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答えなどなき道を行く冬銀河
朝から雨だった
冷たい雨だった
エアコンもなかなか効かない
古い家はいたるところ隙間だらけ
こわばって体が動かない
この先を生きる意味はあるのかと考え込む
だからネガティブだと夫に疎まれる
明るい気分になろうとしても
今日は無理だという日がある
誰にでもあると思う
メイが心配そうにのぞき込む
そのうち
寄ってきて小さな声で鳴いた
お腹が空いた合図だった
少しずつ声が出るようになった
まだ本当
短編小説 長い夜最終章
病院の夜間入口の警備室に声をかけ、3人は病室に向かった
聡は祖父の時も祖母の時も臨終に立ち会うことは出来なかった。
病院の入り口を抜けてエレベタ―に乗り込みながら、
そんなことを思い出している自分が、不謹慎に思えた。
母はまだ生きているのだ。自分はやはり冷たい人間なのだろう。
人の死に際して、まだ一度も涙を流したことがない。
泣くという感情が、どういうものか分からないのだ。
茜に言わせれば、
短編連載小説 長い夜4
田舎の農家はどこも同じような造りになっていて、
2人の少年は土間の広い玄関の靴脱ぎ場に腰を掛かけ
大きなスイカかぶりついた。
それは井戸水でよく冷やされていて、
子供がたべるのにちょうどいい大きさに切り分けられ
大きなお盆いっぱいに並べられていた。
叔父は、そんな二人をしばらくにこやかに見つめていたが、
スイカを持ってきてくれたおばあさんは、
困った顔をしで聡を一瞥した。
それから暖簾をくぐり台
正月の子らに追われて猫疲れ
自由詩 愛しきもの2
今日は元旦の月曜日
あちこちで
おめでとうの
会話が飛び交う
新年の特番が流れて
退屈した子供たちが
もう嫌がっている
猫を追い回す
長閑な元旦
突然画面が切り替わり
地震警報と津波警報が
繰り返される
早く逃げろと叫ぶアナウンサー
子供たちも幼いながら
画面の異様な状況に気を取られ
メイはようやく自分の寝床に
落ちついた
緊急地震速報の
チャイムが不規則だが
何度