藍眞澄

4匹の猫たちの召使いをしながら、駅も高校もない小さな街でお日様や生き物たちに感謝しなが…

藍眞澄

4匹の猫たちの召使いをしながら、駅も高校もない小さな街でお日様や生き物たちに感謝しながら生きています。 遠い昔、詩を書いていました。 書けなくなって何十年かの時が過ぎ、 私は年老いました。 今でしか書けない思いを言葉に乗せて 作品にしたいと思います。

マガジン

  • エッセイ

    なにげない日常の思いを書いてみました。

  • 2024年詩

  • 2023年詩

  • いけばな作品、合唱のための作詞

    生花作品、合唱のための作詞

  • 詩 作品  2022年11月から

    1995年に地方新聞社主催のコンクールで優秀賞を受賞して以来、2023年10月まで、長い間詩を書くことができないでいました。 また、とぼとぼと昔の道を歩き出した頃の作品たちです。

記事一覧

固定された記事

そして今

中学生の頃でした。 ラジオから聞こえた 「降り積む闇の中で風をくらい」という詩のフレーズ。 辛いことの多かったあの頃、 その一言が、なぜか私に寄り添ってくれるよう…

藍眞澄
1年前
94

42「詩」雨の季節の少し前

吹いてくる風の境目を見たのは 目の見えない少女です 風の音を訳したのは 耳の聞こえない少年です 生まれたばかりの真っさらな風を 知っていたのは みすぼらしい老人でし…

藍眞澄
19時間前
8

生花の違い

たまたま縁あって10年ほど前から草月流の生花を学んでいます。 Facebookでは草月流の世界中の作品がアップされています。よく観察してみると、ヨーロッパの人たちの作品と…

藍眞澄
1日前
16

お元気で

Mさんご夫妻がお嬢さんの住む神戸にお引越しなさるとのこと。 寂しくなります。 Mさんご夫妻は教会のミサにほぼ毎週いらしてました。私はあまり教会に行かないのですが、…

藍眞澄
3日前
14

稲垣純也さんの写真

稲垣純也さんの写真 稲垣純也さんの写真が好きです。 noteに書いた私の拙い作品にもたくさん使わせていただいています。 書いた作品のnoteの見出しに使う写真が見つからな…

藍眞澄
6日前
17

いけばな「花だけを生ける」

花だけを生ける 花材を見て、色がバラバラなのでどうしたらよいか悩みました。同系色の花材だけ使う、反対色の花材だけ使う?あえて全ての花材を使うことにしました。 お…

藍眞澄
8日前
18

41「詩」星採集

明け方蝋燭に火を灯して 何が採れたのか確認してみましょう 網にほつれがないか 入念に調べることも忘れずに 一睡もせずに 星を採集していたのです 昨日星になった生後1か…

藍眞澄
9日前
21

叔母のウェディングドレス

1965年ウェディングドレスの着用率が3パーセントだったそうです。 私の父方の叔母の話です。 私の父は長男です。母が父の元に嫁いだ頃まだ中学生だった叔母は嫁ぐまで同じ…

藍眞澄
9日前
28

二十歳の頃の作品

二十歳の頃堀辰雄の「風立ちぬ」を読みました。登場人物の節子が絵を描いている美しい風景が頭に残りました。「そうだ油絵を描こう!」 思いつくと絵に詳しい友人と一緒に大…

藍眞澄
13日前
15

40「詩」朝に

お友だちから山菜が届きました 蕨やタラの芽 こしあぶら サンショウ 山菜の香には雑木林の木漏れ日が入っていました お友だちから縮緬と柚子味噌が届きました 瀬戸内の…

藍眞澄
2週間前
20

上手宰さんの詩集

上手宰さんの「香る日」を読みました。 定年後書き溜めた作品を65歳の時にお作りになった詩集だそうです。 宝石のような美しい世界が結晶になった作品でした。そうだね、そ…

藍眞澄
2週間前
21

39「詩」午後の光景

はらはらと 落ちてくることばを 両手で捕まえようとする午後です 捕まえてしまえばあんなに光っていたのに 粉雪のように溶けてしまうのが わかっているのです 見えない音…

藍眞澄
3週間前
20

38「詩」忘れもの

いつも忘れものをしている ような気がする いつも探しものをしている ような気がする なにを探しているのか分からない やらなきゃならないことが 生きてる時間を埋めてい…

藍眞澄
3週間前
20

37「詩」風

ひとがいる そのひとのこころは分からない 分からないけれど隣にいる 隣にいると 理由も分からないけれど 悲しい気持ちがつたわってくる そのひとの苦しさがつたわってく…

藍眞澄
3週間前
22

36「詩」願い

私の生まれるずっと昔に 生まれた光の粒たちが 行く当てもなく 散らばっていって やっとやっと辿り着いたのは 音の波 限りなく広がる波は いくつもの笛から 奏でられ 光の…

藍眞澄
1か月前
19

35「詩」朝焼け

漆喰の空に一筋の光 時のゆっくりとした流れのなかで 明るさを増し 明るさは 閉ざされた心の 隙間を開けていく 泣き尽くされた涙が 乾いた空気に変わってしまっていた夜…

藍眞澄
1か月前
19
そして今

そして今

中学生の頃でした。
ラジオから聞こえた
「降り積む闇の中で風をくらい」という詩のフレーズ。

辛いことの多かったあの頃、
その一言が、なぜか私に寄り添ってくれるようでした。

学生時代。毎日毎日言葉を紡いでは作品にし、詩誌に投稿していました。
たまにご褒美のように賞をいただくことが嬉しく励みでした。

あれから数十年が過ぎ、
私は詩作からは遠ざかったまま、
すっかり年をとりました。
人生の折り返し

もっとみる
42「詩」雨の季節の少し前

42「詩」雨の季節の少し前

吹いてくる風の境目を見たのは
目の見えない少女です

風の音を訳したのは
耳の聞こえない少年です

生まれたばかりの真っさらな風を
知っていたのは
みすぼらしい老人でした

季節がなくなったと人々が言います
春の後で冬
いきなり夏
草花だけが刻まれたリズムの中で
蕾をつけ花を咲かせ
散っていきます

誰にも分かってもらえない
ひとりで長い間抱えてきた気持ちなのに
見ず知らずの会ったこともない人が

もっとみる
生花の違い

生花の違い

たまたま縁あって10年ほど前から草月流の生花を学んでいます。
Facebookでは草月流の世界中の作品がアップされています。よく観察してみると、ヨーロッパの人たちの作品と日本人の作品の違いがあるように感じます。どちらも美しく、優劣つけられるものではありません。優劣を超えて特徴的な違いに気づくのです。

生花は引き算の美学、フラワーアレンジメントは足し算の美学だと私の先生に伺いました。長く生活に溶け

もっとみる
お元気で

お元気で

Mさんご夫妻がお嬢さんの住む神戸にお引越しなさるとのこと。
寂しくなります。

Mさんご夫妻は教会のミサにほぼ毎週いらしてました。私はあまり教会に行かないのですが、行けば必ずお会いすることができました。
小学校2年から聖歌隊に混じって歌っていた息子をことのほか可愛がってくださいました。社会人になり息子はほとんど教会に行かなくなりました。それでも、ミサでお会いするとMさんは、
「坊やちゃんはお元気?

もっとみる
稲垣純也さんの写真

稲垣純也さんの写真

稲垣純也さんの写真

稲垣純也さんの写真が好きです。
noteに書いた私の拙い作品にもたくさん使わせていただいています。
書いた作品のnoteの見出しに使う写真が見つからない時、稲垣純也と検索するとたいていぴったりの写真に出会えます。

逆に、
稲垣さんの写真から作品が生まれることもあります。
一枚一枚、じっと見ていると、物語が生まれてくる。ごくありふれた日常のなかの切り取りが、日常でない世界に繋

もっとみる
いけばな「花だけを生ける」

いけばな「花だけを生ける」

花だけを生ける

花材を見て、色がバラバラなのでどうしたらよいか悩みました。同系色の花材だけ使う、反対色の花材だけ使う?あえて全ての花材を使うことにしました。

おおまかに左側に黄色🟡系、右側に🩷系でまとめ、グラデーションになるようにしてみました。

最初織部焼の花器を使っていたのですが、先生から花器が重すぎるとご指摘がありました。
先輩たちは40年以上草月を学んでいます。(私は過去に小原流を

もっとみる
41「詩」星採集

41「詩」星採集

明け方蝋燭に火を灯して
何が採れたのか確認してみましょう
網にほつれがないか
入念に調べることも忘れずに
一睡もせずに
星を採集していたのです
昨日星になった生後1か月にもならない
小さな猫の星もあったはずです

生まれたばかりの小さな猫でした
お母さん猫に
置き去りにされてしまった小さな猫は
身体の中の息をぜんぶ使って
出来るだけ大きな声で鳴きました

牛飼いのおじさんに見つけてもらい
お腹いっ

もっとみる
叔母のウェディングドレス

叔母のウェディングドレス

1965年ウェディングドレスの着用率が3パーセントだったそうです。
私の父方の叔母の話です。
私の父は長男です。母が父の元に嫁いだ頃まだ中学生だった叔母は嫁ぐまで同じ家に住んでいました。
叔母が高校生になり、毎朝セーラー服を着る光景を私は覚えています。叔母は私より16歳上ですから、おそらく、私が1、2歳くらいの記憶だと思います。
マンドリンクラブに入っていて、裸電球の下でマンドリンを弾いていたのも

もっとみる
二十歳の頃の作品

二十歳の頃の作品

二十歳の頃堀辰雄の「風立ちぬ」を読みました。登場人物の節子が絵を描いている美しい風景が頭に残りました。「そうだ油絵を描こう!」
思いつくと絵に詳しい友人と一緒に大学近くの画材屋に行き、最低限の油絵の道具を選んでもらいました。

道具は揃いました。
週末栃木に帰省した折、小さな頃から通っていた教会のミサに行きました。神父様の肖像画を描いて誕生日に贈った青年がいました。絵が好きで学んだものの実家の家業

もっとみる
40「詩」朝に

40「詩」朝に

お友だちから山菜が届きました
蕨やタラの芽 こしあぶら サンショウ
山菜の香には雑木林の木漏れ日が入っていました

お友だちから縮緬と柚子味噌が届きました
瀬戸内の波打ち際の
揺れる陽射しが入っていました

お友だちから刺身こんにゃくが届きました
土を耕し芋を育てた人の汗が入っていました

お友だちから老舗の牛タンが届きました
頑張ってとお友だちの心が入っていました

ぜんぶ美味しくいただきました

もっとみる
上手宰さんの詩集

上手宰さんの詩集

上手宰さんの「香る日」を読みました。
定年後書き溜めた作品を65歳の時にお作りになった詩集だそうです。
宝石のような美しい世界が結晶になった作品でした。そうだね、そうだね、と頷きながら上手さんの世界の隣に立っている気がしました。

歳をとるということは悪くないです。
鏡を覗けば皺とシミだらけのお婆さんになった私。よくもこんな顔を人前にさらしているもんだと呆れたりします。
中身はちっとも変わってない

もっとみる
39「詩」午後の光景

39「詩」午後の光景

はらはらと
落ちてくることばを
両手で捕まえようとする午後です
捕まえてしまえばあんなに光っていたのに
粉雪のように溶けてしまうのが
わかっているのです

見えない音の響きが
柔らかな午後の光に包まれて
ゆるゆると螺旋状に揺れています
粉雪のように四方に光を反射し
その中に秘めたことばも
ゆらゆらと揺れて
いるのです

しばらくすると
あとからあとから
落ちてしまうことばたち

両手で捕まえたら

もっとみる
38「詩」忘れもの

38「詩」忘れもの

いつも忘れものをしている
ような気がする
いつも探しものをしている
ような気がする

なにを探しているのか分からない

やらなきゃならないことが
生きてる時間を埋めている
時計を見ながら
時間を計算する
計算された時間に
小さな穴が空くと
忘れものがあることに気づく

ずっと探してきたような気がする

なにを探しているのか分からないでいる 

神さまのことだけを考えてつくられた遠い
遠い昔の音楽が

もっとみる
37「詩」風

37「詩」風

ひとがいる

そのひとのこころは分からない
分からないけれど隣にいる
隣にいると
理由も分からないけれど
悲しい気持ちがつたわってくる
そのひとの苦しさがつたわってくると
どうしたら苦しさが減ってくれるか
そればかり考える

なんにもできない
でも
考える

いつの間に
そのひとの悲しみは
自分の悲しみに変わる
理由の分からない悲しみが
わたしの隣のひとにつたわり
みんなの悲しみに変わっていく

もっとみる
36「詩」願い

36「詩」願い

私の生まれるずっと昔に
生まれた光の粒たちが
行く当てもなく
散らばっていって
やっとやっと辿り着いたのは
音の波
限りなく広がる波は
いくつもの笛から
奏でられ
光の粒たちは
分け隔てなく波に溶けていく

流れついた音がいつか
だれかに光を渡す

いつもと変わらない1日でありますように

音に願いをこめ
手のひらに包みそっと息を吹きかけてみる
目を凝らさないと見失ってしまうほど
かすかな願いが裸

もっとみる
35「詩」朝焼け

35「詩」朝焼け

漆喰の空に一筋の光
時のゆっくりとした流れのなかで
明るさを増し

明るさは
閉ざされた心の
隙間を開けていく

泣き尽くされた涙が
乾いた空気に変わってしまっていた夜明け
一筋の光は
空のかなたにあった潤いを引き寄せ
空気に温もりを与えている

どんなに苦しんだ夜にも
一筋の光がさし
やがて
燃えるような朝焼けの時を迎えること
忘れないで
#古楽の楽しみ
復活祭のためのミサ曲を聴きながら