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コソボという地域について

コソボについて、前回の続きです!
本の内容を深く掘り下げていきます!!

根深い民族間の憎悪感情。
それは、スポーツである サッカーの試合にも影を落としています。


「コソボー苦闘する親米国家―
ユーゴサッカー最後の代表チームと臓器密売の現場を追う」木村元彦著
集英社インターナショナル



かつてコソボは、旧ユーゴスラビア時代はセルビア共和国内のアルバニア人の自治州でした。

1980年代にセルビア人に対する迫害があったとして当時のミロシェビッチ大統領が89年に自治権を剥奪。
それに反発したアルバニア人はKLA(コソボ解放軍)のゲリラ活動を展開しました。
99年1月にはセルビア治安部隊にアルバニア人が虐殺される「ラチャク村の虐殺」が起きました。
ミロシェビッチ大統領が、英米独仏伊ロの調停を拒否した結果NATOの空爆が行われ、この空爆によってセルビア治安部隊はコソボから撤退しました。
以降、コソボに関する報道はなくなります。

しかし、その後コソボで何が起こっていたのでしょうか。



1999年のNATO空爆によってコソボ内のセルビア人とアルバニア人の力関係は逆転しました。
元々数が少なかったセルビア人が「民族浄化」の対象になったのです。


空爆前、州都プリシュティナに約20万人もいたセルビア人は2005年にはたったの38人になってしまいました。
セルビア人はコソボ国内の飛び地のようなエンクレイブ(民族集住地域)に押し込まれています。

しかも、新コソボ政府の中核にいるKLA(コソボ解放軍)の一派によって3000人以上のセルビア人が拉致され、その多くは、アルバニア本国で内臓を抜かれて殺され国際的な臓器ビジネスの犠牲になったのです。


著者は、拉致被害者の家族にもインダビューし、臓器摘出殺害現場であるアルバニア国内の「黄色の家」も取材しています。

ICTY(旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷)の国連検事を務めたカルラ・デル・ポンテの献身的な捜査にもかかわらず、真相究明は困難を極めました。
その理由は犯罪にコソボ政府高官が関わっていたこととKLAの背後にいるアメリカがKLAの訴追に消極的だったからです。
証人が脅迫され、アルバニア人の目撃証言を得ることも困難でした。

その後欧州評議会法務人権委員会の検察官ディック・マーティが詳細な調査報告を発表しましたが、加害者の逮捕・裁判にはいたりませんでした。


2008年2月17日、コソボは「コソボ共和国」として独立しました。
その翌日の18日、後ろ盾であるアメリカが即座にこれを承認しました。

しかし、他の国々はなかなか承認せず、2022年現在で114の国が承認、82カ国が不承認です。
承認する国が少ないのは独立が国際法に違反する疑いがあるからです。


ウティ・ポッシデティス(現状承認)という原則があり、植民地や連邦構成地域が宗主国や旧連邦から独立をする場合の条件は、「共和国であることであり、国境を変化させない」ということだからです。
コソボは自治州であり共和国ではないのでこの条件を満たしていません。
米国がコソボに固執するのは、州都プリシュティナの南に位置するボンドスティールの地に米軍基地を建設するのが目的だったからだと言われています。
中東と欧州の狭間にあるこの地域は軍事拠点として重要だからです。


コソボ国内には、1327年に建設されたセルビア正教の総主教デチャニ修道院があり、セルビア人の精神的支柱・聖地となっています。
このためセルビアは頑としてコソボの独立を認めていません。

それに対してコソボ国内のアルバニア人は隣国アルバニアとの併合を求めています。
彼らはアルバニア民族主義に凝り固まっていて、コソボ内の少数民族の存在を認めないのです。


みなさんこのできごとは記憶にあったりしませんか?


2018年W杯ロシア大会のスイス対セルビアの試合で、コソボ生まれのアルバニア人でスイス代表のジャカとシャキリがゴールの後に両掌を胸の前で交差させてパタパタと扇ぐジェスチャーをしました。
これは、アルバニア国旗にある双頭の鷲を示すもので、明らかにセルビアを挑発するポーズでした。


当時私は何のことやらと思ってニュースを素通りしていました。
しかしそれはセルビアにとっては侮辱であり、恐怖を呼び起こすものでした。


1999年のNATOによるコソボ独立のためのセルビアへの空爆では劣化ウラン弾やクラスター爆弾が使われました。
クラスター爆弾は別名集束爆弾とも呼ばれ大量の子弾を内包する親弾が空中で爆発すると散弾して広範囲を破壊・殺傷するものです。
約4割の弾が不発弾となり。それに触れた市民の犠牲が絶えません。
劣化ウラン弾も放射能汚染の危険があるものです。空爆後もずっと市民に被害を及ぼしています。

2つとも禁止条約があり、使用は戦争犯罪とみなされております。
国際法違反です。ちなみにGoogle検索で質問してもそう返ってきます。


日本は欧米寄りなので、当時はコソボの選手よりの報道でした。


コソボ出身のセルビア人サッカー選手ランコ・ポポビッチの言葉が本書にあります。

「ここ数年のコソボの紛争について言えば、我々は互いに殴り合いをさせられてきた。
セルビア人もアルバニア人も傷ついてきたが、腹立たしいのは遠い所で殴り合いをさせているヤツが最も得をしているということだ。」


そして、この紛争が今起きているウクライナ戦争とも関わっています。
なんとこれらの兵器が今ウクライナでも使われているのです。



戦争犯罪レベルの国際法違反である兵器を欧米はウクライナへと渡しているのです。
このままでは、人も場所も回復不可能になってしまいます。
狂ってます。


最後のユーゴスラビア監督イビツァ・オシムは次のように言っていました。
「いいか、民族主義っていうのは、同じ境遇の者を同じ家か教室の中に閉じ込めて、窓もドアも閉めて、『ほかの奴らは敵だ。歴史はこうだ。俺たちは被害者だ。だから奴らを追い出せ。』と教育の場で吹き込み続けることで生まれてくる。
それを止めるには人間同士が交わることだ。
交わることで信頼を築いて戦争を防ぐことができる。」


戦争をすることで一体だれが得をしているのでしょうか??



執筆者、ゆこりん、ハイサイ・オ・ジサン

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