才木あらた

あなたの生活にありそうで、なさそうな物語を書きたいです。RN:君の瞳にデッドボール

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  • ショートシャンクの空に

    菅田将暉ANNのコーナー「ショートシャンクの空に」に投稿したショートストーリーをまとめています。

記事一覧

脚本起こし / 水本さん

今回取り上げるのは脚本家・坂元裕二氏率いる脚本領域制作による短編会話劇『雑談会議』の『水本さん』。テンポがよくて生産性のない屁理屈のやりとり、すれ違い、不意の緊…

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ショートシャンクの空に - 4

はい、カット!いいねえ、いい演技してる。まるで本物みたいだ。うん、本物の宇宙人だよ。でも一点だけ。歩き方だけ気になっちゃう。本物の宇宙人がそんなきれいにまっすぐ…

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ショートシャンクの空に - 3

あ、母さんそれ冷蔵庫に入ってたプリプリプリン?それ、俺のなんだけど…。いや兄さんのと俺ので2個あったでしょ、母さんは買ってないじゃん。いや「母さんが食べてるのは…

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ショートシャンクの空に - 2

あーごめんねごめんね、竜太郎ちゃん泣かないで泣かないで。いないいないばぁ〜!いないいないばぁ〜!うーん、泣き止まないかな…。あ、そうだ、ブーブーのおもちゃ!ブー…

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ショートシャンクの空に - 1

ピンポーン 「ご注文のピザお届けにまいりました」 ガチャ 「こんばんは、雨の中わざわざお届けにまいりました。意外と遠いんですね〜。地図で見ると5分くらいかと思っ…

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彼は誰

夜は無敵だ。一切の社会を排除して、ぼくたちだけの空間をつくることができる。夜通し世間からはみ出して悦を求めたり、みんなで悪さをしているような気になることで満たさ…

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失恋と君の好きなぼくを演じること

「別れたい」 と言われたのは人生で初めてだ。 自慢じゃないが、これまで振られたことはなかった。恋愛経験は豊富と言えば嘘になるが、ないわけじゃない。なんとなく気に…

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脚本起こし / 水本さん

脚本起こし / 水本さん

今回取り上げるのは脚本家・坂元裕二氏率いる脚本領域制作による短編会話劇『雑談会議』の『水本さん』。テンポがよくて生産性のない屁理屈のやりとり、すれ違い、不意の緊張感がとても好みの映像だったので脚本を起こしてみました。脚本執筆は坂元裕二氏、監督は清水俊平氏。

あらすじ残業中の日野(高嶋芙佳)が、会社の送別会で使用する紙コップに社員全員の名前を記入していると、亡くなったはずの同期・水本(三浦透子)が

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ショートシャンクの空に - 4

はい、カット!いいねえ、いい演技してる。まるで本物みたいだ。うん、本物の宇宙人だよ。でも一点だけ。歩き方だけ気になっちゃう。本物の宇宙人がそんなきれいにまっすぐ歩いてるの見たことある?モデルみたいなきれいなウォーキング。そういうんじゃないよね、リアルは。もっとこう、コスモスな感じ。そうそう、いいね!コスモス!ナイスコスモス!いいねえ、さすが飲み込みが早い。あ、やってた?宇宙人。お父さん宇宙の人とか

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ショートシャンクの空に - 3

あ、母さんそれ冷蔵庫に入ってたプリプリプリン?それ、俺のなんだけど…。いや兄さんのと俺ので2個あったでしょ、母さんは買ってないじゃん。いや「母さんが食べてるのは兄さんの分」って、それ兄さんの分食べてるの?んで、「兄さんが俺の分食べたかも」?いやいや、兄さんが食べてたとしても、俺が食べてない以上、母さんが買ってない以上、それは俺のプリプリプリンであって、母さんのものにはならないのよ!ん?じゃないのよ

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ショートシャンクの空に - 2

あーごめんねごめんね、竜太郎ちゃん泣かないで泣かないで。いないいないばぁ〜!いないいないばぁ〜!うーん、泣き止まないかな…。あ、そうだ、ブーブーのおもちゃ!ブーブーだね〜かっこいいでちゅね〜!ブ〜ブ〜………。だめだね〜ごめんね、上手にできなくて。よし、お兄さん頑張っちゃうぞ。高い高〜い高い高〜い。ほら、泣き止んだ!!やった〜!やっと泣き止んでくれた。高い高い好きなんだね〜竜太郎ちゃん。

あ、竜太

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ショートシャンクの空に - 1

ピンポーン

「ご注文のピザお届けにまいりました」

ガチャ

「こんばんは、雨の中わざわざお届けにまいりました。意外と遠いんですね〜。地図で見ると5分くらいかと思ってたんですけど、道が分かりづらくて、信号も多くてなんかめんどくさかったですね、はい。

えーっと、ご注文いただいたマルゲリータとマリナーラのLサイズ、あとは…えーと、なんだっけこれ。クアトロ、フォル、フォルマジ?フォルマッジ?名前むず

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彼は誰

彼は誰

夜は無敵だ。一切の社会を排除して、ぼくたちだけの空間をつくることができる。夜通し世間からはみ出して悦を求めたり、みんなで悪さをしているような気になることで満たされる。その根底には無常観や真っ当であることへのコンプレックスがあるんだと思う。朝まで友だちの家でゲームをしたり、一人でレイトショーを観たり、クラブでアホみたいに遊んだり、フジロックの深夜のレッドマーキーだってそう。

そしてその無敵が終わる

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失恋と君の好きなぼくを演じること

失恋と君の好きなぼくを演じること

「別れたい」

と言われたのは人生で初めてだ。

自慢じゃないが、これまで振られたことはなかった。恋愛経験は豊富と言えば嘘になるが、ないわけじゃない。なんとなく気になる人がいて、なんとなく付き合って、それなりに好きになって、それなりに悲しく別れる。そんなことを3、4回繰り返してきた。

どれも「失恋」というほど悲劇的な匂いはしなかった。紅茶の在り処がわからなくなったこともないし、いつもより眺めがい

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