二郎丸 大

ショートショートと短編小説を書いています。「また読みたい」と思ってもらえる話を書きたい…

二郎丸 大

ショートショートと短編小説を書いています。「また読みたい」と思ってもらえる話を書きたいです。 作品の投稿頻度:週2、3回(毎週ショートショートnote/シロクマ文芸部/140字小説)

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  • 色とりどりのメシの種

    不思議な種を食べて依頼人の悩みを解決する少年の物語です。創作大賞2024の参加作品です。

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固定された記事

本を書く幸せ #シロクマ文芸部

「本を書くのって結構大変なんですね」 編集者の男がおどけて言った。 「おいおい、今さら何を言っているんだ」 元作家の男が笑う。 「いやあ、先生は毎年四、五作ポンポ…

二郎丸 大
3か月前
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色とりどりのメシの種【第二話】 #創作大賞2024

子供の日って子供が働く日だったっけ。 むなしい自問自答。 俺は一緒に行きたいというユイに留守番を命じて、ひとりで放火魔の両親の家に向かった。 少し緊張してインター…

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色とりどりのメシの種【第一話】 #創作大賞2024

【第一話】メシの種との出会い 腹が減ったら飯を食べる。至極当然のことだ。 その飯は誰が用意してくれるか。 未成年の子供の場合は、お母さん。お父さんが用意してくれる…

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創作大賞2024にチャレンジしてみようと思います。心折れて2万字に到達できないかもしれませんが、温かい目で見守っていただけると幸いです🙇‍♂️

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トラネキサム酸笑顔 #毎週ショートショートnote

「オイ、ゴホン、オマエ、ゴホゴホ、起キロ」 え?誰? 「オイ、ゴホン、起キロッテバ」 嫌だ、怖い。寝た振りしよう。 「寝タ振リヲシテモ無駄ダ。俺ハ宇宙人ダゾ」 …

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誰かの夢を見た話 #シロクマ文芸部

春の夢と間違えて誰の夢を見ているのだろうか。 朝からカツ丼を食べさせられた。 カツ丼は好きだけど朝からは胸焼けする。 勘弁して欲しい。 スマホを観ながらゴロゴロす…

二郎丸 大
12日前
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春ギター #毎週ショートショートnote

♪ これが これこそが 俺がお前に 見せたかった 春の風景 ♪ 「どう?」 曲が出来るといつも最初にミー子に聴いてもらう。 「うーん、なんだろ、全然春って感じがしない…

二郎丸 大
13日前
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花吹雪にとらわれた男 #シロクマ文芸部

花吹雪の映像をずっと観ている。 桜が舞い散る様子は観ていて飽きることがない。 観るようになったきっかけを誰かに話すつもりはないし、その必要もないだろう。生きている…

二郎丸 大
2週間前
27

適応力 #新生活20字小説

変わっていく妻と娘。化石にもなれない私。 #シロクマ文芸部 #新生活20字小説

二郎丸 大
2週間前
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気になる人ができました #新生活20字小説

あの人とたまに目が合う。 合わせてくれる。 #シロクマ文芸部 #新生活20字小説

二郎丸 大
2週間前
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花冷え全員集合 #毎週ショートショートnote

「お父さん、今日なんか寒いね。桜も咲いたのに」 三女の夏子が帰ってきた。 高校生にもなれば父親となんか話したくもないだろうに、毎日何かしら声をかけてくれる。 「…

二郎丸 大
3週間前
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風車探偵 #シロクマ文芸部

風車を手に持ち、息を吹きかけてクルクルと回しながら、その探偵は現れた。 「皆さん、お待たせしました。犯人が分かりましたよ」 陸の孤島の古い屋敷に集められた男女五…

二郎丸 大
3週間前
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深煎り入学式 #毎週ショートショートnote

ちょっと遠くの国の、ちょっと昔の話。 珈琲好きの三兄弟がいた。 どのくらい好きかと言うと、珈琲の神様がご褒美をあげたくなるほどだった。 「お前たち、明日は入学式な…

二郎丸 大
4週間前
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いつか変われたら #シロクマ文芸部

変わる時を待っている。 ずいぶん長い間。 誰にも言ったことはない。 親にも。 愛した人にさえも。 教えてくれたのは祖母だった。 最初は信じていなかった。 荒唐無稽過ぎ…

二郎丸 大
1か月前
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友人の近況 #新生活20字小説

もしもし? 聞いたよ。 鳩になったんだって? #新生活20字小説 #シロクマ文芸部 #電話してどうする #電話に出たのは誰

二郎丸 大
1か月前
18

命乞いする蜘蛛 #毎週ショートショートnote

「助けてください」 ん? 「お願いです!まだ死にたくないんです」 え? 声はするけど姿は見えず。 「こっちこっち。上です!上!天井!」 蜘蛛が一匹、天井に張り付…

二郎丸 大
1か月前
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本を書く幸せ #シロクマ文芸部

本を書く幸せ #シロクマ文芸部

「本を書くのって結構大変なんですね」
編集者の男がおどけて言った。

「おいおい、今さら何を言っているんだ」
元作家の男が笑う。

「いやあ、先生は毎年四、五作ポンポン書かれていた印象があって。いま自分が書く立場になってみると改めて大変だなぁと。私が書くのはエッセイですけどね」

「君にはポンポン書いているように見えていたかもしれないけど、ポンポンは書いてないんだ、ポンポンは」

「そりゃそうでし

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色とりどりのメシの種【第二話】 #創作大賞2024

色とりどりのメシの種【第二話】 #創作大賞2024

子供の日って子供が働く日だったっけ。
むなしい自問自答。

俺は一緒に行きたいというユイに留守番を命じて、ひとりで放火魔の両親の家に向かった。
少し緊張してインターフォンを押す。

「はーい」

「あ、すみません、『何でもヘルプ屋マツダ』です」

「あ、はーい」

優しそうな女の人の声で安心した。
玄関のドアが開いて60代くらいの女性が出てきた。
マツダに言われた通り、挨拶をする。

「こんにちは

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色とりどりのメシの種【第一話】 #創作大賞2024

色とりどりのメシの種【第一話】 #創作大賞2024

【第一話】メシの種との出会い

腹が減ったら飯を食べる。至極当然のことだ。
その飯は誰が用意してくれるか。
未成年の子供の場合は、お母さん。お父さんが用意してくれる家も多いだろう。
でも、これは当たり前のことではないと知っている。

ウチの場合、ばあちゃんが飯を用意してくれていた。
俺達には両親がいない。生きているか死んでいるかも分からない。ある日、目の前からいなくなってしまったのだ。
だから、じ

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創作大賞2024にチャレンジしてみようと思います。心折れて2万字に到達できないかもしれませんが、温かい目で見守っていただけると幸いです🙇‍♂️

トラネキサム酸笑顔 #毎週ショートショートnote

トラネキサム酸笑顔 #毎週ショートショートnote

「オイ、ゴホン、オマエ、ゴホゴホ、起キロ」

え?誰?

「オイ、ゴホン、起キロッテバ」

嫌だ、怖い。寝た振りしよう。

「寝タ振リヲシテモ無駄ダ。俺ハ宇宙人ダゾ」

ガーン。
風邪ひいてるならマスクしてよ。
宇宙の風邪ってヤバそう。

「宇宙ノ風邪デハナイ。地球ノ風邪ダ」

本当に?

「本当ダ。何トカシロ」

病院行け。

「病院?テ言ウカ、ソロソロ直接話セ」

仕方なく起き上がると、いかに

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誰かの夢を見た話 #シロクマ文芸部

誰かの夢を見た話 #シロクマ文芸部

春の夢と間違えて誰の夢を見ているのだろうか。

朝からカツ丼を食べさせられた。
カツ丼は好きだけど朝からは胸焼けする。
勘弁して欲しい。

スマホを観ながらゴロゴロする。
たまに動画で大笑い。
そんなに面白い?
でも今は大笑い。

動きやすい服装に着替える。
ああ、サッカーをしに行くのか。マジか。
もう少し寝ていたいのだけど。
行くのね?はい。

友達がいると思ってサッカーをしに行ったのに誰もいな

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春ギター #毎週ショートショートnote

春ギター #毎週ショートショートnote


これが
これこそが
俺がお前に
見せたかった
春の風景


「どう?」

曲が出来るといつも最初にミー子に聴いてもらう。

「うーん、なんだろ、全然春って感じがしないのよね……あ、わかった!ギターの音が春っぽくないのよ。日本海が目の前に広がってる感じ。寒い」

「春の音を出せばいいんだな」

「駅前にギター教室できてたよ。行ってみたら」

そう言ってミー子がビラを渡してきた。
「春ギター教室

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花吹雪にとらわれた男 #シロクマ文芸部

花吹雪にとらわれた男 #シロクマ文芸部

花吹雪の映像をずっと観ている。
桜が舞い散る様子は観ていて飽きることがない。
観るようになったきっかけを誰かに話すつもりはないし、その必要もないだろう。生きている限り、この映像を観続ける。ただそれだけだ。



「いい加減、吐いたらどうなんだ!」

取調室に若い刑事の怒号が響く。

「おお、怖い。でもカッコいいね。そういうセリフ、俺も言ってみたいよ。ところで今日の昼メシは何?昨日のカツ丼うまかっ

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花冷え全員集合 #毎週ショートショートnote

花冷え全員集合 #毎週ショートショートnote

「お父さん、今日なんか寒いね。桜も咲いたのに」

三女の夏子が帰ってきた。
高校生にもなれば父親となんか話したくもないだろうに、毎日何かしら声をかけてくれる。

「花冷えっていうらしいぞ。風邪引くなよ」

「何それ、知らない」

「俺も今日知ったよ」

「なーんだ」

呼び鈴が鳴った。
玄関のドアを開けると、長男の春生が立っていた。今年の春から大学生で一人暮らしをしている。

「なんだ、何しに帰っ

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風車探偵 #シロクマ文芸部

風車探偵 #シロクマ文芸部

風車を手に持ち、息を吹きかけてクルクルと回しながら、その探偵は現れた。

「皆さん、お待たせしました。犯人が分かりましたよ」

陸の孤島の古い屋敷に集められた男女五人。
彼らはみな、屋敷の当主から招待状をもらったと言ってやってきたが、奇妙なことに屋敷の当主は招待状など送っていないと言う。
五人の中には「当主が嘘をついているのではないか」と疑っている者もいたが、「せっかく来られたのだから今日はお泊ま

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深煎り入学式 #毎週ショートショートnote

深煎り入学式 #毎週ショートショートnote

ちょっと遠くの国の、ちょっと昔の話。
珈琲好きの三兄弟がいた。
どのくらい好きかと言うと、珈琲の神様がご褒美をあげたくなるほどだった。

「お前たち、明日は入学式なんだろ?俺が思い出に残る入学式にしてやるよ」

「やったー!どんなやつ?」
一番下のオチョイが神様に聞いた。

「お前は小さいから浅煎りだ」

オチョイが入学式に行くと、かわいい女の子に出会って甘酸っぱい恋をした。

次は次男のチチョイ

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いつか変われたら #シロクマ文芸部

いつか変われたら #シロクマ文芸部

変わる時を待っている。
ずいぶん長い間。
誰にも言ったことはない。
親にも。
愛した人にさえも。

教えてくれたのは祖母だった。
最初は信じていなかった。
荒唐無稽過ぎたので。

毎日、豆を食え。
体質が変わるまで食え。
豆腐とか納豆は駄目だ。
素の豆を食え。
しばらく続けていると、豆しか食べたくなくなる。
そこまで続けたら後は欲望のままに食え。
できるか?

全くできる気がしなかったが、「できる

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命乞いする蜘蛛 #毎週ショートショートnote

命乞いする蜘蛛 #毎週ショートショートnote

「助けてください」

ん?

「お願いです!まだ死にたくないんです」

え?
声はするけど姿は見えず。

「こっちこっち。上です!上!天井!」

蜘蛛が一匹、天井に張り付いていた。

「蜘蛛がしゃべった?」

「はい、私です。助けを求めていたのは」

「なんで話せるの?」

「今そんなことどうでもいいでしょう!助けてくださいよ!」

「何すればいいの?なんともなさそうだけど」

「アイツが、俺を食

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