新谷 華央里

Kaori Shintani 1985年11月12日生まれ。短歌を詠んでいます。…

新谷 華央里

Kaori Shintani 1985年11月12日生まれ。短歌を詠んでいます。 石川県在住。2児の母。 過去のブログの好評だった記事も載せています。

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BOOTHでの短歌の冊子の販売をはじめました

2022年1月16日に発行した短歌作品集の新刊、既刊ともに、 BOOTHでの販売をはじめました。 以下、家族、子育て、コロナ禍にまつわる短歌を収録した 新刊「果樹のフェルマータ」の概要から抜粋します。 はじめての子どもが生まれて、親として子に育てられる日々をつづった 短歌作品集第二弾。 短歌85首+エッセイ B6版・40ページ ひつじ雲が都市にみる氷柱(つらら) 愛着がやおら執着になり変わること (かぎろひ) われはただ胞衣(えな)になりゆく一頭のくじら見渡すかぎ

    • 二色のスライム

      わたしには二人の子どもがいる。二人とも男の子で、上は5歳、下は2歳。 下の子は最近特になんでも上の子の真似をしたがって(+、絶賛イヤイヤ期真っ只中なので)、おもちゃでもなんでも、上の子のまったく同じものを買い与えないと不満が爆発して全身で拒否し、ギャン泣きする。 ある日、上の子と100円ショップに行き、何か一つだけ好きなものを買ってあげるよ、と言うと、赤いスライムを選んだ。上の子が家でそれで遊んでいると、それを見た下の子が、僕も赤いスライムがほしい、と駄々をこね始めた。 後日

      • autumn🍂 |#私のプレイリスト

        秋生まれで秋がいちばん好きな季節で、秋になると無性に音楽が聴きたくなる。 というわけで、秋にこそ聴きたい曲を集めたプレイリストです。 ちょっとセンチメンタルな季節のお供にどうぞ。

        • 漢方医とのおつきあい

          21歳のときに統合失調症と診断されて、かれこれ17年くらいが経つ。 25歳くらいから現在までずっと飲んでいるブロナンセリン(通称ロナセン)という統合失調症の治療薬(女性ホルモンが増える)の副作用で、どうしても生理不順になりやすい。 最初はたしか1年くらい生理がパタッと止まった。 ロナセンを飲み始めた頃に、何度か生理不順の旨を当時の主治医に訴えたところ、おそらく主治医が男性だったこともあるのだと思うが、「ああ、そう(それは言われてもしょうがない)」みたいな感じで毎回軽くスルーさ

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          7本

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          結婚式で流していた曲たち | #私のプレイリスト

          もう6月も終わるのですが、、ジューンブライドにかこつけて、おそらくまったく需要のない私の結婚式で使用させてもらった音楽のプレイリストをシェアします。どこかで誰かの参考になれば幸いです。 spotify上になくて泣く泣く入れられなかった曲もいくつかあったのですが、結婚式の要所要所(ポイント?見せ場?なんて言ったらいいんだろう)でBGMとして使っていた思い入れのある曲たちです。全15曲です。 https://open.spotify.com/playlist/1iEm9gwv7

          結婚式で流していた曲たち | #私のプレイリスト

          マイホームあれこれ

          ※こちらの記事は、住まいにまつわる大事にしたいことを、 テクニックというよりはマインドに焦点を当てて書いていきます。 具体的に参考にできることはあまりないと思うのですが、 こういう考え方もあるんだなと読み流していただければ幸いです。 結婚して、夫の実家のある市と同じ市内に、夫の遠い親戚が持っていた古い空き家を借りて住んでいたのだけど、その家も相当ガタが来ていて、隙間風だらけ、暖房をガンガンかけていても底冷えするし(電気代がすごいことになる)、虫はいつでもどこからでも湧いてく

          マイホームあれこれ

          spring🌸 | #私のプレイリスト

          春にこそ聴きたい曲たち、 何かを始めたいときに、やわらかに伸びやかに、 テンションを上げてくれるような曲たちを選びました。 全部で36曲、約2時間30分、ほぼすべて洋楽です。 https://open.spotify.com/playlist/0covojMgnj5KBGAFiGa6P5?si=eab8917abfc84d4b #私のプレイリスト #新生活をたのしく

          spring🌸 | #私のプレイリスト

          ロンドン、夜の美術館

           生まれて初めての海外旅行は新婚旅行だった。まだコロナが広まる前の2017年秋に、夫とイギリスの主にロンドンに3,4日だけ滞在した。日常的に父が単身赴任で不在、かつ経済的に余裕のない家庭に育ち家族旅行というものをあまり経験してこなかった私は、飛行機に乗るのすらそれが初めてだった。行き先は「大学の卒論で書いた作家ゆかりの地を回りたい」という私の希望を夫が聞いてくれて、往復の航空券とホテルの宿泊がセットになった質素な個人旅行をベースに、私の行きたい場所へ行くオプションのツアーや個

          ロンドン、夜の美術館

          ガニュメデス

          東京に来いよと言われかるがると行く女なら追われなかった 約束のないまま浅瀬を楽しんでいられるほどの子どもではない もてあますわたしに注ぐ珈琲をわたしの虚像を愛したきみは 社交より帰れる家族がほしかった ずっとなかった礎こそが カフェインを拒む体にしみついて消えぬ正中線の茶色さ ほかの誰かの愛で満たされたわたくしに価値を見るなら永久(とわ)にともだち 詩に書けばきみは遠くへ行けるだろう水路を見つけた水になるから

          ガニュメデス

          命綱の記憶

           2007年3月25日。石川県で能登半島地震が発生した後、県内の金沢市に隣接する市に住んでいた私は県が参加を呼びかけた災害ボランティアの一員として、能登へ向かいました。そこで、地震の被害を受けた家の片づけをしたり、家財道具を運び出したりしました。  無心でその作業に没頭しているときに、テレビ局の取材が入ってきて、「どうしてこのようなボランティアに参加しようと思われたのですか?」と尋ねられました。私はとっさに、「自分の住んでいる地域も揺れたので、他人事と思えなくて来ました」と

          命綱の記憶

          2020年につくった短歌

          たんぽぽの綿毛ふくとき送らずにしまった手紙が息ふきかえす (2020年5月17日) 受け継いだ鏡台にいくたびも映すだんだん母に似てゆく顔を (2020年7月5日) 球体からあふれだしそうな芍薬のつぼみ臨月のもの憂さ秘めて (2020年7月19日) 測ってるうちに冷めてく熱がある目分量がいい料理も愛も (2020年9月13日) すべて 中日歌壇 小島ゆかり選

          2020年につくった短歌

          Distance

           あの豪雪のはじまり、2018年になったばかりの1月3日だったと覚えている。仕事から帰ろうと車を出すと、うっすらと雪が道路を覆い始めていた。金沢市にある職場からかほく市にある自宅までの道は短くはない。山側環状道路のいくつもあるトンネルの一つを抜けて、スピードを落としきれなかった車は雪道に押し出され、スリップした。幸いほかの車にはぶつからなかったが、ガードレールにぶつかって停車し、車は使いものにならなくなってしまった。車を失ったかわりに、わたしは無傷だった。はじめて起こした自動

          2019年につくった短歌

          わたしより気の利くLINEスタンプは「おつかれさま」と夫に茶を出す (中日歌壇 2月4日 小島ゆかり選) 部屋干しのハンガーからシャツひっかけて出ていく君の背は外の顔 (中日歌壇 4月29日 島田修三選) ひっそりと手帳にしまう「満足」の目くばせ映画の半券二枚 (中日歌壇 8月12日 小島ゆかり選) 朝露にぬれた蜘蛛の巣うつくしく触れたら終わるものほどほしい (第16回三輪山まほろば短歌賞 奈賀美和子選 秀作) 朝刊が郵便受けに落ちる音聴きながら子に与えるミル

          2019年につくった短歌

          ニュートラルであり続けるということ ~幅允孝さんのトークイベントを聴いて~ _2010.11.22.

          2010年11月19日に、タテマチ大学で幅允孝さんの授業を聴いてきました。 幅さんは、選書集団(という呼び名がウィキペディアで冠せられていましたが、正直この呼び名どうかと思う)・有限会社BACH(バッハ)の代表であり、本を流通させたり、本自体をつくったりされています。 現在(2010年当時)書店員として働いてもいて、本に関わる仕事に興味のあった私は、前々からこの授業の情報をチェックしていて、楽しみさああああにしていました。 ハイセンスな独自の本のチョイスのしかたをご教授

          ニュートラルであり続けるということ ~幅允孝さんのトークイベントを聴いて~ _2010.11.22.

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          映画『ひかりの歌』について

          学生時代と一しょにすて去ったつもりだった詩を、またかきはじめて、もう四年以上になってしまった。 もうかくまい、と何度も思いながら、どうしてもかかずにはいられなかった。生活の手ぬるさ、生あたたかさ、あいまいさに、一刻どうしても燃えるようなクライマックスが、ほしかった。 独りきりの穴の中で、手さぐりでかきつづけたものが、こうしていつのまにか たまっていった。 それらの詩を、まとめることができた今、わたしはうれしく、そしてさびしく、 そしておそろしくてならない。 さようなら わたしの詩たち。わたしはおまえたちと別れて、また新しく出発するしかないのだ。 (『砂時計』より「おわりに」) ―現代詩文庫 征矢泰子詩集 より 日常からかけ離れた、非日常じゃなくていい。 日常の中に、「クライマックス」がほしい。 ちゃんと生活に戻ってこれるように。 帰り道を見失わないように。 そんなふうに思うことが、最近だんだん増えてきたように思う。 私の中では、読んで味わうにしても、自分でつくるにしても その「クライマックス」、沸点こそが短歌で、 生活の中の何を沸点とするかにその人の人となり、個性が あらわれるなぁとよく感じる。 それは誰にとってもわかりやすい沸点でなくていい、 その人にしかわからないほんの些細なことが沸点でいい。 この『ひかりの歌』という4つの短歌をもとにした映画を観て、 杉田協士監督のお話を聞いたときにも、 監督は「この短歌を読んだときに、よくわからないと思った。 でも、わからないなりにいいなと思ったから、映画にしてみようと思った。」 とおっしゃっていた。 誰しもにとって簡単にわからせないように、 「クライマックス」はリアルの世界のクライマックスと ずれているくらいがちょうどいい。 そのずれがポエジーを生む。 読む人に、観る人に、想像の余地を与える。 そういう沸点は普段気づきにくいだけで、誰しもが持っているもの。 膨大な人生の時間軸から見たらほんのわずかな一瞬にすぎないものかもしれないけれど、 その沸点を、気持ちの高鳴りを、物語の栞を、 自分の中で大切に持っていることが、 その人を強くしていく。 その人らしさをつくっていく。 クライマックス、沸点は、日常の中にあると低くなるのではない。 地盤がしっかりあるからこそ、それを蹴って高く飛翔できるように、 現実を足場にして精緻に構築されてゆく。 そのクライマックスから日常をまなざすという行為、 他者に垣間見られる範囲を超えた、たった31音、数時間の間のスクリーンに おさまりきらない「外側」の時間もできる限りまるごと映し出すという挑戦が、 この映画という形になったのだと思う。 生活にクライマックスを持つということは、短歌をたしなむ人だけの特権ではない。 だから、短歌をベースにした映画ではあるが、 登場人物が短歌とまったく接点を持たないことが、 すんなりと身体に入ってくる。 誰にでも等しく、その人だけのクライマックスがある。 逆に言えば、クライマックスになる場面にうまく気付いて拾うだけで、 誰にでも短歌を詠むチャンスはある。 自分だけの人生のクライマックスと対峙する孤独を抱えながら、 ひらかれた、風通しの良い人間関係の中で生活していく登場人物たち。 孤独と、他者との調和が同時に描かれているこの映画は、 短歌という孤独が、孤独にとどまらず、 他者との調和の鍵にもなりうる、ひらかれたものであり、 あらゆる想像を許す、懐の深いものであることを、 やさしく、ゆるやかに指し示している。 そして、孤独と向き合い、自分の一部として背負ったとき、 その孤独は、闇に溶け込んでしまう隠れみのではなく、 お互いにたしかに呼応し、つよく惹きつけあう光となるのだ。

          映画『ひかりの歌』について

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          短歌作品集「うつせみ / クーレスト・バージンロード」通信販売について

          短歌作品集「うつせみ / クーレスト・バージンロード」詳細 生活の断片、結婚の周辺。 短歌115首を収録しています。 B6版・28ページ 『うつせみ』より 自選5首 そんな君寝ぐせだらけの頭して愛を問うのかい鏡も見ずに ミスをした日の夜等しく社畜にも眠りなさいと星がささやく 洗剤の埋もれたくなる残り香が君の記憶になって埋もれる お互いの魂くべて燃やし合い同じ焔を宿した瞳 親密な三十一文字(みそひともじ)の置き手紙残して去ったいとしい記憶 『クーレスト・バージンロード』

          短歌作品集「うつせみ / クーレスト・バージンロード」通信販売について