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  • 【めりけんじゃっぷ】

    1人きりの異国生活   友達もいない、言葉もままならない状況から始まった17歳の青春

  • 記憶の記録

  • 【対談】僕と博士と村長さん

    僕には知りたい事や分からない事がたくさんある。そんな時は2人がいるあの村へ足を運ぶ。

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【めりけんじゃっぷ】第8話 解けた誤解と自転車の行方

第1話「別れの儀式と菓子箱の匂い」 ←前話「激甘レモネードと魂の叫び」 計ったかのようなタイミングでガレージに収まるエンジン音が聞こえる。 子供たちはガレージへ駆け寄る。 少々ご機嫌斜めの僕は、ようやく自分の荷物の整理を始めたところ。 様変わりした部屋で荷を広げる僕を見て、夫婦は驚いた様子。 「Oh my gosh, did you do yourself ?」 1人でやったのか?と聞かれても僕にはそれしか選択肢はなかった。 (ほったらかして買い物に出かけたのはそっち

    • 【記憶の記録】2人のサンタと洗面器

      毎年この時期になると自動的に思い出す。 それなりに色々な事を経験し40半ばを迎えた今尚、ブッちぎりに突き抜けて 他の追随を許さない、 人生の出来事ランキング第一位の座に君臨する強者の名。 「ポリニューロパチー」とも呼ばれ 複数の末梢神経が障害される病気。 当時9歳の僕に下された診断名。 多発性神経炎ギランバレー症候群 忘れもしない、いちいち仰々しい名前。 原因ははっきりしないものの風邪や下痢、食中毒症状を起こす (カンピロバクター)(サイトメガロ)(エプスタイン・バール

      • 【めりけんじゃっぷ】第7話 激甘レモネードと塊の叫び

        ←第1話「別れの儀式と菓子箱の匂い」 ←前話「good boy & good bye」 感動の別れの10分後に、緊張のご対面。 心が多忙で、脳がバグっている。 まだまだ未熟な17歳の僕がここで体得したのは「気を取り直す」というスキルだった。 今までの「牛と緑の大合唱」から一変、閑静な住宅街が視界を埋める。ほとんどの家の前には整った芝があり、自由奔放に育った草っぱらとは違い、 さながら植物界の優等生といったところか。 思いの外、質素なチャイムのボタンを押すと、奥でドタバタ

        • 【めりけんじゃっぷ】第6話 good boy & good bye

          ←第1話「別れの儀式と菓子箱の匂い」 ←前話「ロックな砂煙と涙のマッシュポテト」 サマーキャンプに出掛けたトムとは、出発前に別れの挨拶を済ませていた。 『空気のような男』エドはその名の通り見当たらない。 この2人の共通した行動は 「あっさり別れた方がいい」という事。 一聴しただけだとドライな感じがするが、男同士ってやつはそんなもので、照れるというか、気まずいというか、 「わかってるよな?」 という世界観がある。 一方、そんな格好つけた世界観なんてなんのその、

        【めりけんじゃっぷ】第8話 解けた誤解と自転車の行方

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        • 【対談】僕と博士と村長さん
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          【めりけんじゃっぷ】第5話 ロックな砂煙と涙のマッシュポテト

          ←第1話「別れの儀式」 ←前話「反骨精神とラクダの青春」 目まぐるしく変化する刺激的な留学生活なんてものが、見渡す限り牧場の、そのド真ん中に立つトレーラーハウスに訪れる確率は、 小学生の頃に流行ったファミコンをクラス中で僕だけ持っていなかったというそれより低い。 それでも毎日の授業や、トムやその友達との青春、トムのPCで初めて経験し夢中になったタイピング練習ゲーム、 食後のメアリーとの秘密会議は僕の英語力を徐々に押し上げてくれていた。 対して、穏やかで緩やかに過ぎる日々

          【めりけんじゃっぷ】第5話 ロックな砂煙と涙のマッシュポテト

          【記憶の記録】Dear〜殿下〜

          拝啓 急にお便りする事にしました。 命日だからとか、没後3年たったからなんていう理由じゃなくて、チラッとあなたの記事を見たもんでね。 もう20年近く前になるでしょうか? 福岡でライブに来てたあなたが 「どうやらアフターパーティーをしたいと言ってる」 とセキュリティーの仕事してた黒人の友達が、当時クラブで働いてた僕んトコに相談してきた。 「は?今日?」 テンパった理由としては、相手が相手なだけにっていうのもあるけど、当日、それも数時間後にだって。。 今だから言うけ

          【記憶の記録】Dear〜殿下〜

          【めりけんじゃっぷ】第4話 反骨精神とラクダの青春

          ←第1話「別れの儀式」 ←前話「ナイフと昼寝と食後の秘密」 授業初日。 部屋に入るなり聞こえてくる日本語。 忙しそうに準備をする先生以外は日本にいた時となんら変わらない異国感ゼロの空間。 「あ、おはよう!」 と、200歩譲っても英語とは言えないその言葉に無言で手を挙げて答えながら先生の所へ向かい、 ここに来るまでの車内でトムに教えてもらった言葉、 「Is there anything I can help?」 (何か手伝う事ある?) と言って、テキストらしき重そ

          【めりけんじゃっぷ】第4話 反骨精神とラクダの青春

          【めりけんじゃっぷ】第3話 ナイフと昼寝と食後の秘密

          ←第1話「別れの儀式と菓子箱の匂い」 ←前話「懐かしの助手席と思いつきの第一声」 見るからにご機嫌なメアリー。 ゆっくりと分かりやすい単語で話しかける。必死に聞き取る僕。 家まではあっという間の感覚だったが、街を出てからのその道中はほぼ大木の連続で、間違いなく馬や牛の数が人口を上回ってる事がわかる。 人気のニューヨークやカリフォルニアより、あまり日本人がいない所がよいと思い、ここオレゴン州を選択したのだが、 日本人どころかそもそもあまり人を見かけない、度を超えた田舎っ

          【めりけんじゃっぷ】第3話 ナイフと昼寝と食後の秘密

          【対談】規則と行動を考える

          僕:最近雨の被害とか多いけど、ここは大丈夫? 村長:あぁ。ここはなんとかね。人間にも随分被害が及んだらしいな。 僕:うん。最近はスマホで警報がなったりするから少しは意識するように なったきたけどね。 博士:学校ってトコはそのスマホってやつ、禁止なんでしょう? 僕:うん。残念ながらそういう学校は多いかな。 村長:んじゃ、いくら警報なっても意味ないな。携帯電話を携帯しなかったら、その物体は一体何に使うんだ? 博士:ごもっともですな。 僕:ところがね、スマホ禁止の学

          【対談】規則と行動を考える

          【めりけんじゃっぷ】第2話 懐かしの助手席と思いつきの第一声

          ←第1話 別れの儀式と菓子箱の匂い 現地コーディネーター1人、運転席にはこれから僕たちの世話をしてくれる先生。女子6人男子3人。 (男は3人並んで1番後ろの席だな) と想像していたマイクロバスの席のフォーメーションは、 『みんなの荷物を後ろから順番に置いていく』という、想像すらしなかったシステムによってあえなく却下となった。 となると、結構せまいな・・ ここから現地まで寝るという神業は、飛行機で味わったよりもさらに窮屈な道中になるであろうその車内では到底繰り出せそ

          【めりけんじゃっぷ】第2話 懐かしの助手席と思いつきの第一声

          【めりけんじゃっぷ】第1話 別れの儀式と菓子箱の匂い

          脈が速く感じるのは、国際線のやたらと高い天井に広がる絶妙なリバーブのかかった英語の出発案内のせいではなく、 儀式が間近に迫っていたからだ。 ドラマでよく観る場所。 出発ターミナルへ向かう下りのエスカレーター。 ここは、心配という想いしか頭にないはずなのに、 「行ってらっしゃい」という余裕の大人スキルを必死に繰り出そうとしている母親と互いに顔を見合わせ 「行ってきます」と言える最後の場面。 小学生の頃、予防接種の順番が回ってきた時の様な脈拍感覚の中、僕は母親に背を向けた

          【めりけんじゃっぷ】第1話 別れの儀式と菓子箱の匂い

          【小説家になる】最終話 122から301

          第1話「きっかけ」 前話「はじめたものの」 「採用の場合は一週間以内に」というバイト先からの連絡は、ない。 僕の中での絵画部門での変化はというと、 描いた絵が売れる事も、依頼が来ることも、まだない。 ひとつ、進展があるとするならば、ツイッターのフォロワーさんが 1人増えた。コメントをしたら返事をいただいて、フォローしたら、 フォローバックしていただけたのだ。 この1を大事にしていかなきゃ。 では、はじめたばかりの文章部門は? 前回までの総アクセスは122。 確認して

          【小説家になる】最終話 122から301

          【小説家になる】第3話 始めたものの

          第1話「きっかけ」 前話「心の灯」 早速作品をつくってみた僕、 はて、これからどうやって広めるのか? 売るって?誰が買ってくれるのだろうか? 値段とか。。。 ペンネーム的な? そもそもこのクオリティーで通用するのかね? 不安という壮大なスペクタクルが僕に襲いかかる。 やるしかない。よし、友達に見せてみよう。 ツイッターに。 インスタに。 反応は、先日絵を見せた友達からの「いいね」が2つ。。 意気揚々とSNSの世界に出かけた僕は、あっさりホームへ帰る。 そう、何か間

          【小説家になる】第3話 始めたものの

          【小説家になる】第2話 心の灯

          ←第1話「きっかけ」 美容室の兄ちゃんとの会話が頭をグルグル回ってる。 「絵」か。。「文章」ね。。 【いやぁ、絵、下手だからなぁ。厳しぃか】 【文章書いて、誰が読むのよ?】 が92% 【やってみれば、どうにかできそうな気がしなくもない】 が8% そんなところからのスタート。 RPGで言うところの、一番最初の町に降り立った、 金も防具もスキルもない冒険者。 兎にも角にも、作品をつくらないと始まらない。 はて?何の絵を描く?文章って何を書けばいいのよ? いきなりやってくる

          【小説家になる】第2話 心の灯

          【小説家になる】第1話 きっかけ

          世の中には色々な職業がある。 多くは会社などの組織に属して仕事をする一方で、自分で仕事を受ける、いわゆる自営というスタイルもある。 一応自営と呼べる職業かな?僕が思いを抱いた職業はピアニストだった。 幼少期から高校を卒業するまで先生に教えてもらっていたものだ。 因みに、ボンボンではない事は加えておこう。 高校を出てからも尚続けて、当時隆盛を極めたロングバケーションの 瀬名くんになる夢が、よろしく哀愁と共に儚く散った事は 数多く経験した挫折のうちでも、ぶっちぎりの力を誇る。

          【小説家になる】第1話 きっかけ

          【対談】上下関係を考える

          博士:はぁ。。。。 村長:あきらかに「どうした?」と言ってほしそうなため息だな。 博士:お察しの通り。 先日ね、若い衆にちょっとアドバイスをした時、 「そんな上から目線じゃ、聞く耳もてないっすよ。」なんて言われましてね。村長はそんな経験あります? 村長:そりゃあるさ。 博士:で、その時、村長は何て答えたんです? 村長:「そりゃ、しょうがない。私は(鳥)だからね。」 と。 博士:あ~!ズルい! 村長:ズルくないさ。飛んでたら、どうしたって目線は上からになるだろ。

          【対談】上下関係を考える