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饒速日命の伝承地を訪ねる

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『日本書紀』に神武天皇より先に天降ったと記される饒速日命。伝承地を巡りながら古代史の謎にせまってみたいと思います。
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ニギハヤヒの伝承地を訪ねる⑨  伊香色雄命と肩野物部氏

ニギハヤヒの伝承地を訪ねる⑨ 伊香色雄命と肩野物部氏

『新撰姓氏録』記載の物部氏関連氏族は約100氏族。その半数が祖神とする饒速日命六世孫 伊香色雄命。

今回はその伊香色雄命ゆかりの地と肩野物部氏について考えます。

前回の石上神宮の話しの続きですので、よろしければそちらもご覧ください。

伊香色雄命の邸宅跡

「ひらかたパーク」に隣接する大阪府枚方市伊加賀町。その高台にある宮山という場所は、かつて伊香色雄命の邸宅と伝わる意賀美神社がありました

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ニギハヤヒの伝承地を訪ねる⑧  石上神宮

ニギハヤヒの伝承地を訪ねる⑧ 石上神宮

 前回、物部氏の総氏神と言われる石上神宮に祖神 饒速日命が祀られていないと書きました。今回はなぜ饒速日命が祀られていないのかを考えてみようと思います。

 ご祭神ですが、石上神宮にしか祀られていない神様 布都御魂大神と布留御魂大神。「つ」と「る」一字違うだけでややこしいですけど、意味を知るとを納得できると思います。

布都御魂大神

 〝記紀〟神話の国譲りの段で 武甕雷神(古事記は建御雷神)と経津

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ニギハヤヒの伝承地を訪ねる⑦ 磐船大神社と鴨習太神社

ニギハヤヒの伝承地を訪ねる⑦ 磐船大神社と鴨習太神社

 これまで主に生駒山地の伝承地を訪ねてきましたが、生駒山地は大和川で区切られ、その南は金剛山地となります。金剛山地は明神山、二上山、岩橋山、葛城山、金剛山などから構成され、中でも葛城山は古代、葛城襲津彦を祖とする葛城氏の拠点であり、それよりもっと前の時代は、鴨氏や神武東征の論功行賞で葛城国造となった剣根命、そして尾張氏の本拠でもありました。

 生駒山地と違い、金剛山地には饒速日命の伝承地はほとん

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ニギハヤヒの伝承地を訪ねる⑥  水神と風神と、妄想話しと

ニギハヤヒの伝承地を訪ねる⑥ 水神と風神と、妄想話しと

今回はご祭神として祀られている広瀬大社を訪れました。

主祭神 若宇加能売命
相殿に 櫛玉命(饒速日命)
    穂雷命(カグツチ)

 社家の樋口氏が物部氏の末裔ということで相殿に櫛玉命(饒速日命)が祀られています。社家邸宅内にも境外末社 饒速日命社があるそうです。

 丁未の乱で蘇我馬子・聖徳太子に敗れた物部氏は、祖神 櫛玉饒速日命を祀るのに、饒速日命の名を消し尊称だけにして櫛玉命として

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ニギハヤヒの伝承地を訪ねる⑤ 桜井市外山と等彌神社

ニギハヤヒの伝承地を訪ねる⑤ 桜井市外山と等彌神社

奈良県桜井市外山 〝外山〟何と読むかご存知ですか?

「とび」です。

 外山地区には、宗像神社や桜井茶臼山古墳などがあります。

 前回の生駒市に鵄邑伝承地がありました。字は違いますが、こちらにも鵄(金鵄)に関する伝承があるのでしょうか?

と思ったのですが、こちらの地名は、大和猿楽 外山座(後の能楽 宝生流)が当地を拠点としたことに由来するもののようです。

そして今回の本題の鳥見山があ

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ニギハヤヒの伝承地を訪ねる④ 生駒市の伝承地めぐり

ニギハヤヒの伝承地を訪ねる④ 生駒市の伝承地めぐり

 奈良県生駒市は、前回記事の大和郡山市の北西に位置します。

長髄彦本拠碑、鳥見白庭山碑、饒速日命墳墓、夫婦塚碑(妻の御炊屋姫の墓)、鵄邑顕彰碑。一通り揃っていますので順番に見ていきましょう。

長髄彦本拠
生駒市上町 「前の池」のほとりにあります。元あったところが宅地開発で「白庭台」という住宅地になった為、この地に移されたとの事です。

鳥見の白庭山
『先代旧事本紀』は、「饒速日命は河内国河上の

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ニギハヤヒの伝承地を訪ねる③  大和郡山市で『「日本書紀』と〝物部氏〟の因縁を考えてみた。

ニギハヤヒの伝承地を訪ねる③  大和郡山市で『「日本書紀』と〝物部氏〟の因縁を考えてみた。

 饒速日命が宮居した 鳥見の白庭山に関する伝承地がいくつかあります。今回は、大和郡山市矢田地区の伝承地を訪ねました。生駒山地の麓に広がる矢田丘陵には、哮峯に天降った饒速日命が宮を決めるために3本の矢を放ったと伝わり、それが〝矢田〟の地名の由来とも言われています。

二之矢塚
順番前後しますが、二之矢が落ちたのは矢田坐久志玉比古神社。

一之矢伝承碑
 神社から南へ500mほどのところにありました

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ニギハヤヒの伝承地を訪ねる② 石切剣箭神社

ニギハヤヒの伝承地を訪ねる② 石切剣箭神社

 大阪では、でんぼ(できもの)の神さんで知られます。今はガン封じでも有名で、病気の平癒を願う方々が毎日たくさんお参りされています(お百度参り)。「でんぼ」は本来「伝法」の意、「伝法」とは社家に伝わる秘法の禁厭だそうです。また、神社の参道は占いの店が密集していて、密度で言えばおそらく日本一じゃないかと思います。

 石切剣箭神社
 ご祭神のご神威が強固な岩をも切り裂き、貫くほど偉大なという社名。社家

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ニギハヤヒの伝承地を訪ねる① 磐船神社

ニギハヤヒの伝承地を訪ねる① 磐船神社

 饒速日命は、物部氏らの系譜を詳細に記す「先代旧事本紀」はもとより、「日本書紀」も神武天皇より先に天降ったと記します。

 「日本書紀」の神武天皇即位後の記述で、国見をされた神武天皇が「(前略)ちょうど蜻蛉(トンボ)がつがった(交尾した)形のようだと仰せられ、それで秋津州の名ができた」に続き、伊弉諾尊が「日本は浦安の(平安な)秀真国」大己貴神大神は、「玉垣(美しい山々)の内つ国」、饒速日命が「虚空

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