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ことばに関する雑記

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仕事中、あるいは日常生活の中で、ちょっと気になったことばについて、少し考えてみます。
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記事一覧

ワシとタカ、イルカとクジラ

ワシとタカ、イルカとクジラ

日本のプロ野球に “イーグルス” や “ホークス” と名のついた球団がある。「イーグル」=「eagle」=「鷲(ワシ)」、そして「ホーク」=「hawk」=「鷹(タカ)」ということは多くの人が知っているだろう。

実物を見る機会は多くないかもしれないが、テレビの映像で見たことはあるだろう。鋭い眼と大きな翼をもつあの鳥の姿は、おそらく誰でもすぐ頭に思い浮かぶことができると思う。しかしそこに出てきた鳥は

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AIと迷惑メール:不完全な日本語

AIと迷惑メール:不完全な日本語

ときどきメールボックスの「迷惑メール(Junk mail)フォルダ」をチェックする。迷惑メールでないメッセージが間違って「迷惑メール」フォルダに入ることがあるからだ。

ほとんどの迷惑メールは、本文を読むまでもなく、件名を見ただけでわかる。取引をしたこともない銀行名で「〇〇銀行が不正利用を検知」とか「口座利用を停止」とか脅されても、怖くもなんともない。使ったこともないアプリ名で、「情報を更新」と知

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トルコ、それともテュルキエ?

トルコ、それともテュルキエ?

英国のBBCの英語ニュースを聞いていて気付いた。トルコの大統領選に関するニュースだったが、アナウンサーは同国の国名を “Turkey” と言っている。

別に驚くことではない。トルコはずっと昔から日本語で「トルコ」、英語では「Turkey」だったから。

気になったのは、しばらく前にトルコが国名表記を変更するというニュースを読んだ記憶がかすかにあったからだ。確かに、英語で ”turkey” は「七

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「罪と罰」、そして「無罪と無罰」

「罪と罰」、そして「無罪と無罰」

あるテレビ番組で、数年前に起きた事件の被告人が心神喪失を理由に無罪判決を受けた経緯について、法律の専門家が解説しているのを観た。専門家として、法律の条文と判決の関係についてわかりやすく説明するものだった。

しかし、その際にスタジオにいるコメンテーターたちとのやり取りでは、何となく話が噛み合っていないように感じた。

刑法第39条の「心神喪失者の行為は、罰しない。」の趣旨は理解できる。しかし、実際

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「ひのえうまの逆バージョン」がほしい

「ひのえうまの逆バージョン」がほしい

日本で子どもの出生数が初めて80万人を切り、想定よりもかなり早く人口減少が加速しているというニュースが先日あった。

新聞には過去数十年分の年毎の出生数の棒グラフが掲載されている。なるほど、このままいけば危機的な状況になるということがよくわかる。上がったり下がったりしながら全体的に下降傾向といった生易しいことではなく、明らかに右肩下がりの状態が続いている。

それはそれとして、このグラフを見るたび

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訴状が届いたらコメントしてほしい

訴状が届いたらコメントしてほしい

新聞を読んでいたら、たまたま同じ日の紙面に、前から気になっていた表現が三か所もあるのに気づいた。

1つは、ある団体が行政の決定に対して異議を唱え、その決定の取り消しを求めて提訴したというもの。その報道に関する行政側の担当者の話。「訴状が届いていないため、コメントは差し控える」。

2つ目は、ある法人が、短期の雇用契約を繰り返すのみで永続的な契約に切り替えないのは違法と非常勤職員が提訴したもの。記

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“議長” にもいろいろ

“議長” にもいろいろ

“議長” を英語にすると、まず思い浮かぶのは “chairman” だろうか。近年では、性差を感じさせるこの語を嫌い、”chairperson” や “chair” を使うのが標準的になっているかもしれない。

“chair” というのはもちろん「椅子」のことだ。会議の進行を促し、結論を導く役割として権威をもって議長席の椅子に座る人ということなのだろう。

なぜ、議長のことが気になったかというと、

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偏差値に対するもやもや

偏差値に対するもやもや

 “偏差値” ということばを聞いたことがないという人はほとんどいないだろう。日常のやり取りでも、「偏差値が 65 の進学校」とか、「自分の偏差値は 48 なので、もう少し上げていかないと...」といった使い方をしていると思う。

 数十年前、自分が受験生だったころにもこのことばはあった。模擬試験などの成績表を見ると、自分の得点の隣に平均点とかと並んで偏差値が出ていた記憶がある。

 偏差値 50

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プロパガンダ

 このところ、報道番組などで “プロパガンダ” という言葉をよく聞く。

 東西冷戦真っ盛りの頃、学生運動や労働運動が盛んだった頃、あるいは過去の世界大戦を振り返るといった文脈の中でよく耳にしたような気がする。日常会話で使うような用語ではないが、おそらくほとんどの人は、それなりに意味を理解して使っているのだろう。

 自分なりの解釈では、多くの場合、怪しげな情報で特定の方向に人を誘導しようとするこ

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そちらが “激する” ほど、こちらは “冷める”

そちらが “激する” ほど、こちらは “冷める”

 新聞のテレビ欄、雑誌、ニュースの見出しなどで、”激” の文字をよく目にする。

 「〇〇が激怒」とあるので、〇〇さんはいったいどんな様子で怒りを表しているのだろうかと興味津々で本文を読んでみる。すると、何のことはない、〇〇さんが何か不満を述べていたとか、別の意見があって反論しているという程度のことだ。

 どうみても激怒している様子はない。

 そもそも本当に激怒している人は、しゃべらない。押し

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否定疑問文には要注意!

否定疑問文には要注意!

 ある問診票の質問に答えているときに面食らった。

 「〇〇でアレルギー反応が出たことはありませんか? はい / いいえ」とある。これまでアレルギー反応は出たことはない。そう答えたい。口頭で質問されたら、「ありません」と答えるだろう。でも「はい」か「いいえ」しか選択肢がないと、どちらを選べばいいのか大いに迷ってしまった。

 「ありませんか?」の部分に反応すれば「はい」になるだろう。しかし、「アレ

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ウクライナ侵攻のニュースで思うこと

 このところウクライナ侵攻のニュースにくぎ付けになっている。仕事中もネットラジオやニュース専門局のライブストリーミングを流しっぱなしにしている。

 21世紀のこの時代に、あのような前近代的な戦争行為が実際に起こることには驚くほかない。

 テレビのニュース番組の中で "NATO" についての解説がたびたびなされている。その昔、西側諸国の軍事同盟である「北大西洋条約機構(NATO)」と旧ソ連を中心

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名前が出てこないだけ?

名前が出てこないだけ?

 いつのころからかよくわからないが、広告で見かけるタレントの名前が表示されなくなった。昔はどうだっかわからないが、つい最近まで、タレントの写真があると、その横に小さくその人の名前が表示されていた。気づいていた人は少ないとは思うが。

 理由はよくわからない。肖像権を尊重するということなら、以前は名前が表示されていたのに、今では表示されなくなったことが説明できない。普通に考えれば、昔よりも今の方が

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カンマ vs ピリオド

カンマ vs ピリオド

 仕事で工学分野の文章を扱うことが多いのだが、同じ言語で書かれた文章でも地域や国によって数値の表記が異なることがあって、時に混乱させられる。

 日本では、数値の桁取りの "," (カンマ)は3桁ごとのまとまりを示す記号、"." (ピリオド)は小数点を示す。これは、米国や英国でも同じ。しかし、この表記方法は世界共通というわけではない。だからややこしい。

 例えば、英語の文章の中で "123.45

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