【BL二次小説(R18)】 卒業旅行⑮
一通りパビリオンを廻った一行。
新開が胃の辺りを手で押さえて言った。
新「腹減ったな」
福「確か昼食は面白い物を食わせてくれると」
荒「早く連れてけ」
東「フフフ。こっちだ」
東堂が案内したのは……。
荒「日本館じゃねーか!」
福「再び戻ってくるとは思わなかった」
新「……いや、でも日本食か。いいかも」
東「アメリカ料理ばかりでそろそろ胃が疲れてきただろう」
ドヤ顔の東堂。
新「それもそうだな。醤油味が恋しい」
福「胃に優しそうだ」
荒「どんな和食メニューがあンのか興味深いしな」
一行は日本館の中のレストランに入った。
席に着き、メニューを広げる。
荒「……ショーグンコンボ?サムライバリュー?さっぱりイミフじゃねェか」
福「もう大概の事には驚かないつもりだったが……」
新「色々観て廻ったけど、結局日本館が一番難解だな」
意味不明なメニュー名を読み上げ、荒北は親子丼、福富はうどん、新開は天丼、東堂はおにぎりセットを注文した。
── そして料理が運ばれて来て絶句する。
荒「……半熟じゃねェ。ただの玉子焼きだ。しかも味がしねェ」
福「うどんの汁も味が……ダシが利いていないんだな。麺も柔らか過ぎて箸で掴めん」
新「これ、多分かき揚げなんだろうけど、べちゃべちゃにふやけてる。しかもなんでテリヤキソースがかかってんのかな……」
悲しみに暮れる面々。
荒「オメーだけまともなんじゃねェの?」
荒北がイライラしながら東堂のおにぎりセットを指差す。
東堂はおにぎりを半分に割って見せた。
東「具はカリカリ小梅が1個。飯には塩味もついていない。漬物は甘い。そして味噌汁はインスタントだ」
荒「……」
新開はシクシクと泣きながらべちゃべちゃでテリヤキ味の天丼を食べる。
新「何食べてんのかわからないよ……。脳がバグる」
福「苦行だな」
東堂は苦笑いしながら説明する。
東「最初は驚くがな。こっちの和食なんてこんなもんだ。リトルトーキョーで食ってもそう変わらん。そのうち慣れていくから怖い。永年住んでいる日本人が普段どういう物を食っているのか知ってもらいたかったのだ」
新「これじゃすぐホームシックになっちまうよ」
福「いつでもどこでも日本食にありつけるとは限らないからな。こんなのでも妥協してしまうのだろう」
荒「……」
東堂は3人にビシッ!と指を差して言った。
東「我々はいずれ海外遠征もする立場になるだろう。海外での日本食の実態を今から知っておくことは決して無駄ではないのだ!」
新「まあ、そりゃ、ね」
福「今のうちに自炊力をつけといた方がいいという事は良く解った」
納得する新開と福富。
ダン!!
荒「納得出来るかァ!!」
荒北がテーブルを拳で叩いた。
荒「こんなモン我慢して食うぐらいならTKGの方がよっぽどご馳走だぜ!すんませんオネーサン!生卵と醤油!」
側を歩いていた女性店員に注文する。
東「よせ!荒北!」
荒「うるせェ!TKGだって立派な日本食だァ!」
東堂は荒北の腕を掴み制止しながら言った。
東「海外の卵は生食用には出来ておらん!TKGなど食ったら確実に食中毒を起こすぞ!」
荒「な!……ンだって?」
驚愕する荒北。
新「それホントかい?尽八!」
新開も驚いて尋ねる。
福「そうか……!それでオムレツも親子丼も堅焼きだったのか!」
謎が解けて声を上げる福富。
東堂は店員に荒北の注文をキャンセルしてから、3人に向き直って言った。
東「生で食べたい時は専用の卵を手に入れねばならんのだ」
荒「マジかよ……」
東「アメリカ人は半熟が苦手という者も多い。卵で一度腹を壊すと懲りるのだろう」
新「想像しただけで壮絶だ」
東「日本の卵がいかに質が良いか解っただろう」
福「恵まれているんだなオレ達は」
しんみりとしてしまう3人。
東堂は笑いながら言った。
東「ワハハ!日本館に来るとどうもどんよりしていかんな!だが、我々の国日本がいかに素晴らしく愛しい存在か、再認識出来ただろう!」
福「確かに」
荒「やっぱ日本が一番だぜ」
新「オレ帰りたくなってきた」
涙ぐむ新開。
東「まあ安心しろ。今夜はちゃんとまともなコース料理を予約してある。最後の夜だからな。さあ、一度帰って昼寝をしよう」
食事を終え、一行はホテルへ戻った。
2023-08-28
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