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【3分要約・読書メモ】政治はケンカだ! 明石市長の12年

ご覧頂き、ありがとうございます。
今回は「政治はケンカだ! 明石市長の12年」についての記事となります。


著者

泉 房穂
1963年、兵庫県明石市二見町生まれ。県立明石西高校、東京大学教育学部卒業。NHK、テレビ朝日でディレクターを務めた後、石井紘基氏の秘書を経て、1997年に弁護士資格を取得。2003年に民主党から出馬し衆議院議員に。
2011年5月から2023年4月まで明石市長。「5つの無料化」に代表される子ども施策のほか、高齢者・障害者福祉などにも注力し、市の人口、出生数、税収をそれぞれ伸ばして「明石モデル」と注目された。

第1章 闘いの日々

明石市の品行過程で生まれ育ち、障害をもって生まれた弟がおり、社会の不条理さに生き道理を感じていた泉氏は、「冷たい社会を優しい社会に変えたい」と本気で思い、小学5年生の時には、明石市長になりたいと考えるようになった。

明石市でNPO活動をしたこともあり、市民を味方につけ、どこの団体にも支持をもらわず、知長に当選。「オール野党」の市役所、市議会との闘いが始まった。市役所社員が会話を常に録音し、メディアに流すなど、嫌がらせなども多数あった。

本書の中では、四面楚歌の状況でも無からず道があると信じ、議員や団体をみずに、明石市民のことを考えて乗り越えてきた事件が多く掲載されている。

第2章 議会論
泉市にとって、在職期間は、議会と闘い続けた12年だった。どんな改革派市長も、選挙に勝った瞬間に議会と手打ちをしてしまう。だから、公約として掲げたことも実現できない。せっかく市民の支持を得た当選しても、それでは意味がない「弱気だ型市民より議会を選ぶ」と泉氏は一刀両断します。

政治で一番大事なのは結果で、とにかく「やって見せる」。これがすべてですよね。結果こそが、有権者を説得する力になる。

本書より

自分の政治信条を曲げて敵と折り合うのではなく、世論を味方につける構想を打ち上げたりする強い覚悟ない人は、政治家に向いていない。泉氏は東大出身で頭もいいですが、市民のための支払く熱い思いがつわたってくる章です。

第3章 政党論

自民党、立憲民主党、維新の会、公明党、れいわ新選組など泉氏からみた各政党の評価や課題が書かれています。認めるところも多く、地方知事経験者だから感じる視点が面白いです。

第4章 役所論

役所の人たちはみな、「お上至上主義」「横並び主義」「前例主義」を教義とする宗教の信者と表現。

「お上至上主義」:「国の言う通りのことをしなきゃいけない」
「横並び主義」:「隣の市ではやっていません」
「前例主義」:「これまでこのやり方でやってきました。」
時代は変わっているのに、何十年もこの3つを全員が革新的に信じ込んでしまっているのが役所の組織。

本書の中では、対象となる世帯が10世帯に対して、100年に一度の水害に備えるために、600億円の計画を提出してきた話も紹介されます。通常の会社では、費用対効果としても考えられないようなことが役所の中では普通に起きていることを実感するエピソードです。

また、霞が関キャリア官僚の残念過ぎる正体にも触れています。官僚としては、優秀かもしれませんが、国民目線を持っていないエピソードが多数出てきます。国民負担を増やさずに、子供予算を実現させるのが本当に賢い官僚の考えること。国民負担を増やしてこども予算を確保するなんて、当たり前すぎて誰でもできることというセリフには、強く共感しました。

第5章 宗教・業界団体論

泉氏の選挙事務所は、実質5人で運営していた。通常、業界団体や宗教団体の力を借りて運営するのですが、地元の仲間の協力を得て運営したそうです。

本章では、「間接支援という名の既得権益温存」と業界団体を経由する「間接支援」を痛烈に批判しています。間接支援とは、病院や保育園など各業界に支援金を出し、そこから病院スタッフ、保育士など補助が必要な人にお金を配る方式。
しかし実際は、間に入っている団体や企業が、補助金を「中抜き」して、族議員への見返りとして政治献金や選挙支援をし、官僚への見返りとして天下りを受け入れている実態がある。明石市では、対象本人にしk注することを大事にし、対象の個人の口座に直接振り込みを徹底したそうです。内閣府の官僚と子育て給付で大ゲンカしたエピソードも一読の価値があります。

第6章 マスコミ論

本書は、聞き手として元朝日新聞記者の鮫島浩氏が聞き手となっているため、新聞に関してはかならの分量でダメ出しが書かれています。記者に関しては、「自分を上級国民だと思っている記者」と批判し、上層部に行くほど、「男性優位社会」「男性目線社会」を維持したいと考え、子育て記事に対して拒否反応をすると指摘しています。

第7章 リーダーシップ論

日本は、中英集権型国家。国家の中央省庁が自分たちのやりたいことをやり、手が届かない部分を都道府県へ押し付けていく。都道府県は、その中から自分たちがやりたいことだけやり、残りは市町村へ丸投げしていく。市町村には、国家や都道府県が手に負えない政策課題ばかり下りてくる。
アメリカは逆。日々の暮らしに直結することはできる限り地方で決め、地域でやる。そこで負えない政策課題を市→州政府→連邦政府というように、どんどん大きな行政組織へ上げていく。外交防衛や金融政策など、各地の現場ではどうしようもできないことが、連邦政府の役割として残っていく。

本章では、地方に権限を委譲し、国家の支配から市町村を開放することが現状の打開策として提案されています。明石市をモデルケースとして、これから様々な市町村で改革が起き、市町村発信で独自の改革が進んでほしいと希望を感じる章でした。

感想

明石市の泉市長のニュースは、目にしたことがありましたが、今までメディアから得ていた人物像と実際に本を読んで感じた人物像は、全く違いました。とにかく、「熱い人」です。10歳に明石市長になると決断し、東大卒、司法試験合格など知識をしっかり積み込んだうえで、何よりも市民のことを考えるという地に足がついたスタンスに驚きました。ニュースになるのは、いつも暴言などで、「沸点の低い市長」という印象でしたが、「冷たい社会を今よりも優しくする」という信条の基で、市議会と役場と闘った12年を知ると、どの政治家よりも、市民のことを第一に考えていることがつわたってきます。

また、官僚組織、役所、市議会、業界団体など、政治の暗い部分も、泉氏と鮫島氏の痛烈な批判とともに明らかになっていきます。自分が実態を把握できていなかったことに気づかされるばかりでした。

政治に関心がある人も、ない人も、「覚悟」を持っているリーダーの生きざまを肌で感じることができる一冊です。この人が市長をやっている市に住みたいと思えてきます。今の地方政治の課題など理解するにも役立つのでお勧めです。メディアから得る情報は、すべてではない。考える力をみにつける教養本としても一押しです。

最後まで読んでいただきて、ありがとうございました。

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