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【全文無料】プロのライターと編集者が、一銭にもならないnoteを続けるワケ

こんにちは。
ライターの北山です。

皆さまからすれば、いつの間にか蠕動していた、風呂場のカビ菌のような当アカウントですが、もちろん始まりにはきっかけとなった出来事があります。
フォロワーも1000人が見えてきた(感謝!)ことですので、ここで一度はじまりのお話をしてみようと思います。

なぜいまそんな話をするのかというと、メンバーたちが「アカウントに物語があった方がよくない?」と言ってきたからです。
我がメンバーながら、良いことを言います。私たちの正体を明かしたうえで、「何か面白いことをやってくれそう」と期待感を抱かせるのは、フォロワーの増加に必要不可欠でしょう。
でも、自分で書いたらいいのにね。

とまれ、「退屈の壊し方」(旧「ルポ〇〇の世界」)エピソードゼロのはじまりです。

さて、当アカウントをご覧になった方はよくお分かりかと思いますが、私たちはアラサー3人組でこのnoteを運営しています。

メンバーはライターの北山(私)、学術書編集者の四ツ谷、医療メーカー勤務の高端の3人。あと、サポートメンバーに脚本家の牛窓がいます。

一応「ほのかな社会の闇」をテーマとしているらしいですが、1年間の運営を経て、ごった煮のような読み口のアカウントになり果てました。
裏テーマは「無駄なことを楽しもうぜ!」なので、なんてことのない記事がいっぱいですが、なかなかの力作も交じってます。「あ、このごった煮、生姜入ってるじゃん。美味しいね」みたいに思ってもらえればいいなと思っています。

始まりは、だいたい1年前でした。出版業界で知り合った実用書編集者の宮崎と私の2人は、宮崎を編集者、私をライターとして書籍を出版しようと画策していました。私たちは印税が欲しかったのです。
宮崎は以前に所属していた会社の企画会議に「ルポ・タワマン」という企画を提出しました。ところが、当時の私には書籍の執筆実績がなく、残念ながら企画はボツとなってしまいます。

とにかく、必要なのは実績です。しかし、実績をつくるコネすらない。
そこで、私たちはnoteで実績を作ることにしました。

同じ年の夏、宮崎と私は、出版業界仲間の四ツ谷と一緒に鬼怒川温泉に遊びに行きました。ワーカホリックの宮崎は、温泉旅館にもPCを持ち込み、「興がさめる!」と遊びに命を懸ける四ツ谷から、胸倉をつかまれんばかりに怒られていました。

鬼怒川で遊ぶ我々

私は同じ部屋で呑気にビールを飲んでいたのですが、ふと「どうせPCあるなら、前に言ってたnoteの運営をやろうぜ」と言ってみたのです。こんなこと、ノリでないと一生始まらない思ったのです。
幸運なことに、宮崎のPCには私が書いた「ルポ・タワマン住人」の序文がありました。急ぎアカウントを作ると、すぐに最初の記事を投稿します。

つまり、「ルポ〇〇の世界」は、鬼怒川温泉で始まったのです。

その場で決めたアカウントの運営方法は、至極簡単です。月に一度、顔を合わせて編集会議を行い、記事にする企画(ネタ)を揉むこと。あとは決まった記事を順繰りに書いていくだけです。
途中から、「この編集会議も記事にしたら面白くない?」というグッドなアイディアが出たので、会議のグダグダ感もそのままお届けすることになりました。

非常に残念なことながら、言い出しっぺの宮崎は半年ももたず脱退をしますが、オリジナルメンバーの四ツ谷と私は残留しました。
四ツ谷と私は、なにより「続ける」ということが得意な性質だったのです。

とはいえ、「流石に二人で記事を回すのはしんどい」ということになり、急遽私の友人である高端に参加してもらうことになりました。こうして、「ルポ〇〇の世界」は現在の体制になります。
高端は唯一出版業界の人間ではないので、記事の執筆は練習中です。

とまあ、誰が興味あるのかという話をダラダラとしましたが、このアカウントの運営は我々の精神衛生上、非常に良い効能をもたらしてくれています。一年間の運営を経て、「noteをこうやって使ったら、人生が楽しくなるよね」という図式が見えてきたので、折角なのでお話しようと思います。

一番の効能、それは、日常生活を楽しむ筋力がつくことです。
毎日ボーっと生きていても、記事のネタなんて見つかりません。noteを始めてから、私はスーパーで買い物をしている時でも、「何かネタになりそうな面白いものはないか」と目を皿のようにするようになりました。つまり、「強制的に面白いことをさせられる運動」のなかに身を投じたのです。これは、想像以上に愉快なことでした。

日常生活のなかで、「あれやってみたいけど、めんどくさいなぁ」みたいに二の足を踏むことはよくありますよね。noteの運営によって、この迷いは吹き飛びました。なぜなら、私たちは面白い記事を書かなければならないからです。記事のために、奥多摩の廃村に行ったり、琵琶湖の有人島に行ったりしました。noteがなければ、きっと足を踏み入れることはなかったでしょう。

琵琶湖の有人島「竹生島」

ここで一番重要なのは、最初に決めた公開のペースを必ず守り続けることです。この約束を一度でも破ってしまうと、「次もまぁいいか」となり「強制的に面白いことをさせられる運動」から遠心力で放り出されることになります。何があっても、この約束だけは守り続けるのです。こんなことすら達成できない人間は何も成し遂げることができないと、自分に思い込ませるのです。実際にそうだと思います。

ちょっとアツくなってしまいました。効能の話に戻りましょう。
ふたつめは、世の中の興味の所在が分かるようになることです。アカウントを運営していると、「面白いものが書けた!」という自信作の記事が読まれず、予想に反して捨て記事のようなものが読まれたりする経験に直面します。
この経験は、特に出版業界にいる我々には得難いものでした。どんなタイトルをつけたら、人々は記事に興味を持ってくれるのか。いいねとアクセス状況の相関関係は? こういった知識は、出版業界に限らず、あらゆる仕事に活かせるのではないでしょうか。

もう一つの効能は、私に限った話かもしれません。
noteで記事を書くことは、ストレスの発散になるのです。私は仕事として、署名で記事を書いてお金をもらっています。「趣味を仕事にしていいね」と思われがちですが、有名媒体であればあるほど、自分の好きに記事を書くことはできません。媒体が望むネタを、媒体が好む文体で書かねばならないのです。正直、こうして出来上がった記事は、半分くらい他人のものだと思っています。
きっと著名なライターであれば、或る程度の自由は許されるのでしょうが、なにせ私は駆け出しもいいところなのです。媒体の意向に従うしか、選択肢はありません。

それに引き換え、noteはとっても気楽です。たとえば急に
きえぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!
と書いても、誰からも怒られないのです。
いま私は、やっと自分の文章を書きました。

いま深夜2時だけど、辛ラーメンにチーズぶち込んで食べちゃおうかな。もう無敵だぜ。

ああ、ここまで真面目にやってきたのに、最後の最後で奇行にはしってしまいました。ちょっぴり太鼓持ちのような記事になってしまいましたが、すべて本当に思っていることです。

おっと、大事なことを忘れていました。この記事を有料化しておくので、応援してくださる方々は、募金の気持ちで投げ銭をお願いします。
いくら「続けるのは得意」とはいえ、応援がなければパワーが弱まるのです。わがままだけど。

今回は特にオチもありません。
次は何をしてみたら楽しいかな。

それでは皆さま、ご機嫌よう。
毎日が楽しくあらんことを。ハオ。(円)


北山:1994年生まれ。ライター。「文春オンライン」、「プレジデントオンライン」などに寄稿。ついに今年で30歳だってさ。署名は(円)。

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