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好きにさせろよ

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日記、コラム、エッセイ的なもの。定期的にまとめてフリーペーパーにしています。
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記事一覧

ピル、初診料、2800円。

ピル、初診料、2800円。

自分は生理が重い方なのではないか、ということに薄々感づいてはいた。
腹痛と頭痛に耐え切れずに高校生の時からよく保健室に寝に行った。症状がもっとひどい時にはトイレで吐いていたし、それは特段珍しいことではなかった。
満員電車で立ちっぱなしでいたらどんどん視界が霞んでいって、電車を降りた瞬間にドラマみたいに真正面に倒れ込んだこともある。周りの人々はぎょっとしたように私を避けて円状の空間ができた。その時は

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これから何になろうかな。

これから何になろうかな。

ライターとして仕事をするようになってから、この8月で1年になる。
もともと趣味でこのように文章書いていたのが、色々きっかけがあり、去年の8月から、ライターとして記事を書かせてもらうようになった。
(具体的な経緯については下記で書いているので、興味のある方はご覧ください)

もう1年も経ったのか、という気持ちもあるし、本業をやりながら(会社員をしている)よくこれだけ書いたな、とも思う。
わかってきた

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誰かの言葉に呪われない

誰かの言葉に呪われない

まだ社会がこんな状況になる少し前、前の職場の人と飲みに行った時のことだ。
ちょうど1年ほど前に私はその会社を辞めたのだけど、職場の人たちとは結構仲が良くて、今でも飲みに行ったり遊びに行ったりする。その日も定期的に飲みに行くメンバーで予定を合わせていたのだが、直前になって一人から連絡がきた。

『Iさんも誘っていいですか? 来たいって言ってて』

Iさんというのは、私のひとまわり年上の女性社員だ。職

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言葉にしない夜

言葉にしない夜

午前4時、白けた蛍光灯の下で水を飲む。
馬鹿みたいな話だ。昨日オンライン飲み会をしていて、ろくにつまみもなく6時から12時まで飲み続けていた。12時過ぎに解散して、あーこれは飲みすぎた、と思いながら電気をつけたまま布団に横たわりうつらうつらすること数時間。気持ち悪さの予兆に意識が覚醒してくる。

気持ち悪さの予兆、わかるだろうか。横になって静かにしているうちはまだ平気、しかし、動いて縦になったら一

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もういい子じゃなくてもいいね。

もういい子じゃなくてもいいね。

3月20日、実家にいた。
と言っても、実家も今暮らしている家もどちらも都内にあり、1時間弱の距離しかない。もう17才になる実家の犬の衰弱が激しくて、頻繁に顔を出すようにしていたのだった。
でも、本当はもう一つ目的があった。

*

私には一つ秘密がある。
具体的なことは書かないのだけれど、もう10年以上も前のこと、兄に関するとある出来事があって、両親はそれを私に隠していた。ところが色々な偶然により

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恋したい人しか恋できない

恋したい人しか恋できない

つい昨日、友達に恋人ができた。
その人はちょっとだけ特殊な状況にあって、だから「両想いになる」ということが、たぶん一般的な恋愛よりも難しかったと思う(恋などというものを語るのに「一般」なんて枕詞がどれほどの意味を持つかは置いておくとして)。

その友達はその少し困難な状況と、少しずつ移り変わっていく相手の方との関係性と、そんななかで育つ恋心を日々Web上で書き記していて、私はそれを連載小説のように

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「幸せだ」って思ったら、そこで終わっちゃう気がしてた。

「幸せだ」って思ったら、そこで終わっちゃう気がしてた。

いつだって、欠けているもののことばかりが気にかかる。
終わったあとのこと、失くしたあとのこと。
今ここにあるものを、うまく見ることができなかった。

たとえば友達と約束をして、どこかへ出かけて、一緒に食事をして。それがどれだけ楽しくても、私はいつも残り時間ばかりを気にしてしまう。あと1時間で終電だな。そうしたらこの人はまた、この人の日常へと戻っていってしまうんだな、と考える。

ものを買う時も同じ

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私と言葉と、音楽のこと。

「音楽好きだよね」
友達に言われて、え、そうなの? と、ちょっと驚いた。
それから色々なことを思い出してーー好きな曲とか、今まで行ったライブのこととか、その時に感じたことーーうなずいた。
「うん、そうかも」
私、音楽好きなのかもしれない。

*

音楽ライターまでやらせてもらうようになったにも関わらず、私は今年になるまで自分が音楽好きだと思ったことがなかった。
たぶん、自分よりも音楽に詳しくて、

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満島エリオの実績一覧・仕事依頼について

満島エリオの実績一覧・仕事依頼について

自己紹介
ライターの満島エリオと申します。
音楽・漫画・小説を中心にエンターテインメント系のコラム・レポートと、親子・生き方に関するエッセイを執筆しています。

受賞歴
・2019年8月「音楽文」 月間優秀賞受賞(rockinon受賞)
rockinonが運営する「音楽文」というサイトにて、2019年8月月間最優秀賞を受賞
・受賞作品「幸福は音で伝播するー星野源DOME TOUR 2019『POP

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さよなら、正しい街

さよなら、正しい街

母は過保護だった。
月々のお小遣いは多くはなかったけど、遊びに行くときにはいつでも多めにお金をくれた。
少しでも天気が悪かったりすれば車を出して駅まで迎えに来たし、どんなに遅く帰っても寝ずに待っていて、私が夕飯を食べていなければキッチンに立った。

母は過干渉だった。
私が見覚えのない服やカバンを持っていると、すぐに「それいつ買ったの」と訊いてきた。休みの日にどこに行って、誰と会って、何時に帰っ

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ねえ軽率に幸せになってよークリープハイプ『泣きたくなるほど嬉しい日々に』

ねえ軽率に幸せになってよークリープハイプ『泣きたくなるほど嬉しい日々に』

“栞”という曲を公開直後に聴いた時、「あれ?」と思った。
その曲には、私の知っているクリープハイプの偏屈さやひねくれがまったく感じられなかったからだ。明るく軽快なメロディライン、≪「今ならまだやり直せるよ」が風に舞う≫という歌詞の、まっすぐな清涼さ。
知らないクリープだ、と思った。

ただこの曲は、「FM802 × TSUTAYA ACCESS!」キャンペーンソングとして書き下ろされたもので、歌っ

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【自分用】文学フリマレポート

【自分用】文学フリマレポート

11/24、文学フリマに「好きにさせろよ」というブースで出店、『36.5度の夜』という小説・エッセイ合同誌を頒布いたしました。

note、Twitterでも宣伝をさせて頂きましたが、予想以上の方にお越し頂くことができました。昨日は疲れすぎてミレービスケットを齧ることしかできなかったのですが、ミレー力(ぢから)をチャージすることができたので、総括も兼ねて当日のレポートを掲載します。

ミレー力(

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満島エリオ×ちゃこ 文学フリマ記念 36.5度の夜のラジオチャット【後編】

満島エリオ×ちゃこ 文学フリマ記念 36.5度の夜のラジオチャット【後編】

11月24日文学フリマ東京で頒布する合同誌「36.5度の夜」にて、共同主催を務めたちゃこさんと完成までの裏側についておしゃべりしてきました!
※このテキストは【後編】です。
【前編】はちゃこさんのnoteで読むことができます↓

本編はテキスト対談(読むラジオ形式)です。

※前編目次
自己紹介
タイトルの解釈について
制作メンバーについて(表紙イラスト)

制作メンバーについて(執筆陣)(

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『36.5度の夜』にようこそ

『36.5度の夜』にようこそ

11月24日 文学フリマ東京にて、私、満島エリオとちゃこさん共同主催によるエッセイ・小説合同誌『36.5度の夜』を頒布します。

参加者は以下の通りです。

著者(五十音順・敬称略)
・いちとせしをり

・お茶

・げんちゃん

・ちゃこ

・つきの

・満島エリオ

イラストレーター
・雨野よわ

*『36.5度の夜』というタイトルは、「かつて熱を持っていたものへの、ものさびしい懐古」、そして「

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