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『漠然とした不安やイライラ』について思うこと


※あくまでも私の視点で感じたことです。受け入れて頂けるかどうはお任せ致します。

スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの仕事をしていて最近感じることは、「漠然とした不安やイライラ」を感じている児童生徒の方が増えているなぁと思うことです。

何か具体的にトラブルがあったわけではないのに、周りの視線が気になったり、何か自分が責められているように感じたり、過緊張の状態が続いているという相談を受けることがあります。

私自身も漠然とした不安やイライラを抱えてると感じる時があります。そういった時は、いまここの自分でいることに安心できず、ありのままの自分が細かく震えている感覚があります。
気が付くと、将来への不安や過去への後悔などに思いを巡らせている状態になっていたり、何かにイライラして、〇〇のせいで自分はイライラしているんだと思う時があります。


1・「漠然とした不安やイライラの原因」とは

①元々の特性
 例)神経発達特性、障害、HSP等々により環境に対するストレスを感じやすい状況が続いた場合

②成育歴
 例)病気の経験、トラウマになるような体験(災害、暴力、事故の目撃、各種虐待等)、小児期の逆境体験(被虐待や機能不全家族との生活による困難な体験)等々

③今の環境によるストレス
 例)家庭(人間関係のストレス、各種虐待、世代間伝播による不適切な療育等)、学校(人間関係のストレス、不登校、いじめ等)、会社組織(人間関係のストレス、各種ハラスメント)等々

④価値規範の影響
 例)自分が採用している価値観とのギャップ(成績、見た目等)、自分が採用してない価値観の上からの押し付け

⑤社会的な交流が少ない環境
 例)1人でゲームをする時間が多い、友人と遊ぶ機会が少ない、家庭での交流が少ない等

今のところ私の整理はこんな感じです。

そして、それらのストレスやトラウマが自分の中に蓄積されていくと、自律神経の防衛反応として、「漠然とした不安やイライラ」が常態化していくと考えています。

特に今現在ストレスに感じることがなくても、「漠然とした不安やイライラ」を常に感じるようになり、ありのままの自分で落ち着いて今を過ごすことが難しくなると思います。

持続的なストレスやトラウマという過去の体験により、今の心と体が常に細かく震えている状態とも言えるでしょうか。


2・「漠然とした不安やイライラ」が常態化すると何が起こる?

そうなってしまうと、常に何かにせかされていると感じたり、自分が攻撃されたり否定されていると感じたり、自分のことを攻め続けたり、不安やイライラを紛らわすために、炭水化物を爆食したり、ゲームに依存したりと、交感神経過活動に付随する心理や行動に囚われてしまうと思います。

それから、漠然としていること自体が不安になるので、不安やイライラを具体的なものにしようと、原因を探したり、作ってしまうということもあると思います。

あたかも、不安やイライラの原因が、既に常にそれであったかのように立ち現れて、その原因のせいで、自分は不安なのだ、イライラしているのだという因果関係を形成し、周りを巻き込んでいくということも起こると思います。

また、交感神経が過活動の状態の時は、前頭葉があまり働かず、理性的に自分を眺める視点も失われやすいと思います。

なので、自分自身でその状態を自覚するのは難しいと思います。


3・「漠然とした不安やイライラ」の軽減やいまここの「安心」を回復するには

常態化した「漠然とした不安やイライラ」はどうすれば軽減できるでしょうか?
ありのままの自分でいることが「安心」になるにはどうすればいいのでしょうか?

私の中では、
①自分でできること
②同じコミュニティ(家族、同じクラス等)のメンバーとできること
③第三者とできること
があると思います。

①自分でできること
・深呼吸…これが一番簡単にできる副交感神経を優位にする身体への働きかけだと思います。
・タッピング…動画 https://youtu.be/psW35tTe_Tg
・マインドフルネス、グラウンディング、ヨガ、散歩
・ジョギング、サイクリング、筋トレ、各種運動…深呼吸、交感神経を正常に動かす練習
・温泉に行く、サウナに行く、マッサージに行く
・何もしない時間を作って、リラックス
などなど

②同じコミュニティ(家族、同じクラス等)のメンバーとできること
・存在承認のコミュニケーション…自分は味方だというサイン
 例)挨拶、手を振る、変化に気が付く等
・傾聴
 例)ただただ聴く、興味関心を持って聴く、解釈をしないで聴くなど
・一緒に何かをして安心を感じる
 例)一緒にのんびりなにもせず、ゆったり過ごす。※別々ではなく同じ空間で。
 例)一緒に深呼吸をする、マインドフルネスをする、ヨガをする、散歩をする。
 例)一緒に歌ったり、踊ったり、一緒にスポーツやゲームを楽しんだりする。
 例)一緒に食事をする、何かを作る、出かける。
などなど

③第三者とできること
・ソマティックな療法(あまり詳しくありません。)
・第三者に話を聴いてもらう(カウンセリング、各種心理療法等)
・第三者を交えて対話をする(オープンダイアローグ、家族療法等)
※手前味噌ですが、りすにんぐファームのフィンランドの対話のグループワークも自分や周りへの安心を回復するのにとってもお薦めです。

自分で自覚するのは難しいので、周りの人が気づいてあげて、お互いに安心を感じるコミュニケーションができるといいなと思います。そして、もし自分の不安やイライラに気づいたときは、是非深呼吸を。

補足)
・リアルタイムで、ストレスの原因になること(虐待、いじめ等)が起こっていることももちろんあるので、その際は、その原因自体を改善する必要があります。
 その際に原因となるようなことをしている加害者は、かつての被害者で、「漠然とした不安やイライラ」が常態化している人である可能性が高いと思います。

《主な参考文献》
「オープンダイアローグ」ヤーコ・セイックラ、トム・アーンキル 日本評論社 2016年
「ポリヴェーガル理論入門」ステファン・W. ポージェス(著)/花丘 ちぐさ(訳)春秋社 2018年
「からだのためのポリヴェーガル理論」スタンレー・ローゼンバーグ(著)花丘ちぐさ(訳)春秋社  2021年
「発達障害からニューロダイバーシティへ: ポリヴェーガル理論で解き明かす子どもの心と行動」モナ・デラフーク (著), 花丘 ちぐさ (翻訳) 2022年
「ポリヴェーガル理論で実践する子ども支援 今日から保護者・教師・養護教諭・SCがとりくめること」伊藤二三男 著 遠見書房 2022年
「トラウマのことがわかる本」 白川美也子 講談社 2019年
「こどものトラウマがよくわかる本」 白川美也子 講談社 2020年

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