耽美派

轢死の林檎

夢の終わりの冒頭で、まぶたを朝日に刺されたせいで、空蝉に、夢の澱が流れ込む。
21mgのタールのようにべたついたそれは
毛細血管の隅から隅へとじっとりと身を伸ばす。

知らない寂れた防波堤の上、夜光虫の群れる水面、揺らぐ度に何かを取り戻しかけ、掴みかけてはまた失う。

明るむ空の白が憎い、夕刻と橙と罵声が憎い。
偶像崇拝で救われた者は手を挙げおくれ。
そうして、お前の周りの大事な誰かの、大事な首を

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132「墨東綺譚」永井荷風

114グラム。永井荷風の手にかかると蚊の湧くどぶさえも何か風流なものみたいに感じられるが、実際のところ口の中まで蚊が飛び込んでくるようなところで肌を脱ぐ仕事などしていられるものだろうか。

 玉の井という私娼窟でゲリラ豪雨にあった「わたくし」がたまたま傘に飛び込んできたお雪という女と親しくなる。夢を見せられているような話であるし、何とはなしに落語みたいだ。

 お雪はテキパキと人懐っこい人でちょっ

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Oscar Wilde - The Artist

美しく儚い詩に出会った。オスカー・ワイルド の『the Artist』という散文。訳さなきゃという気持ちになったから衝動で訳した。

†††

芸術家

ある午後、彼の魂は”刹那だけ停まる歓喜”の像を創ることを熱望した。ブロンズを探しに彼は世界へ歩み進んだ。彼はブロンズに囚われていたのだ。

だけれど全世界中のブロンズは消失していた。全世界の何処にもブロンズは見つからない。ただ”永遠と耐え忍ぶ悲哀

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群魚のまろやかな夢

何気なく入った病院のトイレの便器の中に、小便が流し忘れてあった。
小便ぐらいちゃんと流せよと思ってレバーに手をかけ、ふと俯いた拍子に、小便の色が僕の目に入る。

その瞬間、ハッとした。
なんだか……ヘンだと思った。

その小便の色は、薄い黄色をしていた。
僕は、こう思ったのだった。

――果たして本当に、黄色なんだろうか。

自覚するよりも早く、僕の心臓の鼓動は、速くなっていた。
段々と、僕は、怖

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