3.妖霧

妖霧《ようむ》とは、隕石が生み出す不可思議な現象の一つだ。

 世界中に落ちた隕石の欠片はヒトの手に渡り解析がなされた。結果、錆色をした表面の金属部を剥ぐと琥珀色に輝く玉となることが解り、類稀な宝飾品として世界中に広まった。

 しかしそれ以上に驚くべき性質が明らかとなる。石は水に浸すやいなや、それを瞬時に沸騰させる効力があったのだ。それ故、瞬く間に石炭に変わり文明を支える資材として世界で重用され

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1.乗合バス

葛折りとなった険しい山道のせいで、バスの車内が大きく傾いだ。

 隣の座席に身体ごと投げ出されそうになり目をさます。……どうやらうたた寝してしまったらしい。早鐘を打つ胸に手を当て、周囲を見回した。乗合バスの車内は仄暗く人気はない。今、バスはどの辺りを走っているのだろう……。言い知れぬ不安に突き動かされ、曇った硝子窓に額をあて外を眺めやる。

 いつの間にか日は落ち、墨色の空に白藍色の下弦の月が上っ

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【連載小説】 コネクト #3

東京

 中央線の帰宅ラッシュは最悪だ。空気が薄く息苦しい上に、満員の車両に押し込まれている人々が発する体臭、香水に汗やタバコ、酒の匂いなんかが入り混り、余計に息が詰まる。

 ヒカリは自分と変わらない位大きいギターケースを両腕で抱えながら目を瞑り、ただ時間が早く過ぎるのを待っていた。

 一緒にいるバンドメンバーのジョーに目をやると、彼はベースを入れたケースの上に自分の両腕を置き、文庫本を読んで

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【もののけだものけものみち(5)】

(五)

「コガラシちゃん。きみは今日、死ぬかもしれない」

 なにをしに街まで出てきたのかをなかなか白状しない少女に森羅はそう告げた。単刀直入に言ってもとうてい受け入れてもらえないだろうが、「死ぬ」という言葉のもつ緊張感は、相手に警戒心を抱かせるには充分だ。案の定、少女はにわかに表情をかたくした。

「死ぬって何? 脅すとかサイアク」

「脅しじゃない。ボクには解るんだ」

「なにそれ。お師匠さ

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うれしいでござる!!
3

『星の底』

君は地面が下で空が上だと思っているだろう。でも星の中心はどこだと思う? もちろん地面のずっと下だ。僕たちはそこに吸い付けられて立っている。ならば星における上は地の底にあるんじゃないだろうか?
 西暦を三千年越えたあたり、全ての国家において共通の処刑方が追加された。
星からの追放。
体に特殊な装備を付けて風船のように飛ばされる。最初は綺麗な景色を見ていられるってんで罪人たちは喜ぶ。でも風に流され海を

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【小説】虚数とパンジ―【4】

西暦二〇二八年、アメリカ航空宇宙局通称NASAは、惑星探索機ボイジャー一号及び二号の観測装置の稼働を完全停止した。
 ボイジャー一号が太陽圏を脱出したのは二〇一二年の八月のことである。最後の観測において、ボイジャー一号は長い間仮想天体として知られていたオールトの雲の手がかりを人類に遺した。以降、人類はボイジャーの貴重なデータを元に、宇宙理論を更に展開していった。
 それから五世紀を経る頃、別の探索

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【小説】虚数とパンジー【3】

三、未知の飛行

 ――違うんだ。僕は人間。そして名前は廿日カヲルだ。君はイオナイト。そして新しい君だけの名前を得るんだ。シヲン。発音は僕と弟の名前とお揃いにしてあげよう。地球に咲く美しい多年草の花だ……。

 人間《Human》。
 鉱床は、自分が何者なのかを知らなかった。人間――その言葉は、彼の意識が生まれた瞬間、初めて聞いた言葉だった。鉱床は、目の前にいる奇妙な物体は、自分と同じ生き物なのだ

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【連載小説】  コネクト  #2

観察係

 この仕事を長年していると、様々な星を見る事が出来る。生命がいる星、いない星、緑豊かな星、劣悪な環境の星と様々だが、ルカは主に未開の星を担当している。

 生命のいない星では地質や空気のチェックなどをし、人類が住める環境であれば、土地を整えるために、適切な人材を派遣するよう評議会に申請する。

 ルカは天の川一帯にある星の定期的な管理、調査、観察を行っている。

 科学的な水準が高い星も

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【ミナゴ◇シンドローム(6)】

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「いやー、いい天気っすねー」

 額に手を当て、カンザキが積乱雲のもくもくと浮かぶそらを仰いだ。「こうやってトモダチと散歩するのって、オレ、むかしっから憧れてたんすよねー」

「ともだち? こうやって?」ノボルは声をとがらせて聞きかえす。「まるで夢が叶ったみたいな物言いですけど、寝ぼけてるんですか?」

「いやいやー、辛辣っすねぇ。マジ、バナナっすよ。かるく傷ついちゃいましたよ、オレ」

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やったー!!!
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星渡る人

僕は今、宇宙を漂っている。言い方としては優雅だが遭難と言うことだ。どうしてこうなったか説明をしよう。でもその前に僕が見ている信じがたい光景を聞いてほしい。あの光り輝く大きな人間は一体どうやって虚空を歩いているのだろう? 誰か知らないか? その訳を。
 僕は宇宙飛行士、つまり科学者だ。ロケットに乗って宇宙ステーションへ数週間移住し、仕事をして帰ってくる。そう言う職業だ。誰でもなれる訳ではないし、正直

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