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伝説のこどもたち

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私の出会った子どもたち、私にいろんなことを教えてくれた子どもたちについて綴っています。
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伝説のこどもたち けんちゃん

伝説のこどもたち けんちゃん


肢体不自由児施設で働きはじめて数年経った頃、

感覚統合療法の講習会後、しばらくして感覚統合療法室を作ってもらいました。

私がデザインした滑り台、運動発達のおくれたこどもたちを介助しながら滑ったり、四つ這いで登らせたりするためのものです。未だに、同じデザインのものを今の職場で使っています。そのほかにも、ブランコ、小豆のプール、バネ付きブランコいろいろなものを自分で作ってこどもたちとあそんでまし

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伝説のこどもたち ゆずひこ

伝説のこどもたち ゆずひこ

いまは、四十歳くらいなのかな?ゆうちゃんが、来始めたのは小学校1年生くらい?細くてよく動く子でした。当時は、「自閉症」という診断名だったかもしれません。典型的な「高機能自閉症」の子どもさんでした。知的に高いので、小学校4年生くらいまでは、通常クラスにいたと思います。それから、中学校まで支援クラスでした。勉強はできるのですが、休み時間に友達とトラブルになったりしていました。先生にもよく怒られていまし

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伝説のこどもたち りーちゃん

伝説のこどもたち りーちゃん

りーちゃんが来たのは、小学2年生の時。

1年生の途中から、授業中に独り言が多くなり、小児神経科受診の結果、発達障害(アスペルガー症候群)と診断されました。

2年から、支援学級に変わりましたが、すぐに不登校になってしまいました。

かなりピリピリした女の子だったので、若いスタッフがいいだろうと1:1の環境を作り遊んでもらいましたが、なかなかうまくいきません。スタッフと遊んでいても「トイレ」いうの

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伝説のこどもたち まこちゃん1 支援とは?

伝説のこどもたち まこちゃん1 支援とは?

まこちゃんは、メビウス症候群という診断がついてました。

メビウス症候群とは、「眼球の外転神経と、顔面神経に麻痺を生じることが主症状」です。

すなわち、表情がありません。

まこちゃんは、それ以外にも、嚥下障害や、下肢の麻痺と変形もあり、重度の知的障害でもありました。

日常生活動作は、全介助にちかく、また、発語がないのでコミュニケーションも取れませんでした。

1年生になっても、話すこともでき

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伝説のこどもたち まこちゃん2  介助とは?

伝説のこどもたち まこちゃん2  介助とは?

訓練室では、車椅子からマットに、抱っこして下ろしてマットの上で、音楽に合わせて身体をうごかしたり、ふたりでブランコに乗ったりするような遊びをしていました。

ちょっとだけ、笑ったような顔をすることもありました。

当然、訓練が終わると抱っこして車椅子に乗せます。

センターの長い廊下で、車椅子を押しながらわたしは、いつも歌をうたってました。そしてまこちゃんは、いつも穏やかでした。

その日は途中で

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伝説のこどもたち ゆかちゃん1

伝説のこどもたち ゆかちゃん1

感覚統合療法を始めて、2.3年たったころ、整形の外来から呼び出しがありました。一眼見て、重度の自閉症だとわかりました。

おかあさんは、ゆかちゃんをおんぶしていましたが、診察のため下におろそうとした途端、走りだしてしまいました。道路を横切り学校の校庭まで、一気に走って行きました。おかあさんと私は、車に轢かれたら大変と後を追いましたが、校庭にいくとけろっとして笑いながら立ってました。お母さんは、ほっ

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伝説のこどもたち ゆかちゃん2

伝説のこどもたち ゆかちゃん2

1年遅れで、養護学校に入学しました。生活面ではできるようになったこともありました。トーストしていないパンが食べられるようになった。下駄箱に靴を入れるようになった。カバンをもてるようになった。というようなことです。

しかし、訓練では、相変わらずでした。机についてくれないので発達検査は、測定不能の状態です。本をパラパラめくることはありましたが、おもちゃでは遊んでくれません。でもブランコに乗ることと、

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伝説のこどもたち ゆかちゃん3

伝説のこどもたち ゆかちゃん3

ゆかちゃんとおかあさんの毎日は、その日から変わりました。学校から帰ったら、ゆかちゃんの手を持ってその日の出来事をお話しするのです。(書くのですけどね)

わたしたちは、全く気づきませんでしたが漢字や簡単な英語も読めていました。 

その日、私は、ゆかちゃんを背にしてお母さんと話をしていました。

「ねぇ、本当ぜんぜんわからなかったね。ゆかちゃんがわかっているということ、ねぇ」二人で愉快な話をしてい

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伝説のこどもたち ゆかちゃん4

伝説のこどもたち ゆかちゃん4

毎週、ゆかちゃんに会うのは、とても楽しみになりました。最初のうちは、わたしがゆかちゃんの手を支えて文字を綴っていましたが、いつしかそれはおかあさんの役目になり、わたしはもっぱら質問をしていました。

作業療法士としてのわたしは、誰かの手を使って書くのではなく、自分の手で書いて欲しいと思っていたのでペンを持ちやすくしてみたり、一人で持てるようにペンを固定したりと、いろいろなことをしました。結局は、ト

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伝説のこどもたち ゆかちゃん5

伝説のこどもたち ゆかちゃん5

長崎大学でのカニングハム先生の講義がはじまりました。「きょうは、□□のお話をする予定でしたが、わざわざ岡山から来られている方がおられるので、FCのはなしをします」

えー!わたしのために、わざわざ講義内容を変えてくださるなんて

アメリカでのビデオを基にFC(faciritated comunication)とは何かという話が始まりました。それは、まさにゆかちゃんとわたしたちが見つけたコミュニケー

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伝説のこどもたち ゆかちゃん5.5

伝説のこどもたち ゆかちゃん5.5

ごめんなさい。書き忘れていたことがありました。

しかも、これを書いてないと「ゆかちゃん5 」がわからないかもしれないです。申し訳ありません。

ゆかちゃんが、文字を使ってコミュニケーションができるということがわかってから、おかあさんは学校の先生にその話をしました。先生は頭ごなしにそんなことができるはずがないと、ゆかちゃんが知的障害であるということを理解しなければいけないと言われたそうです。この話

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伝説のこどもたち ゆかちゃん6

伝説のこどもたち ゆかちゃん6

ゆかちゃんとの話は、とても面白くていろんなことを質問しました。不思議なはなしもありました。

お腹の中にいた時の話を聞いたときも、

あかいみずのなかにいたよ かあさんのこえがきこえていたよ はやくかあさんにあいたくてでてきたよ

と言うのです。調子に乗って「その前はどこにいたの?」と聞くと

とうさんのおちんちん

わたしと、おかあさんは、え!と顔を見合わせました。

じゃ、「その前は?」

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伝説のこどもたち ゆかちゃん7 ゆかちゃんの手紙

伝説のこどもたち ゆかちゃん7 ゆかちゃんの手紙

うちの施設は、年に1〜2回ほどレンタルスペースを借りてお祭りをしています。子どもたちの作品を販売したり、展示したり。ゆかちゃんの書いた文章は、自由に持って帰ってもらえるように玄関先に置いていました。それを今回、紹介しようと思います。「ゆかちゃん 6」に書いたように、障害のあるこどものおかあさんには、役目があるみたいです。

「いいやくめをもらったおかあさんへ」いい役目を与えられた人には いいごほう

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伝説のこどもたち ちえちゃん 1  就労支援ってなんだろ?

伝説のこどもたち ちえちゃん 1  就労支援ってなんだろ?

ちえちゃん(仮名)のことは、幼児期から知ってますが、選択性場面緘黙の女の子です。彼女は、学習面では問題ないのですが、家族以外の人とは、話すことができません。長いこと付き合っているわたしの質問にも、タブレットを使っての返事がやっとです。

中学までは、支援クラスにいました。そのころから編み物が得意で、注文に応じることができます。たとえば「50センチのワニを作って!」と頼むとほぼこちらの思い通りのもの

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