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「一万円選書」当選物語:#2 『あん』

 私が「一万円選書」に当選するまでとその後、選んでいただいた10冊の本について紹介していくシリーズ物note。

 前回からは私が実際に選んでいただいた10冊の本をそれぞれ紹介しています。今までのnoteはマガジンにまとめていますのでよろしければどうぞ。

 2冊目に紹介するのは、ドリアン助川著『あん』。

 町の小さなどら焼き屋さんから始まるストーリー。さえない店長・千太郎と、突然バイトにやってきたおばあさん・徳江による、「あん(餡)」の製造工程が丁寧に描かれていて、地元の老舗和菓子屋さんのあん玉を食べたくなりながら読んでいた前半。

 徳江の歩んできた壮絶な人生が少しずつ明かされ、徳江が美味しい「あん」を作るようになるまでの、決して甘くない道のりに呆然と言葉を失った後半。心構えができないまま読み進めた私は、思わずページを閉じそうになったけれど、物語の結末を知らないままでいることの方が怖くて、一枚一枚ページをめくりました。

 自分ではどうにもならないこと−時代の流れだったり、出自だったり−に翻弄されながらも、それでも生きていくというのは、いつの時代も、どこにいても、変わらないこと。その中でどう生きるか、どういう心持ちで生きるかを考えたくなったときにまた読み返したい一冊でした。

 世界11言語で翻訳されているとのことで、例えば英語だったらどういう風に表現されているのか気になり、ひとまず調べてみたところ、タイトルは『Sweet Bean Paste』。英語版はKindleで700円くらいなので、頑張って読んでみようかな。

 さらには樹木希林さんの最後の主演作として映画化もされています。私はまだ映画は見ていないのですが、母は絶賛でした。母はたまたま映画を観たようで、私がまさに原作を読んでいるとは知らず勧めてきたという偶然。映画の主題歌の秦基博『水彩の月』は、聴いているだけで心がしんとします。

 文庫本で250ページくらい。2,3時間程度あれば十分読めると思います。映画の予告編だけでもどうぞ。



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ありがとうございます。いつかの帰り道に花束かポストカードでも買って帰りたいと思います。