マガジンのカバー画像

小説「真夜中に目が覚めた」

15
「真夜中に目が覚めた」で始まる、結婚とは、夫婦とは、家族とは、幸せとはを綴った短編連作。
運営しているクリエイター

#夫婦

【第一夜】決め手

 真夜中に目が覚めた。

 喉が少し渇いていた。サイドテーブルの上に置いたまま、フタを閉めていなかったペットボトルのお茶を一口、口に含みフタを閉める。

 足元の誘導灯を頼りにトイレに向かった。用を足しまたベッドに戻ると、ふとんを自分の身体にこれでもかと巻き付け、浴衣を腹の上までめくり上げて眠っている洋二がいた。

 ああ、そうだ。私は洋二と寝たんだ。洋二は会社の同期だった。一週間前、

もっとみる
【第五夜】満ちる

【第五夜】満ちる

 真夜中に目が覚めた。

 忠幸と離婚してから……毎晩のように暗闇で目が覚める。寝つきも悪いし、夢見も悪い。とにかく朝までぐっすり眠れたためしがない。

 もう一年は経つと言うのに、私はまだ、心も体も立ち止まったままだ。

 何か新しいことでも始めて気分転換でもしてみようかと、スクール雑誌に目を通してみても、活字は目の前を素通りしていくばかり。

 結局、雑誌を閉じ、目を閉じて……

もっとみる
【第十夜】原動力

【第十夜】原動力

 真夜中に目が覚めた。

 ふとん争奪戦で敗北した結果、寒さに目を覚ましてしまう。他人だった二人が一緒に暮らし出すといろんな発見があるものだ。美優がこんなに寝相が悪いとは知らなかった。

 結婚する前、よく一緒に旅行にいっていたけど、ホテルの予約は必ず美優がしてくれて、段取りいいやつだなと思っていたけど、思えばいつもツインルームだった。

 もちろん結婚して新居に引っ越す際、布団を敷いて別

もっとみる
【第十一夜】半分こ

【第十一夜】半分こ

 真夜中に目が覚めた。

 暗闇で寝返りを打つと、ふとんから追い出されて少し冷たくなってしまった喬の手の平が指先にふれた。ぎゅっと掴むと寝ているはずの手が握り返してきて、思わず顔がにやける。寝相の悪さで丸めとってしまったふとんを元に戻して、喬の肩にかけ直した。

「いってきまーす」

「いってらっしゃい」

 まだ半分眠ったままの頭で喬を送り出すと、私は湯呑に注がれたばかりのあ

もっとみる
【第十三夜】気の利かない男

【第十三夜】気の利かない男

真夜中に目が覚めた。

昨日寝る前、かーちゃんが具合悪くて寝てるのをいいことに、内緒で冷蔵庫を開けてジュースを飲んだからだ。

暗い中、ちょっと怖いけどトイレに行く。おねしょしなくてよかった。明日、かーちゃんが元気になってますように。

「とーちゃん、ケーキ買いに行こうぜ」

かーちゃんの誕生日がやってきた。ちょうど日曜日だから、とーちゃんと3人でディズニーに行く約束をしてた。なのに、肝心のかーち

もっとみる