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【BL二次小説(R18)】 卒業旅行⑧


食事を続ける4人組。


荒「ン?……食べきれねェと思ったが、意外といけるな」

マッシュポテトと戦いながら荒北が言った。


新「うん。バターとソースのバランスが良くて全然くどくない。旨いよ。なんで日本でポピュラーにならないんだろう」

福「これなら毎日食べたいぐらいだ。カロリーは高そうだがな」


東「ハンバーガーをナイフとフォークで食べるのもたまには良いものだろう」

新「このパティがまた粗挽きでジューシーで肉々しくてたまんないぜ。こんな旨いハンバーガー初めてだ」

惚れ惚れしながらハンバーガーに喰らいつく新開。


福「もしかしてこっちのワクドナルドもこんな風に分厚くて旨いのか?」

東「いや、ワクドナルドは日本と同じだ。速さと大量生産を極めたファストフードの最終形態だからな。レストランのハンバーガーとは全く別物なのだよ」


荒「今朝のステーキも柔らかくて旨かったしさァ。肉自体がホント旨い。誰だよ米国産の肉は硬いってデマ流したのァ」

東「部位によるのだよ。日本が仕入れる肉はアメリカ人の食べない硬い部位なのだ。だから安い。アメリカ人はちゃんと柔らかくて旨い部位を食べる」

荒「ったく、日本のバイヤーは何やってンだ」


東堂が一旦手を止めて言った。

東「ところで、ハンバーガーのもっとネイティブな発音を教えてやろう」

荒「おゥ、教えろ。注文する機会が多そうだしナ」

荒北が身を乗り出す。


東「へーンブーグー」


福「ムム!」

荒「すげェ!ネイティブっぽい!」

新「ハンバーガーと全く違う!」

驚く3人。


東「アクセントは“へーン”だ。あとは口をすぼめてボソボソと“ブーグー”と言えば充分それっぽい。よし、言ってみろ。ハイ」

3人「へーンブーグー」

東「うむ。上手いぞ。もう一度、ハイ」

3人「へーンブーグー」


店員「perfect!!」

3人「!」


さっきの女性店員が満面の笑みで拍手をした。

3人は聞かれていたことに驚き真っ赤になった。


福「サ、サンキュー……」

店員「keep o~n」

店員はニコニコして立ち去った。


荒「恥ずかしィィ!」

新「ハンバーガーの練習してるとこなんて!」

東「何が恥ずかしいものか!からかわれたのではないぞ。パーフェクトだと誉めてくれたではないか!」

東堂が激励する。


東「アメリカ人は英語を覚えようとしている者を大歓迎する。なぜなら英語を使おうとしない移民が多いからだ」

福「ム?しかし英語を覚えないと生活出来ないのでは?」

東「英語がわからない民族だけでコミュニティを形成してしまう移民が多いのだ。アメリカ人はそういう民族を警戒する」

新「確かにコミュニケーション取れないと不気味だよな。物騒だし」


東「日本人は英語を話すのをすぐ恥ずかしがるが、中学生英語でも充分通じる。例えば……日本人は誰でも1から10までの数字を英語で言えるだろう?」

荒「ワンからテンのことか?」

東「そうだ。しかし、それすら知らない移民がアメリカには多数住んでいるのだ」

新「なんだって?」

東「それがどれだけ不気味なことかわかるだろう」

福「このご時世だ。警戒するのも当然だな」

東「そうだ。だから、日本人は恥ずかしがる必要などない。下手でも良いから英語を堂々と話せ。すると警戒を解き、心を開いてくれる」

荒「へエ~!」


東「これで解っただろう。さっきのオネーサンがからかったわけではないという事が」


3人は納得した。



東「ついでだ。サンキューのネイティブ発音を教えよう」

荒「教えろ」


東「テンキュー」


福「ムム!」

荒「すげェ!ネイティブっぽい!」

新「サをテに替えただけなのに!」

驚く3人。


東「よし。言ってみろ。ハイ」

3人「テンキュー」

東「いいぞ。もう一度……」


コトッ。


その時、さっきの女性店員がテーブルにチョコレートたっぷりのホールケーキを置いた。


荒「エ?」

新「ケーキなんて」

福「注文した覚えは」


店員「It's on chef!」

店員はウインクした。


東「……店の奢りだそうだ」

3人「ええっ?」

たまげる3人。


東「ほら、こういう時は何と言うのだ?」

新「あ……」


全員「テンキュー!」


店員「You bet!」

店員はニッコリ笑って去って行った。



4人組は食事もケーキも綺麗にたいらげ、気分良くチップを弾み、店を出た。



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