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詩『2月29日のballad』#シロクマ文芸部

うるう
四年に一度しか
祝ってもらえない誕生日
夏季オリンピックと同じ年の
透明な2月29日
風景に擬態して
輪郭も曖昧になってゆく

みえない年を四層に重ねて
響いているカルテット
硝子製のジグソーパズルを
未完成な心臓にめこんだ
細胞の核に
地雷を隠し持っている

ふわり、
そよ風の袖に手を通す
太陽の微笑みが乱反射する
樹々が揺れながら
ハッピーバースデーを歌ってくれる
(ーーー歓声ーーー)
ざわめきが木霊こだまする

積もり積もった沈黙の殻を破いて
砕いて すり潰して 煎じて
ごくり、と飲み干す
何度も 何度も
(わたし、)の声を呑みこんだ

擦り切れるまで読んだ中也の詩集
無言の叫びが染みついた栞
哀愁道化師のオノマトペ
誰も知らない素顔
一人部屋でこっそりと
ペルソナの化粧を落としてゆく

砂の城に棲息している
砂の肝を耕す家族
それぞれがカレンダーの中で
紛失したパズルのピースを
しずかに探しつづけてゆく


photo:見出し画像(みんなのフォトギャラリーより、いぜむさん)
photo2:Unsplash
design:未来の味蕾
word&poem:未来の味蕾

#シロクマ文芸部
#閏年

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