メディカルサイエンス社ER

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メディカルサイエンス社は、医学専門の出版社です。医療・医学を中心とした書籍・雑誌の出版や学術・プロモーション用DVD等の制作を行っています。 メディカルサイエンス社noteでは、皆さんに知っていただきたい医療の情報、医療現場の情報などをお届けします。

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ER-救急の現場から見える社会の縮図-

8人の救急医による「ER-救急の現場から見える社会の縮図-」をテーマにした連載。 ER(emergency room)では、24時間・365日、重症度、傷病の種類、年齢によらず、さまざまな救急患者に対応します。 この連載では、大学病院、県立病院、地域の中核病院など、異なる機能・規模の病院のERに所属する救急医たちが、現場の出来事を元にしたストーリーを綴ります。 《執筆者》 志賀隆先生   国際医療福祉大学 雨田立憲先生  宮崎県立宮崎病院 石上雄一郎先生 飯塚病院 竹内慎哉

    • 診察室で出会う○○の貧困

      執筆:雨田立憲先生 いつものように救急車受け入れ要請のホットラインが鳴った。 救急隊:△△救急隊です。20代女性(Aさん)。腹痛での救急要請です。数日前からの腹部違和感があり、昨日より下腹部痛が強くなったとのことです。ショック兆候はなく、37.8℃の微熱があります。生理が数日前に終わり妊娠の可能性はないとのことです。なお、学生さんでご家族は県外とのことで同乗は先輩で彼氏とのことです。家族への連絡はまだです。 ◆受け入れるまでに指導医:いろいろ考えられるし、若い女性ですの

      • いのちを守るマモリビト ~ 児童虐待から子どもをマモル ~

        執筆:竹内慎哉先生 虐待を受けて死亡することもが1年間で何人いるかご存知ですか? 令和3年度は74名の子どもが虐待でなくなっています。[1] ~Main Story~都佐先生は研修医、今日は救急の上級医 波多先生と一緒に当直です。年始の休みも終わり、救急外来はずいぶん落ち着いてきました。でも、さすがに冬なので、患者さんはまだまだ受診してきて、救急外来は相変わらず繁盛しています。そんな当直中、22時ころに4ヵ月の乳児、与謝 鯉くんが母親とともにwalk inで受診してきまし

        • 7番目の執筆者は舩越 拓先生です。

          舩越 拓先生は、医学部卒業後、初期研修中に救急医療の面白さに気づき、国保松戸市立病院(現・松戸市立総合医療センター)救命救急センターで後期研修を行ったのち、総合診療・放射線科の研修を経て2017年から東京ベイ浦安市川医療センターの救急外来部門部長 兼 IVR科部長に就任。2023年より救命救急センター長に就任しています。 救急科専門医として活躍される傍ら、「医師人生は初期研修で決まる!って、知ってた?(メディカルサイエンス社)」、「研修指南書『今の若者は・・・・・』って、嘆

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        ER-救急の現場から見える社会の縮図-

          ER -救急の現場から見える社会の縮図-

                                   執筆:舩越 拓先生 急性アルコール中毒で過換気発作を起こした40代の女性が救急搬送されてきました。 患者さん:点滴してくれないんですか? 前運ばれた病院ではやってくれました。 専攻医:なるほど、前の施設ではやってもらったんですね。 患者さん:そうです、だからやってください。 専攻医:ただ、点滴は症状改善にはあまり役に立たないとも言われています。他にも症状を和らげることができる方法はいくらでもありますから、つらい症状を我慢せず

          ER -救急の現場から見える社会の縮図-

          救急室頻回受診者にもそれなりの理由はある 『何もすっことなか〜』(何もすることがない)

                          執筆:雨田立憲先生 自転車乗車中に転倒して前額部に出血を伴う怪我があるとのことで70代男性(Kさん)の救急受け入れ要請がかかりました。ホットライン記録を確認した研修医のA君が、当院かかりつけとのことでカルテを素早く確認して 研修医「Kさんはアルコール依存症の常連さんですね! また飲酒ですかね? いや、それともけいれん歴もあるのでそれですかね?」 指導医は過去をよく知っており研修医に「あと10分くらいで救急車が着くから、カルテをよく確認してみて

          救急室頻回受診者にもそれなりの理由はある 『何もすっことなか〜』(何もすることがない)

          6番目の執筆者は千葉拓世先生です。

          千葉拓世先生から自己紹介文をいただきました。 ================================== 私は2004年卒業で、皆さんが当たり前に経験する初期研修スーパーローテーションの第1期生です。それまでの先輩たちのように普通に卒業して普通に医局に入り普通に大学で臨床研修をするのではと思っていたのが、突然のマッチングの通知で慌てて病院見学に行き、生まれ育った九州から離れて、名前が共通している以外は縁もゆかりもない千葉県で初期研修を行いました。ローテーションの中で

          6番目の執筆者は千葉拓世先生です。

          市販薬を飲んで震えが止まらなくなった女性

          執筆:千葉拓世先生 ある平日の昼に、病院正面の事務から救急外来に電話が入った。「初診の患者さんなのですが、震えて立てないということで受診を希望されています。診察をお願いできますか?」幸いにしてそれほど混み合っていない時間帯でもあり、患者はすぐに救急室に車椅子で運ばれてきて、診察を受けることになった。 患者(Aさん)は21歳女性で、特に大きな病気をしたことがない健康な方だ。Aさんは高校を卒業して、実家を出て東京で一人暮しをしてアパレル店で勤めている。ファッションにも敏感なのだ

          市販薬を飲んで震えが止まらなくなった女性

          5番目の執筆者は東 秀律先生です。

          東 秀律先生から自己紹介文をいただきました。 ================================= 医学部入学から初期研修医のはじめころまでは進路は漠然と考えていただけでした。初期研修医での各科ローテーションは楽しかったのですが、一番やり甲斐を感じたのは救急外来診療でした。特に急性の怪我や病気で困って受診した患者さんに、何かコミットメントできる、関われることが嬉しかったのです。当時能力は全然伴っていませんでしたが、頑張った分だけ感謝される、こんなにやり甲斐がある

          5番目の執筆者は東 秀律先生です。

          「おとうさん、おうちに帰りたい?」   妻の問いかけにゆっくりではあるが、夫は躊躇わずに頷いた。

          執筆:東 秀律先生 患者は75歳男性、Cさんとする。 過去のカルテを開くと、背景に慢性心不全、3年前に発見された膵癌は消化器外科で治療している経緯が記載されていた。手術や化学療法を複数行われたが、術後再発、多臓器転移が半年前に判明し、在宅医療を扱うクリニックに紹介され自宅で過ごしているようだ。 妻と娘家族が同居しており、当日の午後から呼吸苦の症状が強くなってきたという。 午後8時、意識がもうろうとしてきたため往診医に連絡し、救急搬送を依頼することとなった。救急隊のバイタルサ

          「おとうさん、おうちに帰りたい?」   妻の問いかけにゆっくりではあるが、夫は躊躇わずに頷いた。

          4番目の執筆者は竹内慎哉先生です。

          竹内慎哉先生から自己紹介文をいただきました。 ================================= 福井県や関東で10年間、雑食系救急医をしていました。どこの病院でも共通していたことは、「救急は他科・他部署との関わりが非常に多い」ことです。そのため「信頼関係を構築する」ことが大切だと思っています。「専門外のことで困ったら救急に相談してみる」ということが気軽にできるようにしていきたいです。 卒後11年目に地元の高知に戻ってきました。高知県の高齢化率は全国平均より1

          4番目の執筆者は竹内慎哉先生です。

          親父、自宅での生活はもう限界なんです!

          -自宅生活困難者のセーフティーネットとしての救急医- 執筆:竹内慎哉先生 「入院させてください!」 頭部打撲で救急搬送された84歳男性の息子は診察室でこう続けた。 「たくさん血が出ていたって聞きましたけど、大丈夫なんですか!? 様子見で入院とか……、何度も転んでいるし、家での生活はもう限界なんじゃないかと……」 ~ Main Story ~土佐さん(仮名)は糖尿病・高血圧で近くのクリニックに通院している84歳男性だ。妻は5年前に他界し、15年前に離婚した息子と孫2人と同

          親父、自宅での生活はもう限界なんです!

          3番目の執筆者は雨田立憲先生です。

          雨田立憲(アメダ タツノリ)先生から自己紹介文をいただきました。 ================================= 医学部に入学した当初は東南アジアで母子を中心とした保健医療活動をしたいと思っていました。入学後、親戚で不幸な事案がありいわゆる「救急のたらい回し・不応需問題」を経験し、これをきっかけに社会経済的問題・医療環境などに目を向けるようになりました。東南アジアも大切だが、日本でもまだ諸外国に及ばない部分や国内でのアンバランスな部分を考えるようになり、

          3番目の執筆者は雨田立憲先生です。

          救急外来のシャワー室の窓は、社会の弱いところを見つめる窓

                                   執筆:雨田立憲先生 12月中旬の寒い日、救急隊から、体動困難で失禁などもある患者(仮にTさんとする)の受け入れ要請があった。異臭が強いためシャワーが必要とのことであった。詳細は不明だが、アパートの大家がTさん退去後の部屋に状況確認に行ったところ、退去したはずのTさんが身動きもできない状態でいたので、警察介入後救急要請となったという。 ◆受け入れまでに今回シャワーに入るメンバーは研修医A君、実習中の医学生B君、看護師C

          救急外来のシャワー室の窓は、社会の弱いところを見つめる窓

          次に登場するのは、石上雄一郎先生です。

          石上先生から自己紹介文をいただきました。 ============================== 目の前で困っている人に対してなんでもできるようになりたいという思いで救急医になりました。救急医というと血湧き肉躍るコードブルーの救命型を想像するかもしれません。自分は根っからの草食系で断らない型ERをやっておりました。いろいろな経験の中で救急だけでは目の前の人を助けられないのではないかと思うようになり医師8年目から緩和ケア・社会福祉をしっかり学ぶことにしました。 1.高

          次に登場するのは、石上雄一郎先生です。

          「家族が到着するまでの間、心臓マッサージくらいはしておいてほしい」電話口で家族は医師に伝え、電話を切った。

                                    執筆:石上雄一郎 患者は80歳男性だった。仮にAさんと呼ぶことにする。 入所している施設で、夜間、職員が見回りをしている時に、Aさんが息をしてないことに気づいた。 施設職員は夜間の嘱託医に電話をしたが、夜中は対応できないから救急車を呼ぶようにと言われた。職員は当直の看護師を呼び出し、救急に連絡。当院の救急外来に搬送となった。 ◆蘇生の状況 心電図の初期波形は心静止、目撃者なし、バイスタンダーもいなかった。救急隊が心肺

          「家族が到着するまでの間、心臓マッサージくらいはしておいてほしい」電話口で家族は医師に伝え、電話を切った。