マガジンのカバー画像

おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

28
毎週金曜日の19時~20時更新の「おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます」のバックナンバーです
運営しているクリエイター

記事一覧

#26 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

#26 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

ミクべ神宅に戻り、お台所をお借りして簡単な物を作ることにした私。調味料なんかも、私がよく知ってる日本の物とほぼ同じで助かったわ。
そして、出来上がったいくつかの魚料理を、白ご飯と一緒に頂く。
まさか異世界で、こんな純和食にありつけるとは思いもしなかった。
孫達がやっていたゲームや見てたアニメでは、パンやスープだとかの洋食だったから、異世界はどこもそんな食生活だと思っていたし。
そんな事を

もっとみる
#25 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

#25 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

「おかえり」
にこやかに迎えてくれたミクべ神に
「ただいま戻りました」
と返す。
まるで家に帰ったみたい…今の私にとって「家」はどこの事になるかは分からないけれども。
「疲れたでしょ?まずはうちに来て、のんびりしていきなよ。で、何があったのか教えて欲しいな」
肩を落とし首を傾げ言ってくる地上界のミクべ神は、きっと地下界で何が起こったかは、おおよそ分かっているんじゃないかと思う。そもそも元は

もっとみる
#24 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

#24 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

人気もまばらな通りを進み、微かな記憶と猫ちゃん達の勘を頼りに世界を支える柱のあるビルを探す。
あの時はユキノさんに案内してもらってたし、自分の使命で頭がいっぱいだったから周りの事なんて気にしてなんかいなかったけれど、こうしてゆっくりと眺めてみると、私が生前暮らしていた日本の街並みにとてもよく似ている。もしかしたら、閻魔様が初任務という事で気を利かせて、よく知ってる雰囲気の世界に送ってくれたのか

もっとみる
#23 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

#23 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

「アイドルになる」という発言をするミクべ神の発言に驚きつつも敢えて止めず(というか流しまして)、まずはこの世界に平和が訪れた事に一同喜んだ。
「いやぁ、あのまま閉じ込められてたら本当にまずかったよな」
頭をポリポリと掻きつつも、反省してるのかどうか分からない軽い口調のミクべ神に、クロサキさんは大きく溜息をつく。でも、特に反論をする様子も無い。もしかしたら、また引き籠もられたら困るって思ってるのか

もっとみる
#22 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

#22 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

「…美しすぎる?」
クロサキさんの言葉を思わず繰り返す。そしてチラリと背後に立つミクべ神に目をやる。
私としては、美しいというよりも可愛い…うん、黙ってたらどこか良い所のお嬢さんという可憐さがあると思う。口を開いたら、とても男性的だったけども。
地上界のミクべ神は、もう少し砕けた柔らかい口調だったと思うのだけど、もしかして首ごとに性格が違うのかしら?…って、今はそんな話じゃなくて。
「えっと

もっとみる
#21 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

#21 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

ピシリ、とヒビの入った宝石から幾筋もの光が溢れだし、私はギュッと目を瞑った。
周りの状況は分からないけど、瞼越しに光に包まれている事は分かる。そして、天井がガラガラと音を立て崩れようとしている事も…
「カミヤ!」
入口方向からクロサキさんの叫び声が聞こえ、私は咄嗟にそちらへと目をやった。
そこには秘書さん(恐らくカミヤさんと言うのだろう)が立っていた場所に1匹の狼が立っており、その体から黄

もっとみる
#20 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

#20 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

「お嬢さん、いい加減にしないと、お父さんお母さんに叱られるだけじゃ済まなくなるぞ?」
投げかけられた声に振り返ると、50 代半ばの男性…恐らくクロサキさんが、入口を塞ぐようにして立ち、こちらを睨みつけていた。その背後には、クロ君の首根っこを摘んでいる犬耳の女性(たぶん秘書さん)が控えている。
もしかしたら、この世界に来てから一番の危機なのかもしれない。私にとっても、この世界にとっても。
チラ

もっとみる
#19 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

#19 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

突然扉が開き、中に吸い込まれた私は文字通りゴロンゴロンと床を転がり、強かに打った腰をさすりつつ、よっこらしょと立ち上がった。
辺りを見回すと、そこは20畳程の広い部屋で、家具類は一切無く、扉に向かい合った壁に白くて大きな背もたれ付きの綺麗な椅子と、その前に長方形の大きな、これまた白い箱があるだけだった。
その箱はまるで…棺のような?
───ピシッ───
物音1つしていなかった部屋に乾いた音

もっとみる
#18 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

#18 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

「お嬢さん、ここは部外者立ち入り禁止ですよ」
声だけ覚えのあったその女性は、怒ってる風でもなく、かと言って子供を宥めすかそうとするような甘さもない、あくまで事務的な様子で私の前に立っていた。
その頭には、シロちゃん達と同じ大きな動物の耳とフサフサとした尻尾が付いている。
この世界に来た時にシロちゃんやクロ君を見て驚かれる事が無かったから、ここにもファンタジーでよく見る獣人というべき人達が居る

もっとみる
おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます 猫の日番外編

おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます 猫の日番外編

「ねぇねぇ、クロ。冷蔵庫のいちごミルク飲んでいい?」
シロが冷蔵庫を開けながら強請ってきた。
どうせ「ダメ」と言っても見てない内に飲むんだろうに…
俺は溜息をつきつつ「どうぞ」と答えた。
シロは「やった!」と喜びの声を上げつつ、いちごミルクをパックのまま口を付けて飲み始める。
「直接口を付けて飲むなって前にも言っただろうが」
「えー?いいじゃん。どうせ私しか飲まないんだし」
「それはそうな

もっとみる
#17 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

#17 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

「いったん二手に分かれましょう」
あの謎の足音が完全に聞こえなくなった後、クロ君は用心深く人の姿に戻り、そう耳打ちしてきた。
「二手に…どうして?」
「先程の足音の主を混乱させるためです」
さっきの人?…なら、どこかにもう行ってしまったと思うんだけど…
不思議に思いクロ君を見返すと、クロ君は棚の端から足音が消えた方向に目を向け
「あれは、たぶん見失ったとかではなく追っている事に気付かれたから

もっとみる
#16 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

#16 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

電灯に照らされた廊下を進みながら、相も変わらず私達は建物奥へと進んでいく。
要人達がよく通る場所なのか、装飾が少し豪華で監視カメラも見当たらない、けれど…
「それにしても、人の気配が全然しないわね」
外は警備員達がたくさん居たけれど、中に入ればロビーの床掃除をしていた清掃員くらいしか見ていない。
シロちゃんが陽動してくれているとはいえ、さすがに人が居なさすぎなのではないかしら?ここって、こ

もっとみる
#15 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

#15 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

シロちゃんのおかげで建物内に潜入できた私達は、人の気配を伺いつつ、ゆっくりと建物奥へと進んで行った。
監視カメラに写りこまないよう、更に足音にも気を使いつつ進む私達は、さながらスパイ映画の主人公のようで、こんな状況だというのに思わず顔が綻んでしまう。
「?」
うっかり声が漏れてしまっていたのか、クロ君が私の方を見上げた。
「あ、ごめんなさいね。なんか今の私達って映画の主人公みたいだわって思っ

もっとみる
#14 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

#14 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

サキシマさんの勢いに押され疲労していた私達だったけど、幸か不幸か私達の体はエンマ様から頂いた擬似的な体だったから、お腹が空いたり眠くなったりするような事は、ないらしい。
ただ、精神的な疲れ…いわゆるストレスのような物はしっかりと感じるようで、とにかく癒しを求めた私は、猫ちゃんの姿になったシロちゃんの頭や顎や背中をナデナデモフモフさせてもらった。これはシロちゃん自身も好きだと言うので、きっとお互

もっとみる