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【読書感想文】又吉直樹「東京百景より武蔵野の夕陽」

こんばんは!
最近、越谷雑談がやてっくの企画で「こしがや百景」という企画を始めた男、小栗義樹です。

本日は水曜日ですね!
僕の書く記事の中で、最も人気のあるコンテンツ「読書感想文」を書かせて頂きます。

本日の題材はコチラです。

又吉直樹「東京百景より武蔵野の夕陽」

芸人であり、芥川賞作家でもある又吉直樹さんの短編集「東京百景」の筆頭を飾る作品です。

東京百景は、又吉さんが上京してから32歳までの間に見た「東京の景色」を文章にした作品です。だから、短編集という側面を持ちつつも「デッサン」という印象も与えてくれます。

武蔵野の夕陽は、そんな東京百景の最初を飾る作品で、まさにこの東京百景という本が「どんなテイストで進んでいくかを予感させてくれる作品である」といえます。

上京した春に見た、井の頭公園を利用する人々の行動・そんな人との出来事を羅列し、感じ取った気持ちというフィルターを通して眺めた武蔵野の夕陽に対する印象を述べるというものです。

この作品を読むと、細部の蜃気楼が特徴的な、ギラギラした強いオレンジ色の夕陽を思う浮かべます。武蔵の夕陽はねっとりとしたオレンジ色で、ビルの陰が、所々オレンジを遮り、それがどこか切なくて、安心して、明日も変わらず訪れる日常を期待してしまいます。

東京百景の凄いところは、限りなく平和ないつもの日常・景色を想像させてくれるところです。展開される出来事・エピソードは、日常と非日常の間が切り取られていて、できそうでなかなかできない体験が詰まっています。哀愁漂うテイストで綴られる文章は、読めば読むほど惹き込まれていきます。

武蔵野の夕陽という作品は、井の頭公園という小さなコミュニティーの中で紡がれる人々のつながりと因果応報を、武蔵野の夕陽がそっと包み込み、まるですべてをリセットしてくれるという雰囲気を感じ取ることが出来ます。

別に悪いことをしたというわけではないと思うのですが、そこにはしっかり流れたマイナスをプラスに戻す作用が働いていて、これを因果応報と呼ばずして、何が因果となるのか?と思えてくるのです。

本来、これをお話として進行していくと、きっとそれは短編物語になるのでしょう。しかしこの武蔵野の夕陽は、プラスマイナスを一瞬で0に戻してしまう武蔵野の夕陽という景色を差し込むことで、ものの見事に又吉さんが見た景色を共有させるデッサンという役割を果たしているように思えるのです。

人の間に流れる不思議な日常と夕陽という景色を徐々に近づけ、最終的に交差させていくことで、構造的に景色を痛烈に想像させることが出来ている点も衝撃だなと思います。

物語を読み、頭の中で絵にし、そこに感想を充てるという、いわゆる「読書」という行為に疲れた人が読めば、まるで数枚の写真を見て、きれいだなぁとか、歪だなぁという感想を抱くだけで充分楽しめるこの作品は、読書初心者にとっても、熟練の読書マスターにとっても、Instagramウォッチャーにとっても楽しめる作品なのではないでしょうか?

東京百景の中には、東京のあらゆる景色が又吉さんの目線で、又吉さんの思い出で語られています。自分の中に明確な東京があろうと、東京という理想しかなかろうと、絶対に面白い作品であると言えると思います。

又吉さんの思考、又吉さんのモノの捉え方、東京という都会が、たった1冊の本から感じ取れる、非常に重厚な短編集です。

1本1本の作品が短いので、スキマ時間にさらっと読むことが出来ます。ぜひ、お近くの古本屋さんで探してみてはいかがでしょうか?

ということで、本日はこの辺で失礼いたします。
また明日の記事でお会いしましょう。
さようなら~

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