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〈エッセイ〉ネッラ・ファンタジア
私の住むM町在住の画家、Sさんは独特な絵を描かれる。彼女の作品の殆どが個性的なタッチの人物画で、町が発行する文芸誌の表紙も、ここ数年彼女の描いた少年や少女の顔の絵が採用されている。
去年から私が関わり始めたその文芸誌の編集委員会において、Sさんは副編集長をしておられ、ひし形のメガネフレームがとてもよく似合う素敵な女性だ。
昨年末に行われた編集委員会で「もしよかったら奥さんとご一緒にどうぞ」と、
「愚直」という言葉に憧れる。
何故か。それは今まで自分が愚直に物事に対峙したことがなかったからだ。
どこかいつも醒めていて、人生を舐めてきたような気がするのだ。物事に対しても、人に対しても。眠れずに灯りをつけ、じっとそんなことを考える午前零時過ぎ。なんだか辛いな…
(エッセイ)空飛ぶ音楽
飛行機でアメリカへ向かうと、西海岸の主要都市に着くまでにおよそ10時間と少しかかる。飛行機によっては11時間以上かかる時もあるのだが、それは気流や飛行コースの違いによるのかもしれない。
今まで何度かアメリカへ行き、この北太平洋上空での10時間という時の長さと、そのうんざりするほどの退屈さを身体で覚えてしまっている僕にとっては、ひとくちに海外旅行といっても、その長時間の機内での辛い滞在がどうも二