歌舞伎狂言「三人吉三廓初買」河竹黙阿弥 レビュー ー流転する宝剣と循環する貨幣ー 3話
次は、百両の循環である。こちらは誰にもあって困らないお金である。本来の機能であれば、その循環によって社会と庶民が潤っていく。日本銀行を創設した渋沢栄一は、ちょうどこの作品の発刊の7年後の1867年に民部公子の共としてパリ万博にでかけた。渋沢はパリで、政府と大きな商店の間だけを流通する貨幣の経済ではなく、庶民の蓄えた小金が合本され社会へ投資され利益が還元される資本主義経済の重要性を見出した。例えるならば、身体の末端の毛細血管のように貨幣が巡回する経済である(鹿島茂「論語と算盤