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自分の仕事について

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実況アナウンサーという自分の仕事について書いた記事を集めています。
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記事一覧

スマホ仕様の「JV」とは!?20歳若いクリエーターたちと作りあげた濃密な4分間

スマホ仕様の「JV」とは!?20歳若いクリエーターたちと作りあげた濃密な4分間

初めてミュージックビデオを作ってみた。というのも、昨年、アナログレコードで「燃えろ!吠えろ!タイガーマスク」の音源を出したときから、映像化してみたいと思っていたからだ。今の時代、音楽と映像は切り離せないわけで、映像化することで、自分のことを知らない人に曲が届く可能性が広がる。そして、自分を知ってもらうとしたら、やっぱり歌ではなく実況だろうと思って、ビデオはレコードのB面に収録した実況バージョンで作

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古舘伊知郎初の小説「喋り屋いちろう」の読書感想文を書いてみた

古舘伊知郎初の小説「喋り屋いちろう」の読書感想文を書いてみた

古舘さんのエピソードで僕がいちばん好きなのが、アナウンサー駆け出し時代の話である。今より圧倒的に勢いのあったテレビ局に存在した、先輩から受けた厳しい指導や上下関係のエピソードは、いかにも放送局というかんじで、地方の小さなラジオ局で育った自分にはとても羨ましく思えるからだ。豪快で、おおらかで、理不尽。例えて言うなら、室温40度の中でヒンズースクワットを繰り返す昭和の新日本プロレス道場伝説のようなもの

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YMO伝説のLA公演を成功に導いたプロデューサー川添象郎と43年後の妄想実況が繋がった

YMO伝説のLA公演を成功に導いたプロデューサー川添象郎と43年後の妄想実況が繋がった

1973年生まれの僕にとってYMOは「お兄さん世代の音楽」だが、アルバムは全て買い揃えるほど愛好している。特に彼らにとって最初の海外公演、1979年8月2日のロサンゼルス・グリークシアターでのライブ映像は20代の頃から何度観たかわからない。この夜、チューブスの前座としてステージに上がった細野晴臣、高橋幸宏、坂本龍一の3人は、コンピューターを使った生演奏で聴衆を沸かせ、その様子が当時、NHKのニュー

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知らなかった業界コンテストを「実況」で伝える異色すぎる番組がNHKでスタート

知らなかった業界コンテストを「実況」で伝える異色すぎる番組がNHKでスタート

日本国内には、業界のスキルアップを目的に開催されているコンテストが数多く存在することをご存知だろうか。大小合わせて年間に100を超える大会が行われているものの、一般的にはほとんど知られていないのが現状である。『ニッポン知らなかった選手権 実況中!』とは、そんな“日本の技術力”を支えている業界コンテストを紹介する番組なのである。

テレビの世界では、高い技術を持った人をスタジオに呼んで大会を開いたり

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史上初、講談と実況のコラボ公開!神田伯山との一発勝負を振り返る

史上初、講談と実況のコラボ公開!神田伯山との一発勝負を振り返る

他業種のプロフェッショナルと実況とをかけあわせるセッションイベント、12回目は、講談師の神田伯山さんと一緒にやってみた。事前にほとんど宣伝しなかったのは、伯山さん効果でチケットがあっという間に売れてしまったから。公演の様子は互いのYouTubeチャンネルで公開が始まったので、ここでは映像で伝わらない部分を振り返ってみたい。

伯山さんと一緒にイベントをやるのは実に5年ぶりのことである。当時のことは

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実況芸とジェントル・フォレスト・ジャズ・バンドが一夜限りでコラボする

実況芸とジェントル・フォレスト・ジャズ・バンドが一夜限りでコラボする

(追記)このイベントは終了しています。

ジェントル・フォレスト・ジャズ・バンドのリーダーのジェントル久保田さんと知り合ったのは、2020年が明けてすぐだった。

The Okura Tokyoで行われた音楽業界のパーティーに、僕達は会を盛り上げる司会者と余興のバンドという立場で参加した。パーティーが終わって、ジェントル久保田さんとは、たまたま帰る方向が同じで、神谷町駅に向かう急な坂を下りながら会

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インドでも実現していない、世界初の「タブラ実況」とはどんなものだったのか?

インドでも実現していない、世界初の「タブラ実況」とはどんなものだったのか?

東京オリンピックは選手にとってはもちろん、実況アナウンサーにとっても晴れ舞台だ。中継を担うNHKや民放キー局のアナウンサーたちは、ずいぶん前から取材を重ねて、選手の姿や競技の様子を言葉で伝えるのである。彼らの声がテレビから流れる裏で、僕はタブラの演奏を実況することを思いついたのだ。

しかし、タブラ、と聞いてもピンと来ない人も多いだろう。

タブラとは、北インドの古典音楽には欠かせない打楽器で、い

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東京オリンピックの裏でタブラの演奏を実況することになった

東京オリンピックの裏でタブラの演奏を実況することになった

(追記)このイベントはすでに終了しています。

次回の実況芸イベントは、タブラ奏者のU-zhann(ユザーン)さんとセッションする。タブラとは、北インドに伝わる打楽器で、インドでは日本のピアノのように習い事に含まれるポピュラーな楽器だが、日本では演奏する人は少ない。では、なぜこの珍しい楽器を僕は実況しようと思ったのか。ここで説明しておこう。

イベントの開催を決めたのは楽器よりも、まずU-zhaa

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僕が実況芸に力を注ぐ理由

僕が実況芸に力を注ぐ理由

僕がここ数年、力を注いでいることの一つに「実況芸」がある。「実況芸」とは、自分の本職である実況というスキルを使って、スポーツ中継以外で表現するパフォーマンスのことだ。現在は僕しかやっていないので、この分野の先駆者は僕ということになる。もちろん、知ってもらう作業をするのも僕しかいないのである。

そもそも「実況」を「芸」として見てもらおうと思ったのは、局アナ時代の古舘伊知郎さんが、オーケストラの演奏

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“実況実力世界一”のチャンピオンベルトを受け継ぎたい

“実況実力世界一”のチャンピオンベルトを受け継ぎたい

プロレス実況の仕事をするうえで研究用のノートをつけている。これは、先人たちの実況を聞いては書き写したもので、当時の中継が録画されたVHSテープを再生し、いつどこで、どんな試合が中継され、アナウンサーがどんな言葉を使ったかをノート3冊分に書き留めているのである。古舘さんから受けた影響を何度も書いているが、プロレス実況の歴史において古舘伊知郎の何が凄かったのかを改めて述べたい。

古舘さんのデビューは

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