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『恐るべき子供たち』を読む

『恐るべき子供たち』を読む

 コクトーの『恐るべき子供たち』を今さら読んだ。読まねば読まねば、と思いながら、ずーっと放っておいたのだった。

 あらすじというほど筋で読ませる小説ではないのだが、ざっというならこんな感じだ。

 14歳のポールは、中学校で雪合戦をしているときに、密かに愛しているダルジュロスが投げた雪の球によって胸を直撃されて倒れ、しばらく安静を命じられる。ポールを送ってきたジェラール(ポールを愛している)は、

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江原啓之『守護霊』を読む

江原啓之『守護霊』を読む

 なぜこの本を買ったかという話から始めよう。少しまで、私には「人生逃げ切り」を目論んでいた節があった。定年まで元気に働き、老後は本を読んだりちょっと旅行したりして呑気に過ごし、寄付もして人のために何かしよう、くらいのものである。しかし、ふとしたことから江原さんの「肉体は死んでも魂は永遠、この世はいろんなことを学んで魂を磨くために滞在する場」という意味の言葉を読み、考え方がガラリと変わった。死んで卒

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江原啓之『金霊』(かねたま)を読む

江原啓之『金霊』(かねたま)を読む

 ずっと前に読んで、早く内容をまとめよう、と思いながら日々が流れてしまった。今日こそはきちんとこの本を紹介したい。

 江原啓之さんの本はもともとよく読んでいたし、霊的能力は皆無だが、本の内容は自分なりに咀嚼できていたと思う。ただ、江原さんがお金についての本を書かれたのはこれが初めてで、「お金がほしいという欲望」と「魂にとってよき生き方をすること」はどう折り合いをつけられるのか、ということは知って

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『パラダイムシフト』を読む

『パラダイムシフト』を読む

 ネットで話題になっていた『パラダイムシフト』という漫画を読んだ。(https://twicomi.com/manga/e3_noguchi/913693963118190594

 とても面白く、ストンと納得のいく部分の多い作品だった。ネタバレになるが、まずはあらすじを紹介しておこう。主人公は父親から虐待を受けて育つ。歴史が大好きで頭もよく、高校受験の際に名門校を勧められ、父を見返せる、という

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『ほんとうのリーダーのみつけかた』を読む

『ほんとうのリーダーのみつけかた』を読む

 『西の魔女が死んだ』において、いじめに悩む主人公「まい」に「自分で決める」ことを教えるおばあちゃんを描いた作者が、リーダーというものをどのように定義するのか、とても興味があった。だいぶ前から話題になっていたところ、ようやく読むことができた。

 作者は2007年に『僕は、そして僕たちはどう生きるか』の連載を始めている。その背景には、教育基本法に改変が加えられ、国を愛することを明文化した国に対して

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『たちどまって考える』(ヤマザキマリ)

『たちどまって考える』(ヤマザキマリ)

 テーブルに、9月10日に刊行されたばかりのこの本が置かれていたので、思わず読んだ。コロナ禍で家族と離れて日本にいるヤマザキマリさんの最新エッセイである。面白い点はいくつもあったが、ここで紹介しておきたいのは以下の点である。

1)ヨーロッパにおけるリーダーには、弁証力が求められ、イタリアの人たちは幼少期からこれを学ぶ。

2)民主主義とは参加することである。

3)日本人の失敗したくない病。

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『ふたご』を読む

『ふたご』を読む

 藤崎彩織の『ふたご』、文庫本が発売されたので、早速買ってきて読んだ。Saoriちゃんのファンになってから『ふたご』もすぐに読みたかったのだが、文庫本になるというのを知り、だったら「文庫本のためのあとがき」がつくはずだ、というおまけ根性で、読むのを今日まで延ばしていたのだった。で、一気読みした。

 とにかく瑞々しい。子どもの頃の生きづらさや、思春期のどうしようもない閉塞感や、先の見えない死に物狂

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『読書間奏文』を読む

『読書間奏文』を読む

 セカオワ、特にSaoriちゃんにはまっている私は、『ふたご』は9月に文庫本になってから買おうと思っているのだが、その前に『読書間奏文』を買って一気読みした。面白かった!自身の体験や思いと、紹介する本の引用文がぴったりなのだ。貧乏時代、1000円を基準に取捨選択をしていたSaoriちゃんは、牛丼一杯に物事を換算する小説の登場人物に自身を重ねつつ、今では「8000円」を価値の基準にし、ネパールの子ど

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村上春樹『一人称単数』を読む

村上春樹『一人称単数』を読む

 昨日発売された村上春樹の新作、『一人称単数』を早速読んだ。6年ぶりの作品ということで、あの『騎士団長殺し』から早くも6年、と思うと驚くばかりだが、とにかく村上春樹の作品は、どんなに忙しかろうが読まないわけにはいかない。

 本作には七篇の短編が収められている。どれも、文体といい物語世界といい、「100%村上春樹」という感じのものばかりだった。読んでいて、かすかに過去の作品がかすめることもあった。

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