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読んでない本の書評

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表紙見て、あとがき読んで、数行目を通したら、だいたいわかる気がしてきた。 より深く理解するために、重さも測ることにする。
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#アメリカ

133「華氏451度」レイ・ブラッドベリ

133「華氏451度」レイ・ブラッドベリ

168グラム。近未来、思想管理のために本が禁制となった国だ。民家に隠された本があると消防士の恰好をしたファイアマンがやってきて燃やしていくディストピア。ファイアマンっていうのだから火を消すんじゃなくて、つける仕事に決まってる、というブラッドベリの出オチギャグが響き渡る。

 いろいろと鼻に付くのではある。
 ざっくり言うと「本を読まないと馬鹿になるよ」というメッセージがうるさい。
 ええい、本を読

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115「デイジー・ミラー」ヘンリー・ジェイムズ

115「デイジー・ミラー」ヘンリー・ジェイムズ

191グラム。『ねじの回転』『デイジー・ミラー』と二作つづけて読むと、内容はさておき「女性は怖い、特に美人はめっちゃ怖い。美人であれば8歳児でもじゅうぶん怖い」というヘンリー・ジェイムズの心の叫びがひしひしと伝わってきて、気の毒ながらちょっと面白い。美人との間に何があったんだ。

 デイジー・ミラーはアメリカの大富豪の実業家の娘。ぼんやりした性格の母と、わがままな幼い弟と一緒にヨーロッパを旅してい

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102「武器よさらば」ヘミングウェイ

102「武器よさらば」ヘミングウェイ

238グラム。ハードボイルドっていうのは突っ込みどころのない主人公がニヒルに活躍することかと思っていたが、どうやら誤解だったようなので安心した。

 猫の肝臓の検査のために動物病院へ行ってきた。
 出掛けに繰り広げた大捕り物劇のおかげで待合室で読むための本を選んでくるのを忘れている。鞄の中にはいっていた『武器よさらば』を広げた。
 すぐ鼻先に、白いチワワだろうか、飼い主の肩に抱かれてぼんやりこち

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98「冷血」カポーティ

98「冷血」カポーティ

286グラム。けっして朗らかな文章ではないが、ルートビアとゼリービーンズとハーシーチョコは食べたくなる。アメリカである。

裏表紙のあらすじはこうだ。

カンザス州の片田舎で起きた一家4人惨殺事件。被害者は皆ロープで縛られ、至近距離から散弾銃で射殺されていた。このあまりにも惨い犯行に著者は5年余りの歳月を費やして綿密な取材を遂行。そして犯人2名が絞首刑に処せられるまでを見届けた。

 当時はまだ存

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読んでない本の書評64「大いなる眠り」

読んでない本の書評64「大いなる眠り」

151グラム。レイモンド・チャンドラーである。私立探偵フィリップ・マーロウである。ハードボイルドの王者である。

 今や村上春樹訳が出ているらしいが、古本の地層から引きずりだしたこの本は1959年の訳だ。実に60年近く前の翻訳には、今となってはみかけない古い翻訳独特の言い回しがふんだんに入っていて実に味がある。

 富豪の老人スターンウッド将軍の口調は「すわってもかまわんですぞ。煙草のにおいはいい

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