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「エイプリルフールにデルク・ハートフィールドで騙された件」
アメリカでデルク・ハートフィールドの全集を出版しようという機運が高まっているらしい。そんな記事が今日、目に止まった。
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デルク・ハートフィールドが日本で紹介された時、当時の書店では問い合わせが殺到したという。書店員も寝耳に水の出来事で、なぜ急に、「デルク・ハートフィールド」なるアメリカ人作家の問い合わせが相次ぐのか、対応に窮したそうだ。
『僕は文章についての多くをデ
「かぼちゃの小倉煮」
かぼちゃは身体に良いと、母はかぼちゃをやたらと食べさせたがった。しかしかぼちゃの煮物は俺は嫌いだった。ご飯のおかずにならないからだ。
だから、俺はおかずにかぼちゃの煮物が出てるたびに文句を言ったものだ。
それでも母は俺にかぼちゃを食べさせたがった。母は夕飯の時間ではなく、おやつの時間にかぼちゃの煮物を食べろと言って出してきた。それは、ただの煮物ではなく、かぼちゃの煮物の上にたっぷりと粒あ
小説の書き方にもルールがある。
「圧倒的なエピソード描写力を会得したい」
今年に入って、トルストイの「戦争と平和」を読んだことを皮切りに、ヘッセやゲーテやトーマス・マン、あるいはカポーティを再読したりして、やはり、小説の質というものは、エピソード描写力に尽きると思った。
なので、俺もしばらくは圧倒的なエピソード描写力を身につけるという強い意志を持って創作に臨んでいこうと思う。
正直、noteもそうだけれど、ネットで挙
「熱帯夜」〜青森にあったとある飲み屋さんのお話
青森県は弘前にある量販店に勤めていたのは、三十代半ばの頃だ。店のすぐ近くに、七十代くらいの婆さんが一人で切り盛りしている飲み屋があった。
引き戸をガラガラと開けて中に入ると、氷水が入った白い発泡スチロールが傍に置かれており、その中に瓶ビールが何本か冷やされている。そしてその上には、小皿に盛られたサラダやら漬物やらが、小さな冷ケースに陳列されていた。
ビールが飲みたい客は、発泡スチロールを
「傾向調べてどうすんの?」
noteの創作大賞についての投稿が目立つようになってきた。辟易するのは、どの部門が競争率が低いだとか、どういう作品が傾向なのか馬鹿らしい分析を投稿しているもの。ほんと、アホくさいと思うし、そんな暇があったら自分の作品を磨けよ、と思う。
俺も多くの作品を創作大賞にエントリーしているけれど、だからと言って自分の書きたいことを曲げてまで応募しようとは思わないし、傾向とか競争率とかそんな分析をするこ
「帰宅」(ショートストーリー)
「何処へ帰るの 海鳥たちよ
シベリアおろしの 北の海
私には 戻る 胸もない
戻る 戻る 胸もない
もしも死んだら あなた あなた泣いてくれますか
寒い こころ 寒い
哀しみ本線 日本海、、、」
なんだか、聞き覚えのある演歌が鼓膜を震わせる。
夜10時半の内房線。ボックス席にひとり腰掛けていた。ストロング酎ハイのアルコールが全身を駆け巡る。僕は今日も、酒の力を借りて、束の間の逃避空間にいた
「紅い月」【原稿用紙30枚】
田坂さんが血液の癌で死んだのは、俺が青森の店に転勤になってから十ヶ月後のことだった。配属先である靴売場の上司だった。病魔は田坂さんのまだ若い肉体をあっという間に蝕んだ。
古い病棟の廊下を非常灯のあかりがぼんやりと照らしていた。リノリウムの床は傷だらけで、あちこち塗装が剥げ落ち黒いシミができている。
ある日、田坂さんの病室を退出した俺は、死の匂いに満ちた廊下を重たい足取りで歩いていた。外来
「そのドアの向こうに在るもの」【原稿用紙32枚】
Kはインターホンの音で目を覚ました。カーテンを取り付けていない四畳半の部屋の窓から、真夏の陽光が降り注いでいる。
Kは半身を起こした。そして、まず、昨日の競馬で大負けしたことを思い出す。
「クソッタレ、、、」
掠れた声でそうひとりつぶやいた。そして、のそのそと寝床から起き出し、玄関口のドアスコープを覗いた。黒い上下のスーツに黒い無地のネクタイ。まるでこれから葬式にでも行くような風体の二人が