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2023年詩

95
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95「詩」鍵

95「詩」鍵

働かなくても食べていけるんだけどね

エラクなった友だちの言葉が
暗い部屋の鍵を開けてしまった

地位も名誉もお金もない
今日生きるために 精一杯 働く
生きるために必要な最低限のお金を得て
生きるために必要な最低限のものを買う

日の光の射す方向を感じ
野の花が咲く季節を知る
それだけで 幸せなのだ

幸せなのだ と知ってるのに

でも なんだろう このザワザワしたものは

暗い部屋に入ると

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94「詩」幸せなこと

94「詩」幸せなこと

幸せなこと
朝目覚めること

幸せなこと
一杯のコーヒーを飲めること

幸せなこと
出かける家族を気をつけてと見送れること

幸せなこと
薔薇が初めて咲いたこと

幸せなこと
あの角を曲がると小さな草花が咲いていること

幸せなこと
さくら耳の地域猫がまるまると太っていること

幸せなこと
空が碧いということ
争いの音がしない空が広がっているということ

幸せなこと
空の下で鳥が鳴いているというこ

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93「詩」再会

93「詩」再会

両手に抱えた夢がこぼれ落ちていた
惜しげもなく夢は一瞬光ると
さらさらと音を奏でながら
風になっていった

この場所で
出会った
時間の流れを
無造作に編み込む

未来は漠然と
あやしい魅力に溢れていた
安酒をコップに注ぎながら
特上の思いを熱く語った仲間たち

集まれば
そのまんまだ

この場所で
この仲間たちと
出会ったのは

人間が人間として
2本の足で大地を踏めるようになる
そのずっとずっ

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92「詩」遠い記憶

92「詩」遠い記憶

セピア色にほのかに明るんだ丸い空間の中にある
遠い記憶に
蒼くのびたツタの先端が届くと
するすると遠い記憶はツタを伝って滑り落ちてくる

そうだったのだ
騙されていたのだ
利用されていたのだ
悪意をこめられていたのだ

遠い記憶の裏に気づく

気づいたところで何の怒りもない

そのまま地面に滑り落ちていく
忘れていた記憶が地面いっぱいに溜まって
地面に深く食い込んだツタの根っこを潤していく

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91「詩」なさけない

91「詩」なさけない

思いがこんなにたくさんあるのに
言葉にできないでいる
言葉にすると違った色に染まってしまいそうで

言葉にすると
どんなふうに伝わるか
傷つけないか
言葉で伝わる私が本当の私と違ってしまわないか

そんなことが大きく膨れ上がり
恐くて
言葉にできないでいる

どうみられるか
どう思われるか
そんなことどうでもいいと知っているのに
気にする自分が情けない

90「詩」息子に

90「詩」息子に

5月に生まれた君に
花を届けよう

星屑のかけらだった頃の
忘れてしまった記憶が
ずっと君の鼓動の中に
息づいているように

人って心に強く感じると涙が出るんだね

合唱団の一員として
スペインで歌った中学生の君が言った

お母さんは忘れない
君は素敵な子に育っていたんだ

人と比べることなく
君は君の感じる一流を目指しなさい

今手に入る一流と呼ばれるものを
見て
聴いて
食べて
君のモノサシを

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89「詩」風

89「詩」風

雨の季節のほんの少し前に
あなたに風を贈ろう
泣いてるあなたに

訳など聞かなくても
腫れてる瞳がほんのわずかに
軽くなるように

雨の季節のほんの少し前に
あさぎいろの風を贈ろう
思いを描くあなたに

思いが叶わなくても
描けた思いがほんのわずかに
前へ進めるように

大地を超えてやわらかく
野の花の香りを乗せてふんわり

88 猫語を通訳してみた

88 猫語を通訳してみた

にゃほにゃほ           おはよう
っんかーっ んがっ    お母さん おなか

にゃほにゃほ           おはよう
っんがっ              すいた

っんがっ っんがっ     ごはん ごはん

にゃほにゃほ           おはよう
う〜〜んがっ う〜〜んがっ  まぁだまぁだ

っんかーっ っんかーっ お母さん お母さん

んがっ っんがっかっ おなかがすいた時

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87「詩」朝焼け

87「詩」朝焼け

空気を伝ってくる悪意

魂が深く沈んで動けなくなってしまう

巧妙に隠された強欲

謙虚を装った自慢話

私の周りに張り巡らされた有刺鉄線の外に
踏み出せなくなってしまう

ふと

なにもかも投げ捨ててしまいたくなる

自分の欠点がどんどん膨張して
長所など見えなくなってしまう

ここにいる意味がいったいあるのだろうか

ふと

このまま消えてしまいたくなる

重過ぎる自分を背負うことに疲れてしま

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86「詩」そんな時

たったひとりだと思った
こんな悲しみを抱えているのは

誰にも話せないでいた
話せば誰かの言葉に傷つくのが分かっていた

近くにいる人々の
ほんのささいな言葉に
ほんの僅かな悪意や妬みがこめられていると
私は膝を抱えて歩けなくなってしまう

そんな時は

きまって

夜空を思い浮かべる

何万光年離れた星たちが
同じ波長で
同じリズムで
悲しみを感じてくれる

85「詩」その先に

85「詩」その先に

真っ直ぐに延びた道のその先に
富士山が浮かんでいる

ありきたりの住宅街
荷造り紐のような電線が
見慣れた生活で梱包された家々を
結んでいる

昨日と変わりない時間に起き
昨日と変わりない朝食を整え
変わりない一日が始まる

昨日と変わりなく
真っ直ぐに延びた道を足早に歩き
仕事に向かう

来る日も来る日も
変わりない時間が過ぎてゆく

真っ直ぐに延びた道のその先には
変わりなく富士山が浮かんでい

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84「詩」これから

84「詩」これから

山肌に馬が見えたら種まきの季節
昔からの言い伝えだ
数日したら田おこしが始まる
赤茶けた田畑の下でじっと冬を耐えた
思いたちが目覚め始める

家路につく夕暮れ
ふと自転車を停める
私の影が
固い土を割って生えた雑草の上に
ふんわりと落ちる

やがて
ふさふさとした稲が
ひしめき合って日の光に
手を伸ばし始める
一枚一枚の葉先に光を集めて
稲たちは良いモノだけを身体に貯め
やがて黄金色の光に変えるだ

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83「詩」フラワームーン

83「詩」フラワームーン

あの日ひとかけらの勇気をもっていたら
この時間に違った自分が違う場所に
立っていたかもしれない

あの日ひとかけら素直さをもっていたら
この時間に見知らぬ誰かに
手紙を書いていたかもしれない

あの日ひとかけらの強さをもっていたら
今苦しんでいることと違った場所で
新しいことを始めていたかもしれない

あの時失くしたひとかけらが一輪の花になる

花は夜空を見上げる
違った場所にいたかもしれない自分

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82「詩」雨の月曜日

82「詩」雨の月曜日

雨の月曜日
心の中まで濡れてしまわないように
暖かな飲み物を注ごう

悪いことばかりでない
飲み物が冷めてしまわないように
良いことを見つけていこう

( 返詩 : 寺間風 )

濡れた前髪と
青葉の香りを引き連れて
君が帰ってくる

熱い紅茶とビスケット

雨に煙る窓辺から
虹の架かる空を見よう

*返詩をいただきました。
寺間風さまに感謝💓