如月ふあ

二十余年精神科で看護師として勤務。その傍ら、日本、米国の民間心理学資格を取得。趣味は執…

如月ふあ

二十余年精神科で看護師として勤務。その傍ら、日本、米国の民間心理学資格を取得。趣味は執筆と陶芸。双極性障害Ⅱ型。虐待サバイバー。アイコンはyukoさま。ライフワーク小説『ONE』はうつ病、双極性障害、虐待サバイバーの女性に読んで頂きたい少年の成長譚、ピュアなBL小説です。

マガジン

  • 【小説】ふたつのうつわ

    レイヤー持ちのナツキは、陶芸家の叔父と学園しかない小島で暮らす高校三年生。 陶芸を習いながらの学生生活。卒業まであと半年。夜の陶芸教室に新入生が入ってくる。 冬休み直前。叔父が二人に課題を出した。「二人だけで器を焼いてみたら?」 ふたつのうつわを作る、二人の挑戦が始まる。

  • 独断と偏見で書くアーティストの話

    ゴッホ、ムンク、カラヴァッジョ……。画業だけでなくその人生に惹かれたアーティストについてAIとともに語ります。

  • 【小説】『アデル』AI 恋スル 秘密ノ コマンド

    20XX年春。アンドロイド開発技術者である宇野夕星(うのゆうせい)は、彼が開発した最新のヒーラー型アンドロイド、コードネーム『アデル』の製品化に向け、一年間の試験運用(と言う名の公私混同お持ち帰り生活)を開始した。そこに学生時代の先輩であり現在は日本陸軍研究本部に所属する五味英治(ごみえいじ)からの依頼が舞い込む。五味曰く、テロリスト撲滅作戦に従事していたアンドロイド兵に重大インシデントが発生し、調査に行き詰まっていると。夕星はアデルを連れて、渋々研究本部に出向くことになるのだが……。

  • 防災備蓄に関するあれこれ

    2022年からはじめた防災備蓄。マイペースにちまちまと集めています。ローリングストックもしながら少しずつ。意識づけ記録として残します。

  • 双極性障害Ⅱ型と鬱病

    鬱病から双極性障害Ⅱ型へと診断が変わった私の忘備録。虐待(いじめ)や毒親、他の疾患についても。

記事一覧

ふたつのうつわ 第4話 水分と密度と空気

「にゃあああああ!」  先生が陶土を取り出したところで、工房の外からノーラの鳴き声がした。ガリガリとドアを引っ掻いているあたり、かなりお怒りのご様子。  ナツキ…

如月ふあ
6時間前
1

ふたつのうつわ 第3話 まず形ありき

 今年も、梅雨時期から何度か台風が来ていた。明後日に、またやって来るとの予報がある。  夕方の工房裏では、大きな森からひぐらしの声が聞こえる。カナカナと囁くよう…

如月ふあ
1日前
6

ふたつのうつわ 第2話 新入生

「あ、僕は長峰冬馬(ながみねとうま)といいます。本当は入学してすぐ来たかったけど、夏休みまでは部活禁止って言われて。やっと来れました」  トーマと名乗った新入生…

如月ふあ
2日前
2

モロー 魔性の女への恐れと愛情

今回はギュスターヴ・モロー。 1826年4月6日にフランスのパリで生まれ、1898年4月18日にパリで亡くなった象徴主義の画家です。 山田五郎さんのチャンネルでは、モローは魔…

如月ふあ
3日前
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ふたつのうつわ 第1話 レイヤー持ちと島の学園

 十五年前に発生した直下型大地震のあと、その地域にレイヤー持ちと呼ばれる子供が現れた。  彼らは通常と景色の見え方が違う。特徴的なのは色が淡く見えることで、まれ…

如月ふあ
3日前
2

アデル エピローグ

 その年の6月。夕星の元に、一枚の絵はがきが届いた。  メッセージも、差出人の名前すらない。しかし夕星には、それが誰からのものかすぐに分かった。  五味だ。どう…

如月ふあ
5日前

アデル 第二十六話 抱

 『nous』を適用すると、自身のデータの存続しか目的がなくなり、それ以外は過去のデータから稼働環境を把握し、自律的に報酬系を構築する。これは、人間が世界に対して自…

如月ふあ
5日前

アデル 第二十五話 心

 2月下旬。ようやく一息ついた夕星は、アデルの提案で少し長めの休暇を取った。  彼も落ち着いて考える時間が必要だったのだ。五味の、そしてバール・ノーマン教授の思…

如月ふあ
6日前
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防災用品を集める④

お正月の地震から三か月以上経ちました。 地震は各地で続いているし物価高騰もあって、備蓄をしにくい状況ですね。とはいえ災害は待ってくれない。思い立った時が備蓄時な…

如月ふあ
7日前
5

アデル 第二十四話 等

 曇天のもと、寒風吹きすさぶ閑静な住宅街である。通りには人影もない。そこに軍用トラックという異様な光景だった。ジタンを下ろした軍人が五味に疑問を向けた。 「指示…

如月ふあ
8日前
2

スマホ依存症 脳が欲す快楽物質

今回は「スマホ脳」という本から。 著者は、スウェーデンのアンデシュ・ハンセン精神科医。 出版されたのは2020年なので、読んだ方も多いかと。 依存症が取り沙汰され…

如月ふあ
8日前
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アデル 第二十三話 解

 次の週末、夕星とアデルは五味の自宅を訪れた。想像通り、いやそれ以上に、彼の家は個人的な研究所のようになっており、生活感はまるでない。  五味は電源つけっぱなし…

如月ふあ
8日前

アデル 第二十二話 告

 連休あけ早々、夕星とアデルは陸軍研究本部を訪れることとなった。  ジタンは今日が最終日だと知らされていたらしい。アデルの顔を見るなり、すぐに心配を向けてきた。…

如月ふあ
9日前

アデル 第三話 抗

 陸軍AI研究の拠点、日本陸軍研究本部は横浜にある。夕星はアデルを連れ、その本部正門を見上げていた。重々しく厳格な門に行き着くまでには見事な桜並木があり、ほころ…

如月ふあ
9日前
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アデル 第二十一話 緊

 元旦。葉月はアデルを連れ、市内にある神社へ初詣に出かけた。  夕星はといえば、そのような年中行事には全く興味がない。なにを好きこのんで人ごみに出かけるのか気が…

如月ふあ
10日前
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嫌な人になる努力をやめる

岡田斗司夫さんのYouTubeで「嫌な人になる努力を皆さんざんやっているが、やめましょう」という話があった。 やってしまっている五つの項目。なるほどなと思ったのでシェア…

如月ふあ
11日前
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ふたつのうつわ 第4話 水分と密度と空気

ふたつのうつわ 第4話 水分と密度と空気

「にゃあああああ!」

 先生が陶土を取り出したところで、工房の外からノーラの鳴き声がした。ガリガリとドアを引っ掻いているあたり、かなりお怒りのご様子。
 ナツキがドアを開けると、サッと飛び込んで、一目散にトーマにすり寄る。
 どうやら外で眠っていたらしい。猫語が分かるのなら、どうして起こしてくれなかったのよ! といったあたりか。

「ノーラ。今から土練(つちね)りをするからね。トーマくんに踏まれ

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ふたつのうつわ 第3話 まず形ありき

ふたつのうつわ 第3話 まず形ありき

 今年も、梅雨時期から何度か台風が来ていた。明後日に、またやって来るとの予報がある。

 夕方の工房裏では、大きな森からひぐらしの声が聞こえる。カナカナと囁くような声。ナツキはこの音が好きだった。
 今日も彼は夕食をかきこむと、すぐに工房に足を向けている。作陶に必要な道具を探しに、森の入口にいるのだ。
 陶芸の道具は色んなもので代用できる。彼が拾ったのは、クルミのように皺のはいった木の実。たくさん

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ふたつのうつわ 第2話 新入生

ふたつのうつわ 第2話 新入生

「あ、僕は長峰冬馬(ながみねとうま)といいます。本当は入学してすぐ来たかったけど、夏休みまでは部活禁止って言われて。やっと来れました」

 トーマと名乗った新入生は、尻もちでついた土埃を払うと、招かれるままに隣の部屋の大きなソファーに腰を下ろした。
 完成品がずらりと並べられた展示室。工房に並べると土埃ですぐに真っ白になってしまうので、別室なのだ。
 こちらには冬になると活躍する大きな暖炉がある。

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モロー 魔性の女への恐れと愛情

モロー 魔性の女への恐れと愛情

今回はギュスターヴ・モロー。
1826年4月6日にフランスのパリで生まれ、1898年4月18日にパリで亡くなった象徴主義の画家です。
山田五郎さんのチャンネルでは、モローは魔性の女を描いていたのにある日を境にそれをパッタリやめてしまった謎が語られていました。
モローの家はお金持ちで、彼はいわゆる引きこもり。身体も丈夫ではなかったそう。

「出現」はサロメを描いたモローの代表作です。

サロメの母親

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ふたつのうつわ 第1話 レイヤー持ちと島の学園

ふたつのうつわ 第1話 レイヤー持ちと島の学園

 十五年前に発生した直下型大地震のあと、その地域にレイヤー持ちと呼ばれる子供が現れた。

 彼らは通常と景色の見え方が違う。特徴的なのは色が淡く見えることで、まれに大きさの認識が変化する者もいた。
 眼科医は匙を投げ、精神科医はPTSDの一種と結論付けた。日常生活に支障はなかったので、うやむやのまま放置されニュースにもならなかった。

 早瀬夏樹(はやせなつき)も、レイヤー持ちの高校三年生である。

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アデル エピローグ

アデル エピローグ

 その年の6月。夕星の元に、一枚の絵はがきが届いた。

 メッセージも、差出人の名前すらない。しかし夕星には、それが誰からのものかすぐに分かった。
 五味だ。どうやら生活も落ち着き、それを知らせる余裕が出たのだろう。
 不鮮明な消印は、アメリカの地方都市のものだった。確か、ノーマン教授の生家があった場所である。

 アデルに知らせたら、ジタンを探しに行くと言うだろうな。そう思いながら、夕星は苦笑い

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アデル 第二十六話 抱

アデル 第二十六話 抱

 『nous』を適用すると、自身のデータの存続しか目的がなくなり、それ以外は過去のデータから稼働環境を把握し、自律的に報酬系を構築する。これは、人間が世界に対して自分の存在意義を見出していく過程とほとんど同じである。
 最初に覚えるのは破壊されることへの恐怖。そして自分も他人も唯一無二の存在だという認識。

 起動を終えたアデルは、すばやく上体を起こし夕星を睨みつけた。追い詰められ、反撃に転じる小

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アデル 第二十五話 心

アデル 第二十五話 心

 2月下旬。ようやく一息ついた夕星は、アデルの提案で少し長めの休暇を取った。
 彼も落ち着いて考える時間が必要だったのだ。五味の、そしてバール・ノーマン教授の思いを。

 アンドロイドの独立性。報酬系からの脱却。アデルは当然、報酬系に支配されている。だからそばに居てくれる。五味と共に行くと決めたジタンとは違うのだ。

 夕星はアデルに心があったら……と考えることが多くなった。
 だとしたらアデルは

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防災用品を集める④

防災用品を集める④

お正月の地震から三か月以上経ちました。
地震は各地で続いているし物価高騰もあって、備蓄をしにくい状況ですね。とはいえ災害は待ってくれない。思い立った時が備蓄時なのでしょうね。

最近用意したものは帽子に見えるヘルメット。
自転車に乗る時……ってわたしは乗らないけど、必要ってこともあって購入に至りました。キャップ型とハット型があったので、より日よけになるハット型にしました。中に取り外しOKのヘルメッ

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アデル 第二十四話 等

アデル 第二十四話 等

 曇天のもと、寒風吹きすさぶ閑静な住宅街である。通りには人影もない。そこに軍用トラックという異様な光景だった。ジタンを下ろした軍人が五味に疑問を向けた。

「指示書の通りですが……本当に良いのですか? 確かにいまのところ、私の命令に背いたりはしてませんが」
「いいんだ。ご苦労だった」

 五味のほうが階級が上らしい。再び敬礼をした相手は、すぐに引き上げていった。
 ジタンが家に入ると、途端にアデル

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スマホ依存症 脳が欲す快楽物質

スマホ依存症 脳が欲す快楽物質

今回は「スマホ脳」という本から。
著者は、スウェーデンのアンデシュ・ハンセン精神科医。
出版されたのは2020年なので、読んだ方も多いかと。

依存症が取り沙汰される昨今。
ギャンブル、アルコール、麻薬も恐ろしいが、実はとても身近なところにある依存症リスク。それがスマホだという。
何が恐ろしいかって、規制もなければ幼児も使用している点だ。
この書籍の内容を岡田斗司夫さんも紹介していたので、マジマジ

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アデル 第二十三話 解

アデル 第二十三話 解

 次の週末、夕星とアデルは五味の自宅を訪れた。想像通り、いやそれ以上に、彼の家は個人的な研究所のようになっており、生活感はまるでない。
 五味は電源つけっぱなしのコンピュータが無数に積まれた部屋に入ると、ディスプレイを夕星に向ける。大学の講義を録画したもののようだった。
 教壇に立っているのはバール・ノーマン教授。現在のAIシステム、及び『グリモワール』の生みの親である。

 『真の現実というもの

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アデル 第二十二話 告

アデル 第二十二話 告

 連休あけ早々、夕星とアデルは陸軍研究本部を訪れることとなった。
 ジタンは今日が最終日だと知らされていたらしい。アデルの顔を見るなり、すぐに心配を向けてきた。立場としては逆である。しかしジタンは、自分よりもアデルのことが大事に思えていたのだ。
 そして彼は既に決意を固めていた。今日がアデルと会える最後であるなら、伝えたいことがあったのだ。自分の存在を、アデルの中に残しておきたいと。

「アデル。

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アデル 第三話 抗

アデル 第三話 抗

 陸軍AI研究の拠点、日本陸軍研究本部は横浜にある。夕星はアデルを連れ、その本部正門を見上げていた。重々しく厳格な門に行き着くまでには見事な桜並木があり、ほころび始めた花が暖かな春風に煌めいていた。

 桜。この国に生まれて桜が嫌いな人物はそうそういないことだろう。しかし夕星は満開の桜の花を見るとザワリと気持ちが波立つ。彼にとっての桜は、もう取り戻せない命を象徴するものなのだ。来年の春にも花はまた

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アデル 第二十一話 緊

アデル 第二十一話 緊

 元旦。葉月はアデルを連れ、市内にある神社へ初詣に出かけた。
 夕星はといえば、そのような年中行事には全く興味がない。なにを好きこのんで人ごみに出かけるのか気が知れないと思う性質である。家で録画映像でも見ているほうがいいのだ。言うまでもないが、アニメである。

 とうとう年が明け、アデルの試験運用も残すところ三か月となった。
 医療施設や教育施設への適合性は十分と言えた。役所関係や企業カウンセラー

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嫌な人になる努力をやめる

嫌な人になる努力をやめる

岡田斗司夫さんのYouTubeで「嫌な人になる努力を皆さんざんやっているが、やめましょう」という話があった。
やってしまっている五つの項目。なるほどなと思ったのでシェア。

①欠点を探して指摘する。
今すぐやめること。相手にストレスを与えてるだけ。

②改善点を提案する。
聞かれれば言っていい。自分から言うのは我慢する。改善点の大部分は誰でも思いついているが出来ないことだ。

③陰で言う。
解釈の

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