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記念写真はいらない。日々当たり前にそこにあるけれど、いつか消えて無くなるかもしれない、…

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記念写真はいらない。日々当たり前にそこにあるけれど、いつか消えて無くなるかもしれない、そんな日常の空気感を残していきたい。写真を撮ることと、文章を書くことが好き。恋愛系多め。虚構や時期のズレがあります。

記事一覧

記憶に残る女

「絶対別れないなんて保証はない、だけどもし別れた時、その人にとって忘れられない女になっているよう努力してるんだ」 女友達に、こう話したことがある。 午前中、自分…

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5年前
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初めて手を繋いだ日。最後に手を離した日。

タイトルは、 とある曲の歌詞 きっとこのふたつの一日は、 心臓の鼓動が聞こえそうなくらい ドキドキして、幸せだったあの日 心臓が張り裂けそうなくらい かなしくて…

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5年前
12

君は強い

「君は強いから、俺がいなくても一人で生きていける。」 そう別れを告げられたことがある。 16歳の、春だった。 「けれど、あの子は俺がいなくちゃダメなんだ。」 16歳の…

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5年前
9

平成最後の春は

「すごく懐かしい」 あなたがそう呟いた いくつもの季節を この街で過ごしてきたのだから たくさんの思い出があるにちがいない 何も言わずとも伝わる 今私の隣にいる…

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5年前
8

この街で、またあなたと

「俺たち、もう10年だぜ?」 そういって、はじめての彼氏が笑った。 気づいたら一緒にいて、気づいたら側にいなくて、気づいたら大人になっていた。 時は経ち、気づいた…

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5年前
10

冬に出会った君へ

時刻は午後七時をとうに過ぎていた ようやく仕事を終わらせ 寂れた商店街の中を歩く 屋根があるとは言えど 真冬の風が私の頬をさす マフラーに顔を埋めながら 明かりの…

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5年前
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私が好きなのは

日が暮れていくのを 横目に見ながらふと考える 私が好きなのは たとえば、 豪華客船のクルージングに 招待してくれる人じゃなくて 公園のボートを一緒に漕いでくれる人…

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5年前
5
記憶に残る女

記憶に残る女

「絶対別れないなんて保証はない、だけどもし別れた時、その人にとって忘れられない女になっているよう努力してるんだ」

女友達に、こう話したことがある。

午前中、自分に用事がなくとも、彼氏が早く起きなきゃいけない時は、それより早く起きて朝食を作った。

勉強や仕事が辛い時は傍らで励まし、人間関係で悩んでいる時はゆっくり話を聞いて、いつだって味方でいた。

どんな時だってスキンシップは忘れないし、愛を

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初めて手を繋いだ日。最後に手を離した日。

初めて手を繋いだ日。最後に手を離した日。

タイトルは、
とある曲の歌詞

きっとこのふたつの一日は、

心臓の鼓動が聞こえそうなくらい
ドキドキして、幸せだったあの日

心臓が張り裂けそうなくらい
かなしくて、辛かったあの日

幸せと悲しみが
一つのフレーズに同居している

なんだか、
この歌詞が頭から離れない

自分のことのように
遠い日の記憶が鮮明に蘇る

*****

初めて手を繋いだ日は
部活の帰り道

あたりはもう真っ

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君は強い

君は強い

「君は強いから、俺がいなくても一人で生きていける。」
そう別れを告げられたことがある。
16歳の、春だった。

「けれど、あの子は俺がいなくちゃダメなんだ。」

16歳の少女に、一人で生きていけるなんて、あんまりだ。

けれど私は妙に納得して、さようならを言った。

*****

「ほんとにしっかりしているね。」

どれだけ年齢が上がっても、言われることは同じだった。

常に、中身と年齢が釣り合わ

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平成最後の春は

平成最後の春は

「すごく懐かしい」
あなたがそう呟いた

いくつもの季節を
この街で過ごしてきたのだから
たくさんの思い出があるにちがいない

何も言わずとも伝わる

今私の隣にいる人の心の中は
きっととてもセンチメンタル

私のいない春は
どんな春だったのだろう

聞いてはいけない気がして
「すごく、いい街だよね」
そう答えるのが精一杯

私との春は
たった一度かもしれない

けれど
もしあなたが何年かあ

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この街で、またあなたと

この街で、またあなたと

「俺たち、もう10年だぜ?」
そういって、はじめての彼氏が笑った。

気づいたら一緒にいて、気づいたら側にいなくて、気づいたら大人になっていた。

時は経ち、気づいたら母が私を産んだ歳になっていた。

10年前のあの時と同じ季節に、引き寄せられるように再会した。彼と会うと、青春真っ只中の当時に感じていたむず痒くて苦しい、純粋な乙女心が鮮明に蘇ってしまう。

側にいたのはほんの一瞬だったのに、離れて

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冬に出会った君へ

冬に出会った君へ

時刻は午後七時をとうに過ぎていた

ようやく仕事を終わらせ
寂れた商店街の中を歩く

屋根があるとは言えど
真冬の風が私の頬をさす

マフラーに顔を埋めながら
明かりの灯る場所へと駆け寄った

そこに君は立っていて
目があって、はっとした

はじまりは、そんな冬のある日

*****

コンビニの温かい飲み物で
冷えた手を温めたあの日

もう随分昔からある
古い喫茶店の窓から
降る雪を眺めた

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私が好きなのは

私が好きなのは

日が暮れていくのを
横目に見ながらふと考える

私が好きなのは

たとえば、
豪華客船のクルージングに
招待してくれる人じゃなくて
公園のボートを一緒に漕いでくれる人だし

海外の美術館に
連れてってくれる人ではなくて
地元の海に沈む
美しい夕日を一緒に見てくれる人だし

廻らない寿司を
ご馳走してくれる人じゃなくて
100円寿司を一貫ずつ
分け合って楽しんでくれる人だし

108本の薔

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