H. Tsukada

言葉って何?

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最近の記事

私の趣味

モールス符号でビートルズのLet it beを表現してみました。

    • 三島由紀夫に浸る

      三島は「金閣寺」以外、名前を忘れた短編集を1冊読んだことしかなかったので、今回は文庫本を新たに3冊購入した。 件の短編集でかなり印象深く思ったのは、三島由紀夫はある意味、性の求道者でもあったのだという事だったが、写真右上の「音楽」を読み始め、改めてその想いを強くした。 三島由紀夫は楯の会や阿佐ヶ谷での自決など、極右としてのイメージが先に立ち、食指が及ぶことはなかったのだが、この歳になると、右も左も関係なく、激烈な生き方をした人物が何故そのような生のあり様を持つに至ったのか

      • やばい。 持病のせいで倦怠感がものすごく、仕事以外は寝てばかりいる。まるで棺桶に片足を突っ込んだヨレヨレの老人みたいだ。そのうち仕事もままならなくなっちまうのではないだろうか…と不安が過ぎる。おまけに精神状態も万全とは言えず、綱渡りをしているみたいだ。 危ねえなあ…自分。

        • 〈詩〉夜想曲20番を聴きながら

          若かりしころの恋愛たち 思い返すたび 心のひだの深いところ 絶対零度の冷たさが 瘡蓋を剥ぐ 好きだよ 愛しているよ ひらひらとした言葉を吐きながら 好きだったのはその人の顔 愛していたのはその人の身体 決して その人自身ではなかった なぜそんな軽い恋愛をした? なぜ全身全霊でその人の全てを 愛せなかった? ごめん、みんな ほんとにごめんね ほんとに情けないちっぽけな僕でした この痛みを 償いだと思いながら あともう少し生きてみます

        • 三島由紀夫に浸る

        • やばい。 持病のせいで倦怠感がものすごく、仕事以外は寝てばかりいる。まるで棺桶に片足を突っ込んだヨレヨレの老人みたいだ。そのうち仕事もままならなくなっちまうのではないだろうか…と不安が過ぎる。おまけに精神状態も万全とは言えず、綱渡りをしているみたいだ。 危ねえなあ…自分。

        • 〈詩〉夜想曲20番を聴きながら

          <短編小説> ゲッセマネ

          柳井貢が飼っていた二匹の猫、クシロとメグロを他の猫と一緒に大きな籠に入れ、川に沈めて流したのは高校一年生の佐々木正巳だった。 四十年ほど前、私が中学二年生の秋の出来事だ。人には生きている間にどうしようもなく瞼に焼き付いて離れない光景や思い出がひとつやふたつはあると思うが、あの時の貢の苦しくそして悲しみに歪んだ顔を、私はずっと忘れることができずに今まで生きてきた。 私と貢の家は共に乳牛を三十頭ほど飼育する酪農家で、佐々木正巳の家はその頃すでに百五十頭余の牛を飼う、村では一番

          <短編小説> ゲッセマネ

          〈雑記〉ちょっとだけちょうだいお化け

          まわりを見渡すと 必ずいるんだよな 例えばデートで入ったレストランで 各自にメニューを決め 注文したのが来て食べはじめると 相手が食べてるものを見て 「ひとくちだけ味見させて」と スプーンやフォークでつまんで行く アイスクリームを食べている時も 違うフレーバーのを食べている 僕のアイスクリームを 「そっちのも食べさせて」と プラスチックのスプーンで すくって行く  そんな ちょっとだけちょうだいお化けが わが家にもいる 30年間連れ添ったワイフだ 笑っているから 悪気はな

          〈雑記〉ちょっとだけちょうだいお化け

          〈エッセイ〉ネッラ・ファンタジア

          私の住むM町在住の画家、Sさんは独特な絵を描かれる。彼女の作品の殆どが個性的なタッチの人物画で、町が発行する文芸誌の表紙も、ここ数年彼女の描いた少年や少女の顔の絵が採用されている。 去年から私が関わり始めたその文芸誌の編集委員会において、Sさんは副編集長をしておられ、ひし形のメガネフレームがとてもよく似合う素敵な女性だ。 昨年末に行われた編集委員会で「もしよかったら奥さんとご一緒にどうぞ」と、北海道芸術展覧会の巡回展示会のチケットを頂いた。彼女の絵も展示されているのだとい

          〈エッセイ〉ネッラ・ファンタジア

          Oblivion

          きみの記憶の残渣が 未だにぼくをえぐる その声と眼差しが ふとしたことで 網膜と鼓膜の内によみがえる 忘れようしても ぼくはいつもきみを ひきずっている 忘却は罪でもあり そして救いでもある いずれぼくも 忘れられた星屑のひとつとなり この静寂の天蓋の下で きみを忘れ きみに忘れられる そんな時がくる でもきっと この冷たい痛みは 数千光年離れたところでも 酵母のように降り積り 沈殿した多くの証の中から きっと泡のようによみがえる そう。痛みと悲しみは 永遠なのだよ 永遠

          「愚直」という言葉に憧れる。 何故か。それは今まで自分が愚直に物事に対峙したことがなかったからだ。 どこかいつも醒めていて、人生を舐めてきたような気がするのだ。物事に対しても、人に対しても。眠れずに灯りをつけ、じっとそんなことを考える午前零時過ぎ。なんだか辛いな…

          「愚直」という言葉に憧れる。 何故か。それは今まで自分が愚直に物事に対峙したことがなかったからだ。 どこかいつも醒めていて、人生を舐めてきたような気がするのだ。物事に対しても、人に対しても。眠れずに灯りをつけ、じっとそんなことを考える午前零時過ぎ。なんだか辛いな…

          (エッセイ)空飛ぶ音楽

          飛行機でアメリカへ向かうと、西海岸の主要都市に着くまでにおよそ10時間と少しかかる。飛行機によっては11時間以上かかる時もあるのだが、それは気流や飛行コースの違いによるのかもしれない。   今まで何度かアメリカへ行き、この北太平洋上空での10時間という時の長さと、そのうんざりするほどの退屈さを身体で覚えてしまっている僕にとっては、ひとくちに海外旅行といっても、その長時間の機内での辛い滞在がどうも二の足を踏ませ、わくわくした気持ちは遠のいてしまう事が多い。 ヨーロッパへ飛ぶ場

          (エッセイ)空飛ぶ音楽

          〈エッセイ〉説得力のある話し方をする政治家はやはり信じない方が良い。

          最近はある政党の党首と言われる人たちの話を鵜呑みにして、にわか国粋主義あるいは大和民族主義に傾倒し、嫌中・嫌韓に走る人が多いようだ。それらの党首たちはとても良いことも言っているが、「?」と思うことも言っていることに気が付かない人が多い。 例えばあの太平洋戦争は「欧米列強の支配下におかれたアジア諸国を解放するために日本が動いたのだから、日本は悪くない。日本こそ崇高な国なのだ」という話。あんなのは笠原十九司の「日本軍の治安戦ー日中戦争の実相」を読めば一目瞭然で異なった話だとわか

          〈エッセイ〉説得力のある話し方をする政治家はやはり信じない方が良い。

          <エッセイ> 傍にいた白鳥

          国道を隣町に向けて走っていた時、二羽の白鳥が南の空から北へ向かってゆっくりと飛んで行くのを見た。つがいであろう。三メートルから五メートルと付かず離れず、先を行くのはオスだろうか、その斜め後ろをもう一羽がしっかりと追随して飛んでいた。 暴風雪が去った翌日の午後、真っ青な大空を背景に羽を広げて飛ぶ、二羽のその白い姿は、実にくっきりと美しくこの目に焼き付いたのだった。 白鳥は「愛の鳥」だと言われている。古くから詩歌はもとより、絵画や音楽にも登場する。一度つがいとなった白鳥は死ぬ

          <エッセイ> 傍にいた白鳥

          〈エッセイ〉あたし

          どうしても尋ねずにはいられなくなった。 「Yさんはご自分の事を『わたし』じゃなくって『あたし』って呼んでますけど、それって昔からなんですか?」 「え?」   ブラインドを開けた教室の大窓を背にしているから、眩しい日差しがYさんの肩を背後から照らしている。彼女はこちらを見つめ、応えに窮している様子だった。   Yさんは二年前から私の教室で英語を勉強しているS町在住の女性だ。長野オリンピックに女子アイスホッケーの日本代表選手として出た方で、インターネットで検索すると、国外で行

          〈エッセイ〉あたし

          〈エッセイ〉恋愛について

          還暦をとうに過ぎ、来年から高齢者というカテゴリーに入る時期を迎えて、やっと「愛」とは何なのか、ということが朧げながら理解出来るようになってきた。 中学、高校、大学と思春期から青年時代を過ごし、そして社会人となり色々な紆余曲折がありながら現在の妻と出会い結婚し、子供ができ、そんな子供らが成長して旅立った後、静かに振り返ってみると、私は複数の恋愛を経験してきたと思う。 強火でフライパンまでが焦げるような恋愛から、弱火でことことと何かを大切に煮こむような恋愛までその形は様々だっ

          〈エッセイ〉恋愛について

          〈エッセイ〉「ばあーか」か「ぶぁーか」か。

          10年前、隣町の総合病院で父が息を引き取ったとき、しばらく母と父を二人きりにさせてあげようと思い、僕と弟は病室を出た。閉めたドアの向こうで母の号泣が聞こえていた。 どのくらいだったろう。20分くらいだろうか。母が落ち着いたのを見計らって僕らは再び病室に入って行った。母は目を真っ赤にしていたが、既に泣き止んでいた。 数日後、葬儀が終わって親戚も皆帰った後、母がぽつりと云った。 「あのね、私さ、お父さんが息を引き取った時しがみついて泣いてたのよ。お父さんごめんね、ごめ

          〈エッセイ〉「ばあーか」か「ぶぁーか」か。

          千年の祈り

          イーユンリーの短編集、「千年の祈り」を読みました。アメリカでフランク•オコーナー賞、ヘミングウェイ賞を受賞した作品です。 リンクを貼った向こうにある動画に見える彼女自身の明るさからは想像がつかない、重くて深いストーリーが胸を抉ります。 https://youtu.be/KfVESLLkhq0 中国の北京市で生まれ、北京大学の大学院から、アイオワ大学院に移り、それ以来ずっとアメリカで小説を書き続けています。現在、アメリカの市民権を得て執筆活動をしている彼女は、自身を中国に

          千年の祈り