で、一生懸命に買いに行った。
 そして、ついに買ったとき、限定チェリーパイのお知らせとシュークリームの割引券がついていた。6月はチェリーパイの季節だったか。そうかそうだったか。コージーコーナーで食べれるのか。
 私はデビット・リンチの「

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かきごおり 2

かきごおり 2

 こどものころ、夏一番おいしいと思ったのは線路沿いにあるかき氷やさんだった。お爺さんが、古いレトロなかきごおり機でしゃかしゃかとけずってくれて、ウエハースのカップにいれ、赤いいちごの蜜をかけてくれる。甘くて冷たくおいしい。行くときは必ず、その近所のともだちのおうちによる。お家はクリーニングやさんをしていて、おとうさんが洗濯物を古いコードのついたアイロンで整えている。湯気と汗でもおっとしている。その

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かきごおり 1

かきごおり 1

 今までいちばんおいしかったのは、福井は東尋坊でたべたかきごおりだ。福井の友人の家に泊まったとき、東尋坊にドライブにいった。有名な岩がある場所をみたあと、自然と周囲を散策した。青が目にしみるほど空がたかい日だった、ひどく暑かったけどここちよかった。がけのはしの周回道からにぶい青色のおだやかな日本海がみえた。みんな笑顔で黙ってあるいた。そのうち、ひどくのどがかわいた。先にちいさな茶店があり、ふだん、

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おにぎり

おにぎり

 えびの天ぷらを握った天むすをみて驚いた。そうか、この手があったのか。えびの甘みが香ばしくて、お酒にもよくあう。おいしいではないか。油っこいのもありだ。今はから揚げをいれたおむすびもある。衛生的に冷蔵できるコンビニがふつうになって、いくらやらまぐろやらの生っぽいおにぎりもふつうに食べれるようになった。普段、そんなゆたかなおにぎりを私たちは楽しんでいる。でも、日常はちょっとした自然のきまぐれであっと

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たまごやき

たまごやき

 むかしはたまごやさんで卵を買っていた。籾殻のはいった台に置かれた卵をいっこいっこライトに当てながら買うのって楽しかった。そんな命をいただくおごそかなたべものだった。

 卵焼きはなれないとむずかしい。それに、むきあったのは結婚後だ。なぜなら、夫の実家ではお正月のおせちに京風の出汁巻きたまごを必ず入れるからだ。どうやら、それを売って、ご先祖様が生計を立てていたありがたいたべものらしい。だから、真剣

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まぐろのおさしみ

まぐろのおさしみ

 まぐろは江戸時代の後半からさかんに刺身でたべられるようになったらしい。この前、読み直した本によると、理由のひとつは、濃い味がお醤油にあうということだったらしい。目からうろこだった。そうだよな、わかります。あの濃厚なあぶらにからむのはたまりませぬ。江戸時代に野田あたりで新しいおしょうゆができたから、まぐろがより美味しくなった。まぐろが江戸前すしもそのわけだったか。

 そういえば、まぐろのとろが美

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いちごのショートケーキ

いちごのショートケーキ

 1996年に発表された華原朋美のうた、「I'm proud」の歌詞で「いちご」が出てくるのは彼女が提案したことらしい。女の子がいちばん好きなものだからだそうだ。その話を聞いて、いちごはケーキに乗っているいちごなんだと私は感じた。

 人混みをする抜りぬける 大人が誘いの手を引く と二番の歌詞がはじまり、I'm proud 届きそうでつかめない いちごの用に 甘く切ないこと 夜中思い浮かべていた

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鯛

 鯛が嫌いだった。養殖にたいする偏見で、抗生部質のお薬まみれのわけのわからん餌を食べさせてるという噂もあったからだ。でも、ほんとは大量の数とかたちがそろった宴会の鯛の塩焼きが、かちかちに乾燥して出されてるのがとてもまずかったからだとおもう。ついでに小さな睨み鯛のお膳のまえで、森繁演じるおっさんが、温泉で浴衣をはだけて、若い社員さんにエッチなことをいうというのも浮かんでしまう、昭和のだらしない部分の

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キャベツの千切りとポテトサラダ

キャベツの千切りとポテトサラダ

 目玉焼き焼きは、キャベツの千切りとポテトサラダそえるのが好きだ。海外では茹でたジャガイモがあっても、玉ねぎの薄切りときゅうりをまぜ、マヨネーズで味付けされたポテトサラダはないんじゃないか。そして、とんかつにつき、コロッケにつき、しょうが焼きについているキャベツの千切りもだ。向こうのキャベツってくたっと煮られてるか、ザワークラフトのように発酵されてる気がする。私は細すぎず歯ごたえがある千切りキャベ

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おいなりさん

おいなりさん

 定期的に食べたくなるものにおいなりさんがある。唐突にたべたくなるので買ってしまうことが多いけど、お出かけ前に留守するとき、たまに家族用につくることもある。寿司酢をごはんにまぜ、しらす干しとごまをまぜるのが私のやり方だ。今の時期だと桜えびもいいし、菜の花もありかな。いろんなご家庭の混ぜ方があると思う。今、しっかり味付けしたおいなりさんの皮がスーパーの片隅で売っている。話はそれるが、あれは、冷凍うど

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桜餅

桜餅

 桜餅は花見がさかんになった江戸時代に作られたらしい。葉桜のもと、赤い毛氈のひかれた茶店なんかで、のんびり食べている感じが似合う。桜餅には二種類ある。ひとつは関西風のおはぎみたいにぽってりしたものと小麦粉の皮をかぶった関東風のものだ。おはぎみたいのは道明寺粉というらしい。私は桜の塩づけがねっとりからむ関西風がすきだ。あのしょっぱいか甘いかわからない味に桜の匂いがぷんとする。

 花の香を 若葉にこ

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たけのこ

たけのこ

 たけのこ好きな若い人はすくない。たけのこはお高いお値段だ。ゆでるのも手間がかかりそうで京の料亭の味っていう感じだ。和食って、高いし、なんだか気取っている。それも若い人がばかばかしくなる理由だろう。しかし、実は昔よりみんなはたけのこを気軽に食べている。それは、中国製の真空パックの水煮たけのこが手軽に手に入るようになって、中華料理にやたらはいっているからだ。これが結構うまいのは、とれたて茹でたてだか

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くだもの

くだもの

 朝の連ドラ「あさが来た」をみてると、明治時代はくだものが新しかったことがわかる。没落した主人公の姉は、親からみかん山をゆずられるし、娘の初恋にりんごがからむ。

 りんごといえば、島崎藤村の詩、「初恋」は、まだあげそめし前髪の林檎のもとに見えしとき 前にさしたる花櫛の 花ある君と思ひけり、と歌い上げている。

 明治のころ、改良されたくだもの、新しい栽培法が続々と輸入された。その新しいりんごと、

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