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掌編小説と詩

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掌編小説と詩。ビターテイストなものが多いです。日常の中にある小さな光を大切にしたい。 https://amonkoshaku0.booth.pm/
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ご紹介いただきました!文学イベント東京に委託で参加予定です。よろしくお願いします。
参加サークル:名も無き堂|文学イベント東京(スモール) @agL9HKKaqfnKkV0 #note https://note.com/heywood/n/n76f5fc6bc343

参加サークル:名も無き堂

参加サークル:名も無き堂

文学イベント東京 参加サークル 「名も無き堂」の紹介ページです。

名も無き堂様は普段は読書会を開催し、小説や詩の創作もされています。

■ 「彼女たちの世界は」

同じ専門学校の同期生だった夕星の彼女に憧れ以上の想いを抱き初めていた「わたし」。卒業と同時にその感情ともさよならするはずだったのに、その人が自分のアルバイト先へやってきた!最後の思い出に二人で記念写真を撮ってくれないかとお願いしようと

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掌編 詩「手は口ほどにものを言う」

掌編 詩「手は口ほどにものを言う」

手を繋ぎたいと言ったら、手を振りはらわれた
手を貸そうかと言えば、手出し無用と断られ
手を尽くすように僕は、手短に、手心を加えようとする
それでも彼女は手酷く僕を袖にして、手のひらを返すばかり
どうやっても僕たちは手違いになる
彼女に、手前味噌ばかりで手の内が見えない
手遅れなのだと言われた
彼女を手放したくなくて、僕が思わず手を掴むと
首をしめないでと言われる
怖いこと言わないでくれよ、手首じゃ

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掌編小説 「若人へ」

掌編小説 「若人へ」

 今日は散々な日だった。
 電車で高齢者に席を譲ったら、怪訝な顔で断られ、スーパーで店員さんを呼んだら無表情な顔で指示された。独身だというと可哀想な目で見られるし、一人でいると男が猫なでな声で寄ってくる。
 荷物が重い、歩き疲れて足が痛い。体が弱い親のために、買い物はずっと私がしている。ヤングケアラーという言葉を知ったのは最近だ。切れやすく、感情のまま暴れ、ひとの話を全くきかない。介護や認知症の身

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掌編 詩「風薫る望郷」

掌編 詩「風薫る望郷」

おめでとう
おめでとう
ご祝儀にたくさんの言葉の花束を贈る
おめでとう
おめでと
おめ
声がでなくなった
心が枯れて根が腐る
渇いた土と子種なし花に
なにができるというのか
蓮に憧れたわたしは
泥の中で溺れて消えていく

信じることをやめたとき
わたしを繋ぎ止めたのは
風薫る、寄せてはかえす思い出と
ふたりよりひとりで感じる心地よさ
望郷の愛しさがつのり、目に浮かぶ
刻み込まれた傷痕が疼くとき

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掌編小説「泣き虫の墓標」

掌編小説「泣き虫の墓標」

雪溶け水の泥の中からやっと探しあてたぼくの目玉サイズの小さな石ころ
手触りだけがいいだけのつるりとした丸い石
それを投げてみたらカランカランと空っぽの音がした

猫の額いほどしかないせまいうちの庭に
雪の重さで腰の曲がったナンテンの木が一本ある
お父さんがナンテンの苗を買ってきて
シャベルでサクサク掘ってそこに土をかぶせて植えたんだ
家族のためにって

赤い実が雪の重さにたえかねて
ゆさゆさ揺れて

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