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五所光太郎氏について

【旧稿再録:初出「アレクセイの花園」2005年11月5日】

※ 再録時註先日、ネット記事の署名に「五所光太郎」という見覚えのある名前を見つけた。特徴のある名前なので、引っかかったわけだが、とにかく記憶力には滅法自信のない私なので、この人とどこで接触があったのか、まったく思い出せない。どこかで仲良くやりとりした人なのか、はたまたネット上でケンカをした相手なのか。そこでネット検索してみると、小説家・式貴士の研究サイト「虹星人」の管理人・FIVEPLACEこと五所光太郎さんであったことが判明し「ああ、あの人であったか」と、誰だったかは理解したものの、私とどのようなかたちでの接触があったのかまでは思い出せなかった。そして、本日「旧稿再録」のために過去ログを漁っていたところ、下のような記事が出てきたというわけである。今更、私なんかとの関係を紹介されても、五所氏には何のメリットもないだろうし、あるいは迷惑かもしれないが、式貴士のささやかな宣伝くらいにはなろうかと、以下に紹介することにした。いくつか註(※)を加えたが、文体は原文のままである。)

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うち(※ すでに閉鎖された電子掲示板「アレクセイの花園」を中心として形成されたホームページ「LIBRA アレクセイの星座」のこと。こちらは掲示板の閉鎖より、ずっと以前に、運営会社のホームページサービスの停止に伴い、閉鎖している)でもリンクを張らせていただいている、式貴士研究サイト「虹星人」の管理人 FIVEPLACEこと五所光太郎さまが編集に関わられた、間羊太郎(はざま ようたろう)の『ミステリ百科事典』(文春文庫)が、このたび刊行の運びとなり、数日中に書店頭に並ぶのに先立って、五所さまが私にも同書をお送り下さいました。

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上記「虹星人」の「御挨拶」にも、

『このサイトは、式貴士、蘭光生、間羊太郎、小早川博、ウラヌス星風、等々のペンネームを使い分け各分野にて活躍した作家、清水聰氏(1933~1991)についての個人的研究成果を公開したものです。』

と紹介されておりますように、間羊太郎は式貴士と同一人物で、以前に現代教養文庫から刊行されていた『ミステリ百科事典』を、大幅増補して文春文庫で復刊するにあたり、式貴士の研究家である五所さまが、その見識を見込まれて編集に加わったということでございます。

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(蘭光生は、官能小説作家。私の場合、式貴士より多く読んでいるはず)

同封されていたお手紙の中で、五所さまは『以前、『プラネタリウムにて』を頂いたお礼です。』と書かれておりましたが、さらに『ご一読頂き、「花園」に感想等を書いていただけると嬉しいです。』と真心のこもったお言葉を下さり、私はこれをたいへん嬉しく思いました。(※ 『プラネタリウムにて』は、本多正一の著書。私が解説を執筆)

言うまでもなく、私などがここ「花園」で褒めたところで、同書の売り上げが伸びることなど金輪際ございません。また私の場合、御本をいただいたからといって必ずしも褒めるとはかぎらない、というのは、長らく「花園」をご覧下さっている五所さまならば、十二分にご承知でございましょう。
まして私は、以前に「式貴士という作家にはさほど興味がない」と正直に伝えてもいるはずですから、たぶん五所さまは、私に「提灯持ち」など期待してはおられないはずでございます。にもかかわらず、感想を書いてほしいというのは、純粋に感想が聞きたいということでございますから、これは批評家冥利につきるお言葉で、だからこそ私は本当に有り難く、嬉しく思ったのでございます。

とは言え、781ページ、定価1286円(税別)の分厚い文庫本を、すぐに読むわけにもいきませんので、本日は、お送りいただいた御本を手にして思ったことを、一寸書かせていただこうと思います。

まず私が思いましたのは「大好きな作家の絶版本の復刊にかかわれて、五所さん、本当に良かったなあ」ということでございました。
ファンが大好きな作家の本の出版にかかわれるというのは、言うまでもなくファン冥利につきる、うれしい出来事でございます。しかし、それがどんどん新刊の刊行されるメジャーな作家の本ならば、その喜びとは単に「関われた」というファンの「個人的な喜び(=自己満足)」に止まります。
しかし、間羊太郎=式貴士のようなマイナーな物故作家の復刊にかかわり尽力したというのなら、その持つ意味も、まったく違ってまいりましょう。つまり、人気作家にかかわりを持つというのは、その人気にファンの側が乗っかるようなものでございますが、今回の五所さまの場合は、「乗っかる」のではなく、逆に、間羊太郎=式貴士を「支え」「盛り立て」ようとしての関わりなのでございますね。そこが私には、たいへん美しいと感じられるのでございます。
私は数年前、五所さまのサイトを、当サイトの「リンク集」に収めさせていただく際に、次のような紹介文を書かせていただきました。

『FIVEPLACEさんの作家 式貴士研究サイト。受け狙いのファンサイトとは一線を画する、真摯な研究を地道に公開しています。マイナーな作家にこだわるその研究ぶりには、静かな情熱とでも呼ぶべきものが漂っており、「古風な」あるいは「多くは失われてしまった」ファンというものの「本来の姿」みたいなものを感じさせられ、頭が下がります。私は式ファンではありませんが、応援したいサイトです。』

つまり、今回の評価も、この時のままなのでございます。
五所さまは「花園」にも何度か書き込みをして下さいましたが、そのご文章は、温和で誠実なお人柄を反映したもので、そういう美質に乏しい私は、いつも頭の下がる思いがいたしました。その意味で私は、間羊太郎=式貴士のファンではございませんが、ある意味で五所さまのファンなのだと申せましょう。

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