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西之宮シリーズ

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これらのお話、雑文、乱文は緩やかに繋がっていたり、いなかったりします。 また、消えたり現れたりします。 話を積み上げる、賽の河原の子供の幽霊みたいな。 そんな感じです。 水先案… もっと読む
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バックログ(西宮玖からの挑戦状)

バックログ(西宮玖からの挑戦状)

西宮 玖(この辺に立ち絵)

西宮 玖 「やあやあ諸君今晩は。まずは当ゲームを手に取って頂いて、そして当小説を読んで頂いて誠にありがとうございます!親愛なる隣人よ!イカレタアソビカタを紹介するぜ!要はルール説明ね。」

西宮 玖 「まず注意事項!当作品はメタ、オカルト、SF、ホラー、その他非倫理的な表現を多分に含みます!バーリトゥード!気分の悪くなった方は無理せず直射日光の当たらない涼しい場所に避

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アウトライン

アウトライン

 小さな部屋の中で、男と女が向い合って座っている。何の変哲もない掛け時計の秒針の規則的な音と男の机をトントンと指で叩く不規則な音が部屋の中によく響く。加えて時折、男の足を組み替えた時の衣服が擦れる音や、男のこれみよがしなため息の音がする。女の方は瞬き以外ほとんど目立った動きは見られなかったが、男の何度目かのため息の後、唐突に口を開いた。

「――ですから、言葉では説明が出来ません。私に出来ることは

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ある日記「守備力」

ある日記「守備力」

RPG(ロールプレイングゲーム)をそれ程多くやった訳ではないが、大抵のRPGには防御力だとか耐久性だとか、それに類するステータスが存在する、と思う。このステータスはどちらかというと軽視されがちなイメージがある。幾ら防御力を上げたところで、攻撃力がなければ話は始まらないし、所謂攻撃は最大の防御という訳だ。HPや回避を優先して強化すれば、実質やられにくくなって防御力強化と同じ、なんてこともある。

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短編小説「存在しない犯行現場」

短編小説「存在しない犯行現場」

何度か死んでみて
わかったことなんだけれども
どうやら死にも種類がある。

肉体の死
精神の死
魂の死
世界の死
病死。他殺。事故死。自然死。安楽死。無理心中。孤独死。
自殺。

自殺はつまり、精神が肉体を凌駕した。そうは考えられないだろうか?反対に、病死は肉体が精神に打ち勝った。我慢比べだ。時間切れ?そうそう、実際には引き分けだ。そして、独り勝ちであり、1人負け。

君は聡明だね。
そして

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天邪鬼

天邪鬼

天邪鬼が死んだ。もう何処にも天邪鬼はいない。現代は少し眼に入るものが多くなった。ここに一つの主張や主義や意見や感想、誰がが思った事があるとする。天邪鬼は嬉々として、或いは無意識にその思った事に反対し、真逆の思った事をあたかも最初から思っていたかのように組み立てていき、組み上がったところで口を開く。すると他の誰かが天邪鬼よりも早く、その誰かとは真逆の事を言ってしまう。その人は何も天邪鬼なのではなく、

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習作「猫奇」

習作「猫奇」

くしゅくしゅ
小さくなつておりました

なるほど。
月は2つ。
太陽が月と同じだなんてのは
どうやら全く笑いものではなかったらしい

あなたの掌というのは
存外に大きいものでせうね
それに居心地も良い。
あたたかくて、
ついうとうとしてしまいそうだ
おやおや
日差しもないのに
日光浴だなんてねえ
善きかな?それとも
あしきこと、なのでせうか?
まあ!
月に代わって、おしおき、夜!

喋る本の怪

喋る本の怪

「シュレディンガーの猫。あれを効果的に用いている例を僕は今だ嘗て見たことがない」

「藪から暴力」

「ここは図書館だ。それに、館内は暴力禁止だ。それくらい心得ているさ」

「いや大分無くしてるよ人の心。何堂々外では殴ります宣言してんだ」

試験勉強だろうか。二人の学生が机を挟んで座っている。図書館で騒ぐ事は、言葉の暴力に含まれるのだろうか?

「んで何でシュワルツェネッガーのお猫様の話

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ある依頼記録「間違い探し」

ある依頼記録「間違い探し」

──顧客情報により社外秘──

???「もしかしたら私があの場でたまたま彼らを眺めていたから、何らかの魔術的な事故か、もしくは因果を混線させてしまった可能性があります。単なる事故というよりも、意図が絡んでしまった結果のような感じもありますが、少なくとも罪無き市民を巻き込んだとあらば、沽券に関わります」

???「いやマジでたまげましたよね。万が一くらいはそういうこともあるんすけどね?目の前のアイ

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エンドロール(登場人物紹介)

エンドロール(登場人物紹介)

空閑紗陽  女子高生
東雲晴香  女子高生

西宮 玖  私立探偵
追川庄吾  警察官

夢野歩夢  助手
涌井水樹  男子高校生
四ツ谷洋介 男子高校生

雷 草田  精神科医
岡本和子  司書 

ライブ・ペイン・ティング(上)

ライブ・ペイン・ティング(上)


一日目正午

静かな事務所の一室で、2人の人間が立ち話をしている。

「こういうのはまず依頼人が事件を持ち込んでくるものだ。運命的にね。寂れた探偵事務所に舞い込む事件の呼び声。出席確認のようなものだね」

「そうですか」

「良いお返事だね。我々は長い首を更に長くして、堂々と座して待てば良いのだ」

「そうですか」

如何にも探偵ですと言いたげな格好をした妙齢の女性は、そう宣言すると散

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ある独白「犯人は好奇心」

ある独白「犯人は好奇心」

何もない空間で、1人の少女が語りかける。

吾輩は猫である。名前は夢野歩夢。
このお話の語り部であり、元天邪鬼であり、シュレディンガーの猫であり、チェシャ猫であり、猫又であり、黒猫であり、半死半生の招き猫。磁場にゃん。愛くるしいお茶汲み。

この度は幕間劇にて、茶々を踊りに参上致しました。

ああ、そういえばあの探偵は私の事をよくボスと呼びますが、あれは元天邪鬼である私に対するあてつけのよう

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短編小説「凶器は言葉」

短編小説「凶器は言葉」

とある白い部屋で、子供と大人が話している。

「───よしわかった。じゃあこんな話をしよう。人類が精神病理学に至るまでの狂気の話だ」

「はい。お願いします」

「そもそも狂気とは何だと思う?フィクションでなら見掛ける表現だけれども、具体的にどういう状態を狂ったと判断するのか?」

「さあ…急に叫んだりとか、話が通じなくなるとか…そんな感じでしょうか?」

「そんな状態はね、例えば昔の日本

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ある呪文「接続詞」

ある呪文「接続詞」

うん。つまりはあなたは精神と物質的な世界は別であり、リアルとフィクションは無関係だと。そう言いたいんですね?結構。

ところで地球が生まれてから今日まで。およそ48億年。この辺りだけでも随分変わったのでは?森や荒れ地は開発が進み人の手が入ることで舗装された道路や建物に代わりました。この事から、人が物質的世界に影響してきたことは明らかですね。

更に、人間の肉体と精神は互いに影響し合っています。

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ライブ・ペイン・ティング(下)

ライブ・ペイン・ティング(下)

1人と0.5人と0.5人と0.5人が事務所で一堂に会している。

「さて、ここが我が仕事場だ。お茶くらいは出すから遠慮なく我を忘れてむしゃぶりついていいよ」
「あはは、つきませんよ」
「ん?君たち緑茶苦手?お茶は日本人の心だよ」
「いえ、そういう意味ではなく」

というか、現状幽霊みたいに物質に触れられないので呑みたくても呑めないだろう。無論西宮もそれは承知で、こういうのはもてなす意思が肝要な

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