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短編 ちょびっとブラック編

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少しブラックめいたものを纏めました。
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記事一覧

【短編】電車にて その2

【短編】電車にて その2

(2,425文字)

 ある日、たまたま私が乗り合わせた電車の中での一幕。

 キキーッ。ガックン。
 電車が急に停まった。
「きゃっ」
 その拍子に、吊革に掴まっていなかった女性がよろめいた。運悪く隣にいた男の足をしたたか踏みつけたらしい。
「うぐっ」
 男は呻いた。

 解る。痛いなどという言葉では言い表せない。細いハイヒールのかかとで踏まれたことがある人しか、これは分からないに違いない。
 

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【短編】公園にて

【短編】公園にて

(4,268文字)

 ――指の間からこぼれ落ちる砂を見て、悲しいと歌ったのは石川啄木だったかしら。
 それはふっと頭に浮かんでは直ぐに消えた。
 三月に夫の転勤で埼玉県のH市から都心に近いこの街に越してきて、二週間になる。
 ここは夫が言う通り交通の便がとてもいい。自宅は駅からバスと徒歩で十分ほど。主立った公共施設はバスで更に一駅行った所に固まっているし、歩いて行けるほどの距離にスーパーや幼稚園

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【短編】雪の音

【短編】雪の音

(3,601文字)

「雪の音を聞いたことがありますか?」
 それは、カウンターに突っ伏していた女が、突然頭をもたげるなり、誰に言うともなく発した一言だった。小さな声だったが、はっきりと私の耳に届いた。
 バーはカウンター席だけの、四、五人も入れば一杯になりそうな小さな構えで、今宵の客はその女と私の二人だけだった。店内では低音量でクラシック音楽が流れている。
 年配のバーテンダーが、二杯目の水割り

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【短編】置き土産

(1,959文字)

はーい、ちょっと待って。そんなにピンポンピンポン鳴らさなくても。
はい。
あなた、どなた?
秋本さん。で、何の用?
詩織って子を探してる?
あんた、あの子の友達?
じゃあ、あれ、どうにかしてよ。
何のことだって?
猫だよ、猫。彼女、置いて行っちゃたんだよ。ショウゴって名前なんだよ。その猫は雌なのに、雄の名前付けちゃって。勿論、私はそれは変だろうって反対したさ。でも彼女、あの通

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【短編】夢を買う男

【短編】夢を買う男

(3,869文字)

「この頃じゃ見かけんが、昔は血を売って暮らしていた輩が結構いてのぅ。儂もそんな一人じゃった」
「血を売るって、献血のこと?」
「違う、違う」
 男は、大袈裟な手振りで否定した。
 男の服装は、黒い燕尾服に山高帽だった。声を掛けられた時、私はピンサロの呼び込みと勘違いして、どうして昼間にこんな場所にいるのかと不審に思ったものだ。
「言葉通りの意味じゃ。よく覚えておらんが、一合で

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【短編】顔

【短編】顔

(3,265文字)

 私に、その"力"があると知ったのは、五歳の夏だった。
 母に連れられて親戚の家に法事で行った時のことだ。出迎えてくれたお嫁さんの顔を見た途端、私は泣き出してしまった。困惑するお嫁さんに、母は大いに恐縮しながら、
「急にお腹が痛くなったらしくて」
 とその場を取り繕った。
 その帰り道、
「さっきはどうして泣いたの? 怒らないから、言ってごらん」
 と母が聞いてきた。
 ほら

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